～ 権力に近い食堂シリーズ 123 ～　横浜市中区の食堂・カフェ : ナカナ・カフェ

今回は横浜市の行政区である中区のカフェに行ってみました。
かなり小さな店ですが、食べログに載せたい理由がありますので、説明を一読いただければありがたいです。

現行の自治制度では区は（主に）２種類存在します。
東京都にある「特別区」と、横浜市などの政令指定都市にある「行政区」です。

東京都内にある23区は特別区といって、制度上少し変わった位置づけにあります。
特別区は議会を持ち、区長も選挙によって選ばれる基礎的な地方公共団体で、市に準じた行政的機能を有します。市町村区などと表現がされるのは、その役割が似ているからです。ちなみにこの特別区は、現状で東京都の中にしかありません。

一方で、政令指定都市にある行政区です。
まず、政令指定都市ですが、地方自治を進めるために定められた大都市制度の一つで、現在のところ20市が存在します。50万人以上の法定人口がある大都市に認められる制度であり、巨大都市から地方都市まで幅広く指定をされています。この指定都市ともなると、都道府県の権限の多くが区に移譲されることになります。
その指定都市の中にある「行政区」は、条例により定められた行政上の区分で、議会もなく、区長も市長によって任命されます。つまり市長の権限の一部を分掌させるために作られたものとされます。その担当する事務業務の範囲は市によって様々です。

このようなややこしさは行政制度の矛盾を表しているともいえます。
これはどちらかというと広域自治体の話ですが、大阪府の中の大阪市、神奈川県の中の横浜市などでは、制度として２重行政の問題がしばしば議論になることもあるようです。


さて、そろそろ食べログらしい話題に戻しましょう。
当店【ナカナ・カフェ】は政令指定都市である横浜市の「中区」庁舎にあるカフェです。
中区庁舎自体は横浜地方裁判所、神奈川県警本部、横浜市庁、神奈川県庁といった、行政機関が集中して存在する地区にあり、かなり重厚な建物です。
その別館の入口にガラス張りの休憩スペースがあって、席数15ほどの小さなカフェになっています。

訪問は11時前でしたので、他に客は少なく、４人掛けのテーブル席を利用させていただきました。

早速ですが、接客の男性に話しかけ、壁にかけられたメニュー表を見て食事を出せるか聞いてみました。
すると、海老・チキン・牛肉・キーマ・チキン野菜・グリーンの６種類があると丁寧な説明をしてくれます。どうやら10分程度で提供が可能なようです。

それはよかった。
横浜まで来た甲斐がありました。
何故なら・・・今回の訪問ですが、このカレーをいただくことが目的の一つだったからです。

まず、当店【ナカナ・カフェ】はハンデキャップある方の就業先確保のために運営されているカフェになります。また、市内施設で作られた手芸品を取り扱う売店としても活用されています。
そして当店で提供されるカレーですが、奈良県の社会福祉法人「青葉仁会」が生産したレトルト食品を提供しているのです。

これまで権力シリーズでは様々な官庁食堂を訪問してきましたが、色々な方から情報をいただく中で、幾つかの施設では就業支援型と呼ばれる事業により運営されていることを知りました。市区の真ん中にある地理的な優位性を活かしたもので、ハンディキャップある方の社会参画を促すために、私は素晴らしい取り組みだと思っています。
ただし、そのサービスは古典的かつ限定的な場合が多く、美味しさを指向する料理店には向かない面があります。確かに武蔵野市食堂といった例外を除くと、なかなか経営的にも難しい面もあるようです。
特にこの就業支援事業では障碍者の労働工賃は安く抑えられてしまう問題が指摘されています。

ですがレトルト食品なら生産時において様々な工夫ができます。最近はコンビニなどで販売される料理も大変美味しいものが出てきました。当カフェで付加価値のあるものを提供することで、高賃金を実現するモデルケースとなるかもしれません。

それに、料理というものは真面目な仕事を続ければ評価される世界のようで、「青葉仁会」が運営するレストラン　カントリーカフェ ハーブクラブ　は食べログ評価★3.45を獲得している人気店になっています。

そんな福祉事業所のカレーです。少量生産ならではの美味しさがあるに決まっています。
流石に奈良まで行く事は出来ませんが、横浜で頂けるなら…と、期待も高まります。
当店では全商品700円での提供でしたので今回は海老カレーを注文しました。それに食前にコーヒー（170円）もお願いします。

すると、木皿に緑色の紙ナプキンを載せて、コーヒーは提供されました。
私はカレーが出るまでの10分間の間に、施設にある手芸品や展示物を見ながら過ごします。施設などで作られた作品が多数飾られているのでしょう。


人間の能力って不思議です。
あれが得意な人、これができる人、先が見える人、困難を苦にしない人。本当に人それぞれです。

以前、全盲の方と接したことがあります。
彼は生活する上で、確かに多くの支援が必要な人でした。
ですが、料理の味を知ることについては私の何百倍も得意だったのです。


さて、従業員さんのにこやかな笑顔と共に、カレーが配膳されます。提供されたカレーは、ルーとしては粘度の低いものであるにも関わらず、とても甘く深い煮込みの味を感じました。これって明らかに調理に手間をかけていますよね。
そして、具の中には海老と芋を見つけましたが、これがレトルトとしてはとても大きいです。スーパーにある高級レトルトにもない食感です。

お手製と思われるマリネもとても繊細に作られており、レンチンカレーと侮っているとビックリします。とても美味しかったです。

私は食事に関しては大したコメントを書けませんので、食べログレビュワー様の中で評価頂ける方がおられましたら、是非とも実食いただきたいと思います。特に料理評論家として、普段から美味しいだのコスパが悪いだので生活をしているグルメの方々にとっては・・・これはいわば義務ですからねっｗ

この権力食堂シリーズを続けている内に、幾つかのテーマが見つかってきました。
国民の政治参加、入札制度の問題、そして障碍者の社会参画です。

生物多様性の意味を考える時、多くの方の社会参画の必要性について大変興味深い経験をさせて頂きました。