治部煮と美しい一品料理の数々〜♬ : 山乃尾

朝食も昨晩と同じお部屋にご案内して戴きました。雪見障子が素敵な雨の朝
でございます。美しい塗りの器に八品〜♬ 大根のサラダに添えられていた
ドレッシングの器がマヨネーズ・ベースのドレッシングの色と調和していて
嬉しくなります。和食は器との調和と盛り付けが肝心要ですが、あの北大路
魯山人は３０代の頃ここ山乃尾で和食の極意を学んだそうでございます。ぐ
じ（金沢や京都では甘鯛のことを’ぐじ’と言います）と治部煮が絶品でした！
ぐじには串が打たれ〜絶妙な塩加減〜♬ 皮が薄く柔らかいので此の上品な
焼き魚を余すところなく、美味しくいただきました。治部煮は金沢の郷土料
理で美しい朱色の蓋物で供されました。鴨肉にまぶした粉から瀞みが出て味
噌あんの美味しいこと！！ わさびのアクセントでキノコやお麩が引き締まり
ますネ！加賀藩の前田家に仕えた料理人 舟木伝内が書いた料理人の栞にレシ
ピーが残っているそうですがネーミングはフランス料理のジビエ（野生の鴨
を調理する為）に由来するとも言われ諸説様々・・雨の朝〜身体が暖まって
食後のデザートは柿とキウイ、お抹茶と胡桃餅〜贅沢な朝食でございました。

実は、今回の電撃！金沢二泊三日の旅は記念日の１１月１１日におじゃまし
たいお店がありまして２ヶ月ほど前に予約を入れ・・一泊は老舗の料亭旅館
で、と思って決めました。山乃尾さんはお料理はもちろんのこと、建物にも
お庭にも風情があって〜ご主人、女将のホスピタリティーも含め、全ての点
で満足の行くお宿（一泊二食付き１０万円）CP 高めではないかと思います。
お食事だけでの利用も可能なようでございますが、ひがし茶屋街を見下ろす
丘の上というロケーションが素晴らしく、昨日は思いがけず兼六園散策前に
懐華樓 で名物の黄金ぜんざいを満喫〜♬ 夕暮れの浅野川大橋からの帰り道〜
懐華樓の前でお座敷に向かう芸妓さんと 'すれ違う' という東茶屋街から徒歩
５分ならではのサプライズ！！ 夢のようでございました。山乃尾は古都金沢
を味わいたい方に自信を持ってお薦めしたい名料亭旅館でございます。　

山乃尾の創業は明治２３年（１８９０年）１１月〜ひがし茶屋街の上にある
小高い丘に立地〜♬ 金沢駅からは１５分程度でタクシーは丘の中腹まで、
お玄関までのアプローチは石畳〜ランドスケープの見事な紅葉と松に迎えら
れました。週間予報で翌日の金沢は雨・・やはり此の日のプライオリティー
は兼六園でございます。なんと！お宿を出て先程タクシーを下りた処から茶
屋街まで細い坂道を下ること僅か３分！！お天気も申し分なく、勘で選んだ
懐華樓 も大当たり〜♬ ひがし茶屋街のそぞろ歩きと兼六園散策を満喫して
中田屋のカフェ和味まで戻ったのが夕方・・日が暮れた東山茶屋街で芸妓さ
んとすれ違って此の世のものとは思えない’動く美’に興奮覚めやらぬまま山
乃尾〜到着でございました。パーフェクト・ロケーション！！

山乃尾のお部屋は全て離れの一軒家で東山茶屋街を見下ろすお部屋の縁側か
ら遠くに広がる市街地と小松空港にアプローチを始める飛行機が見えて床の
間の掛け軸がなんと！スズメ！！ 兼六園手前の陶器屋さんで入園前に購入し
た中村陶志人の陶版 ’福良雀図’ をお茶のセットの横に置いて共時性に浸るこ
と暫し・・お部屋の隅々まで行き届く和の意匠、お風呂はもちろん総檜です
がフィクスチャーはシャープなデザインの最新バージョン、ハンド・ウォッ
シュはイソップでローズマリーとラヴェンダーの香り〜♬ 女将監修なので
しょうか・・研ぎ澄まされた感性でまとめられた素敵な離れでございました。
お夕食は７pm にお願いしてありまして京都の 俵屋 のようにお部屋に用意
されるのかと思っておりましたら〜仲居さんのお迎えがあり裕に３０名で会
食ができそうなお座敷へご案内されました。まぁ〜なんという贅沢！！

霜月の御献立は以下のとおり
先：香箱蟹
椀：蕪蒸し
造：季の物
温：柚香蒸し
焼：鰤塩焼き
肴：珍味彩々
鍋：金沢港しゃぶしゃぶ
飯：雑炊と香の物
甘：秋星コンポート

先付（山乃尾では全て一文字）の香箱蟹は此の季節ならではのスペシャリテ
ですが今年の解禁は３日前の１１月７日と伺い、初ものをいただく幸せ感が
更にアップ〜♬ 香箱蟹はズワイ蟹の雌のことで雄のズワイ蟹に比べて安価
な為あまり県外には出回らず地元で消化される正に石川県の限定グルメ〜♬
お腹の中にある外子（卵）甲羅の中にある内子（未熟成卵）カニミソそれぞ
れに旨味が凝縮されていて絶品！でございます。特に、ぷちぷちした食感が
堪らない外子は味が濃く添えられていたお酢のジュレも秀逸〜♬ 朱の筆で
'海の宝' と書かれ・・松の葉を散らしたプレゼンテーションで珠玉の一品で
ございました。後日、今年は産卵する雌を保護する為、通常１１月上旬から
１月上旬まで可能な漁が１２月２９日までと決められたと知り・・今回の金
沢で香箱蟹に出会えたことに改めて感謝した次第でございます。

お椀の蕪蒸しはこれまでの人生でイチバン美味しいと思えた蕪蒸し〜♬ お
造りは上が赤そい、右がメジマグロで〜どちらの身にも跳ね返ってくるよう
な弾力があってパワフル！！ 天然ものならでは〜で、アオリイカの ’ねっと
り’ もハンパなく九谷焼の黄色とお刺身の透明感が描き出す金沢の世界に魅
了されました。柚香蒸しは鱈の白子の蒸し上げで茶碗蒸しのような柔らかな
世界感を満喫〜酢橘が添えられた鰤の塩焼きは仕上げに大野のお醤油が塗ら
れていて円やかな風味〜♬ そして、ここで強肴〜女将の登場でございます！
チェック・インの時ご挨拶に出ていらして下さいましたが、お召し替えをさ
れて華やかですねぇ〜♡ ”強肴はここでもう一度お酒を美味しく召し上がっ
ていただく為のものでございます”（２キロ歩いて入手したシャプティエのリ
ュベロン・・今宵のワイン用に器も購入しておりましたが、お迎えに来て下
さった仲井さんにワインをいただきたい旨をお伝えしたところテーブルの上
にワイン・グラスが２客セットされていました）蜂蜜仕立てのローストビー
フを老酒に漬けたもの、鰹の塩辛が載る甘海老、車鯛（まとう鯛の北陸地方
名称）の煮こごり生姜風味と柿の白和え、しし肉は猪の三枚肉が塩で炊かれ
脂が落ちて上品な逸品に〜♬ 唐辛子味噌が載った柔らかな金沢のジビエで
ございました。

続くは金沢港のしゃぶしゃぶ〜ご主人のご挨拶で始まります。”金沢では弁
当忘れても傘忘れるなと申します。一日中晴天という日は年に数日〜今日は
本当にようございましたね・・お天気に恵まれて〜〜♡ この辺は昔は茶屋
のみ、夜はネコしか歩いてなかったんですが３年前に新幹線が開通しまして
からは外国人観光客が激増しましてね、バーやらイタリアンやら増えました”
ご主人はお話でお客様を愉しませる達人でいらして笑顔がまた天下一品〜♬
お魚のしゃぶしゃぶは火が通り過ぎないように一人前ずつ時間をかけて供さ
れました。セリがシャリシャリで素晴らしいですネッ！ 淡白な赤そいの身
は上品な味わい・・お雑炊はそのしゃぶしゃぶのパート２で赤そいの出汁に
柚子の香りプラス！！ 極上のお食事でございました。食後の甘味は石川県
産の新しい品種 ’秋星’ のコンポート〜♬ リンゴの食感をしっかり留めた絶
妙な仕上がりで料理長のこだわりを感じます。コースを通して器が愉しめた
ことも北大路魯山人がこよなく愛した金沢の老舗料亭旅館ならでは、の醍醐
味〜二千坪の敷地に１１室の離れという贅沢を存分に堪能させて戴きました。