内容を考えればリーズナブルとも思える素晴らしいお店です : 横浜うかい亭

30年前の学生時代、知人に連れて行ってもらったうかい亭。

自分としては初めてともいえる高級店であり、食事のマナーを学び、上質な食事というものを知ったお店です。
以来、特別な会食の際にどこが良いかと考えれば迷わずこちらを選びます。
決して立地はよくありませんが、こちらを選択して間違いなし。
結婚してからは毎年家内の誕生日はこちらで過ごし、子供ができてからはご無沙汰しておりましたが下の子供も中学生になったとき以来、再び毎年お世話になっています。


駅から少し離れていますのでタクシーを利用します。
住宅街の中に長い塀があり、その一角に立派な門があり入口となります。
静かな住宅街でも違和感のない落ち着いた風情。
門にはポーターさんが立っています。
当時は車でお伺いすることが多かったのですが、入り口でポーターさんに車を預けます。
その雰囲気だけでも20代前半の私には特別感がいっぱいでした。

当時は八王子と、こちらの横浜だけの2店舗でしたが今は都内にもありますし西日本にも開業されました。
が、食事だけを考えれば他でもいいと思うのですが、うかい亭の良いところはそのファシリティというか空間自体を楽しむことができます。
そういった意味では横浜は大変おすすめです。
車を降りてから庭園を歩きながら玄関を目指します。
緑の庭園は手入れが行き届いており、思わずその庭で記念撮影でもしたくなります。
大切な人との記念日であれば実際に記念撮影をしてもいいですね。

庭の先にあるのは明治のオランダ貿易商の迎賓館をイメージしたという建物があります。
その重厚な雰囲気はまるでテーマパークにでも来たかのように感じる方もいるでしょう。
玄関を入ると美術品や工芸品が雰囲気を壊すことなく揃えられています。
ウェイティングルームで待っている間もその雰囲気を楽しむことができるでしょう。

実際に席に案内されるまでにこれほどワクワクすることができるのは、いくつかあるうかい亭の中ではこの横浜がいちばんではないでしょうか。
他のうかい亭も利用していますが、初めてうかい亭を利用される方をエスコートするなら迷わず横浜です。

家内とふたりの誕生日の時はカウンターのお席。
ゆるやなか円形のカウンターで目の前には鉄板が。
一組にひとりのシェフが料理を担当してくれます。

家族で出かけた際などのグループの場合は個室に案内され、ちょうどよい大きさのテーブルでもちろんそちらにも鉄板が。
こちらもひとりのシェフが担当してくれるのですが、個室に専属のシェフがついてくれる時点で特別感が高まります。
ウェイターも各グループに担当してくる方がいらっしゃるので、細かな配慮をしてくれます。

私はいつも予約時に料理の内容を決めてあります。
以前から値段別に3つのコースがありました。
若い時は一番安いコースでしたが、内容は十分すぎるほどで不満はまったくないでしょう。
今は量があまり食べられなくなってきていますので、この安いコースがちょうどよかったりもします。

値段は値段は30年前に比べれば若干ながら値上がりしましたがむしろそれは当たり前。
食材の良さ、サービスの良さ、雰囲気の楽しさ…すべてを考慮すればむしろリーズナブルなものです。

最初にシャンパンをボトルで注文し、家族4人で乾杯です。
実は家内の誕生日であることは店には伝えていませんでしたが、この乾杯で店のスタッフがこの会食の趣旨を理解されました。
マンツーマンとも言える状態になるシェフは料理が上手なだけでなく会話も大変じょうずです。
場の雰囲気を読みながら接してくれます。
高級店とはいえ、雰囲気はカジュアルな気分になれるのもこうした会話のじょうずなシェフのおかがでしょう。
もちろん担当のウェイターの方も時にウィットに飛んだ会話をしながら楽しい空間を作り出してくれ、リラックスした楽しい食事をすることができます。

アミューズは雲丹を使ったジュレ。
口の中に旨味がたっぷり広がります。
繊細な料理で旨味をしっかり感じますが、当然ながら味付けは上品。
濃いとか薄いとかの話しではありませんね。

この後の前菜は日によりますが大抵いつも2つの食材から選べます。
この日はオマール海老を使った温菜か、ヒラメを使った冷菜です。
担当のウェイターさんが丁寧に食材の説明をしてくれます。

その後、スープを楽しんでいると最初にあいさつに来て以来のシェフがやってきました。
いよいよ目の前の鉄板を使った料理です。
この日は深谷ネギを使った料理。
トリュフも使うようです。
が、家族3人はネギは好物なのですが唯一次女がネギを苦手としてて…

「え？ネギ？」と口にしなかったものの、そういう表情を家族に向けた瞬間をシェフは見逃しませんでした。
「ネギ、苦手？」と聞くシェフに次女は素直に「はい、苦手です」
するとシェフと担当ウェイターが相談を始めます。
で、急きょ次女だけジャガイモを使った料理を作ってくれました。
このあたりの機転の利き方、対応も素晴らしい。
もちろん急に作られた料理も絶品でした（味見させてもらっちゃいました）

うかい亭さんも横浜がオープンして30年以上。
私が利用し始めたのはオープンから5年ほどたっていた頃でしょうか。
その頃の話しを担当ウェイターさんと話をしていると、若い娘たちはバブル期の話しに興味津々。
バブル崩壊後はうかい亭さんも厳しい時期があったようで、狂牛病騒ぎのときや何よりも東日本大震災時は本当に厳しい状況だったそうです。

そんな話しを伺いながらメインのステーキ。
上質なお肉であることはもちろん、絶妙の焼き加減。
文句なしに絶品です。

〆にはガーリックライス、更にそうめんかリゾットを選択できます。
もちろん口直し程度の上品な分量です。
リゾットのスープは美味しかったなぁ…

食事が終わると別室でティー＆デザートタイム。
食事をする場所と、お茶を楽しむ空間がことなります。
目の前が鉄板ですしカウンターですから確かにお茶をゆっくり楽しむという感じではないですからね。
別室でゆったりした時間を過ごします。
この辺りもうかい亭ならではの特別感。

ここでスタッフが運んできてくれたのはキャンドルのともったケーキと一輪のバラ。
先ほどの会話で誕生日だと認識しご用意いただけました。
このあたりのサービスや心配りも30年変わらないまま。
実はいつもこのようなサービスをしてくれるとともに、当時はポラロイドカメラでしたが写真を撮ってくれました。
年号とHappyBirthdayのメッセージを添えていただいたポラロイドは結婚してから子供が生まれるまでの数年間分が今でも保管してあります。
家内の誕生日ディナーとしてはこの日は久しぶりの利用で、初めて家族4人での利用。
さすがにポラロイドカメラではありませんでしたが、デジタルカメラで撮影した写真にメッセージを添えて帰りにいただきました。
思い出作りにもピッタリのお店です。

帰りも日が暮れてライトアップされた庭園を楽しめます。
こういった空間、雰囲気も楽しめるのがうかい亭の良いところ。

残念なのは…これも時代なのかもしれませんが、同行者やシェフとの会話よりもスマホの操作に忙しい方たちが目立つこと。
料理も食べるよりもまず写真…
私も食べログに投稿しますので写真を撮ることもありますが、こちらの店に関してはHPなども充実しており私の写真は不要でしょう…
これほどの雰囲気のお店でありながら、特にドレスコードを気にするような敷居の高さはないお店…つまり大人のお店です。
大人なのですからそれなりのふるまいをお客さんがしてくれるいいですね。

近年、食べログの評価（ランキング）が下落してしまったのはこういうことも理由なのでしょうか。

小言を最後に言ってしまいましたが抜群におすめの超良店です！！