なんだかんだ言ってもこういうベーカリーには残ってもらいたい。 : かもめパン

かもめパンの名前は横浜・戸塚在住中から知っていました。
ただ、高名な学校給食のパンということで知ったわけではなく、立場のイトーヨーカドーに買物に行った際にそこにかもめパンの商品が置いてあったことで知ることになったんですね。
私の戸塚在住時代の買物先はコープかながわのハーモス深谷がNO1でしたが、それに次ぐのが立場か湘南台のイトーヨーカドーでしたので、かもめパンを目撃したのも1度や2度ではありません。
ただ、同じイトーヨーカドーでも立場店（横浜市）には置いてあったのですが、湘南台店（藤沢市）には全く無かったのは、イトーヨーカドーが地元産の産品・商品を当該店舗の裁量で仕入れているということなのでしょうね。

この日は、そのかもめパンの井土ヶ谷にある本店を訪てみることにしました。

かもめパンは、1924年（大正13年）創業の老舗で、当時は「三河屋」という屋号で米菓製造を主業としていたようです。
パン作りを始めたのは戦後、昭和20年からで、社名も神奈川県食産工業株式会社に改め、当初は神奈川県からの指令で食料難への対応としての配給用のパンを製造することから始まったとのことです。
その後、まもなく始まった学校給食のパンも製造するようになっていったそうですが、その中で、かもめパンの愛称が生まれたのは、神奈川県の「県の鳥」である“かもめ”の名がふさわしいという神奈川県庁サイドからの提言だったそうですね。
それが正式な社名として採用されたのは1965年（昭和40年）のことになります。

そんなことで、神奈川県民の方にはかもめパン＝学校給食のパンというイメージの方も多いと思われますが、現在はその風向きがちょっと変わってきているかもしれませんね。
と言うのも、かもめパンのHPには、「現在でも横浜市立小学校345校のうち約100校へ給食パンを提供しています。」と書かれているのですが、他方、（公財）神奈川県学校給食会が公表している「2021年度のパン工場別割当一覧表」を見ると、神奈川県内の公立小学校510校のうち最多の80校に納品しているのは、平塚市の高久製パン株式会社となっています。
あの弦斎カレーパンで有名な会社ですね。
次いで藤沢市の長後製パン株式会社（ロワール光月堂）、横須賀市の有限会社ワカフジベーカリーと続き、かもめパンは、公立小学校への納品は皆無で私立の小中学校に各1校づつということになっています。
ひょっとしたら帳合いなどの問題があるのかもしれませんが、調べた限りでは、かもめパンも学校給食頼りから脱皮しつつあるのかもしれないなという感じも受けた次第です。

当店の場所は、京急井土ヶ谷駅そばを走る環状1号線を保土ヶ谷方面へ6～7分ほど歩いた場所になります。
JR保土ヶ谷駅からもアクセス可能ですが、やはり井土ヶ谷駅の方がやや近いと思われます。

この日は、井土ヶ谷駅に着いてすぐに当店に向かいましたので、到着は11時半をちょっと回った時間帯になりました。
横に長い店舗で、買い回りスペースもそこそこ広めに取られているのですが、この時間先客は誰もおらず、これは意外でした。
ただ、店内で商品を選んでいる間に主婦やら学生やら次から次へと後続客が入ってきて一転混雑する状況になっていましたので、ガラガラだったのは偶然ということみたいですね。
学校給食のパン屋さんという先入観もあり、品ぞろえも町のベーカリー風かなと思っていたのですが、まさにその通りで、看板商品のあげぱんは、シュガーのほかにメープルやシナモン、きなこ、ラムレーズンと取り揃えており、これらだけでかなりの販売スペースを取っています。
その他にもカレーパンやあんぱん、クリームパン、メロンパンなど大衆的なパンを中心に販売しています。

購入したのは以下3点になりました。
・村田さんのカレーパン＠190円
・北の牧場の濃厚ミルクデニッシュ＠180円
・あげぱん(砂糖）＠110円
小計480円
消費税38円
合計518円

平均単価は＠173円。
決して高くはないのですが、イメージ的に激安かな？という期待があったので、まあこんなもんかなというお値段に感じました。
持ち帰って、翌日の朝食に供しました。

村田さんのカレーパンは、レンジで20秒チンした後、600Ｗのオーブンで4分間加熱していただきました。
村田さんというのは、当店の従業員のお一人で、通称「村田のおっかつぁん」と呼ばれ50年近く奉職されている方だそうです。
その方のレシピによるカレーをフィリングに使っているカレーパンということですね。
ゴロゴロ入っているじゃがいもとカリッと食感の楽しい福神漬けがアクセントになっているカレーフィリングですが、結構深いコクと旨みがあってなかなか美味しいです。
スパイシーさは全くありませんが、こういう家庭的なカレーパンもいいものですね。

北の牧場の濃厚ミルクデニッシュは、多数ラインナップしているデニッシュパンの一つです。
練乳風味の漂うデニッシュですが、このパンはやや量産パンの香りがしましたね。
あまり良い意味では無くて。
"北の牧場の濃厚"もやや誇大広告気味に感じますし。

あげぱん（砂糖）は学校給食パンとしては代表的なものです。
色んなバリエーションも出されていますが、私の時代の給食あげぱんは砂糖しかありませんでしたので、今回もそれを購入した次第です。
良くも悪くもやはりあげぱんは美味しいかなと。
このパンが特にどうのということはないのですが、昔懐かしい味ではあります。

コスパが期待したほどでは無かったこともあり、ややがっかりした面もありましたが、パン自体はレベルが高いとは言えないまでも安定した美味しさはあり、街のベーカリーの廃業が目立つようになってきた中でこういうお店は貴重だということを改めて思いました。
ホームページなどを拝見するとかなりPRにも力を入れているのが分かり、今の時代に食らいついていこうという意欲も感じることが出来ますし、再来年＝2024年の創業100年は一つの通過点として末長く頑張ってもらいたいです。