一軒家レストランでゆったり食べるとんかつもいいものです。 : 馬酔木

食べログのレビュアーを見ていると特定のお店に何度もレビューするのを得意にしている人もいれば、1店についてのレビューは1件だけと決めていると思われるような人も見られます。
今は多様性の時代で、多様な価値観が許容されて然るべきですので、どちらがどうのとは言えないのは当然のことです。
ただ、たまにそのどちらのタイプについても批判する輩が見られるのは気持ちの良いものではありませんね。
批判する根底にはその人に対する妬み嫉みがあるように思われるのですが、多様性を受け入れられない人はこれから先の時代を生きていくのに苦労するのは目に見えています。

私は、胃袋が二つも三つもあるわけではないので、色んなお店を体験したい気持ちが強いため、どちらかと言うと新規開拓に重きを置いていますが、決して「どの店にも一度しか行かない」なんて思っているわけではありません。
ただ、私のレビューでは、そのお店についての背景等をきちんと残すのをモットーとしており、それは最初のレビューである程度書いていることから、二度目以降は純粋に食事を楽しみ、写真を撮ったりレビューはしないということも多々あります。
これも多様性の一つですよね♪

さて、この日は朝から某フォローレビュアー様のとんかつレビューを見てしまい、急にとんかつ気分になったので、BMしていたとんかつ専門店の中からベーカリーとの上手い組み合わせが出来そうな店を探ります。
それでピックアップされたのが当店だったわけですが、最寄り駅は横浜市営地下鉄グリーンラインの都筑ふれあいの丘駅で、これまで全く縁が無かった駅です。

ただ、よく考えてみると、日吉からグリーンラインで一本なので、我が家からのアクセスは決して悪くないんですよね。
百名店で混雑も予想されましたが、ランチの予約も出来るとのことだったので、予約しての訪店となりました。

当店は、都筑ふれあいの丘駅から楽々徒歩で行ける距離にあるのですが、住宅街にぽつんとあるお店なので、ちょっと分かりづらいです。
2005年のオープンで、銘柄豚にこだわったとんかつ店として評判のお店になり、先日亡くなった渡辺裕之さんが某グルメ番組で絶賛していたお店でもあるようです。
馬酔木という店名は"あしび"と読みますが、馬が葉を食べると毒で酔った状態になると言われる植物(あしび、あせび)を指す言葉でもあると同時に、「馬酔木なす」という言い回しは、あしびの花が咲き栄えているようにの意から「栄ゆ」にかかる枕詞でもあるそうです。
当店のHPによれば、色んな意味で客を酔わせたいということと、それにより栄えたいという両方の意味を込めて店名に採用されたようです。

食べログのとんかつ百名店にも2019、2021と連続して選出されていますが、とんかつ百名店は、EAST、WEST、TOKYO等の区分は無く全国区一本ですので立派なものだと思います。（後記、つい先日アップされた2022でも選出！）

コロナ禍もあって、最近はとんかつ百名店訪問を控えてきましたので、久しぶりの百名店訪問となりました。

この日は11時半からの予約を入れ、ほぼその時間に伺いましたが、入口扉には、既に満席と書かれた紙が掲げられていました。
これは予約して正解。予約無しだとここまで来てドボンだったわけで、都筑ふれあいの丘駅は、周囲に殆ど飲食店が無い駅なので、潰しも効かずに難渋したことと思います。

店内はジャズが流れるお洒落な雰囲気で、カウンター席が4席と4人用テーブル席3卓、2人用テーブル1卓で計18席のキャパ。席間の距離もあり、ゆったり配置で落ち着けます。
私はカウンター席に案内されました。

卓上にはメニューが置かれています。
とんかつは、杜仲高麗豚という銘柄豚になっていますが、それ以外の銘柄豚もオーダーすることが出来るようで、メニューにも「お取り寄せの銘柄豚はスタッフにお尋ねください。」と書かれていました。

デフォルト銘柄の杜仲高麗豚とは、飼料事業のほか、養鶏、養豚等の畜産事業を手掛ける清水港飼料株式会社の登録商標です。
この豚は、漢方薬の杜仲と高麗人参を配合した特許製品である「天然の素」を飼料として供与された豚で、同社の一般豚の1.5倍のコラーゲン量を含むそうです。

注文は、この杜仲高麗豚のロースかつ定食160g2,600円にしました。
注文後2分ほどでキャベツと付け合わせ、漬け物、ドレッシング、ソース、2種類の塩が運ばれてきます。

キャベツ先出しはベジファースト主義の私には有難いところで、ドレッシングをかけていただきます。
キャベツ自体はカットも粗目で、特段のプラス材料は見当たりませんでしたが。

さらに待つこと12分ほど掛かってロースかつとごはん、みそ汁の提供です。
ロースかつには小さくカットされたナスのフライが添えられています。
かつは、こんがりきつね色に揚がっており、中はしっかり火が通っていますが、それでも豚肉の柔らかさや風味を失しない程度の火の通し加減になっているのはさすがですね。

ソースと2種類の塩(岩塩、柚子と山椒の入った塩)の全てでいただきました。
ロース肉はとにかく脂身が甘いです。
銘柄豚ゆえなのかどうかは私の舌では判別がつきませんが、筋切りもしっかりされていて柔らかく上品な赤身とのバランスも良く、とても美味しかったです。

付け合わせは生クリームと牛乳をブレンドさせて作った嶺岡豆腐です。
宴会料理等で食べたことはあったと思いますが、宴会の前菜系は総じて流して食べているのであまり記憶にありません。
改めて味わうと、なめらかでコクがあってなかなか美味しかったです。

漬物もしっかりしたものでしたし、茨城県産コシヒカリのごはんも美味しく、雰囲気や接客も含めて全体にレベルの高さを感じたお店でした。

それにしても、周りには飲食店どころか駅前を除けばコンビニすら無いこの土地でよくとんかつ屋さんを開こうと思いついたと思います。
逆転の発想なのかもしれませんが、客にとってもゆったり感が感じられる分、却ってそれがいい方向に出ているように思われるので分からないものです。
こういうお店だと業界の競合とは無縁でやっていける分、強いと思いますね。
コロナ禍に次いで諸物価値上げで飲食業界にも逆風が吹き荒れている昨今ですが、当分は安泰なのではないでしょうか。