大洗一のとんかつかも : 松のぶ

　大洗でうなぎといえば、名店と名高い那珂川楼と並んで名前が挙がるのがここ、松のぶ。
　筆者もここの鰻は大好物で、（なるべく冬季を狙って）年に１回くらいは食べに行くようにしているのですが、実はこちら「とんかつがうまい店」として、町民の間で密かに話題になっている店であったりもします。
　メニューに揚げ物（とんかつ、唐揚げ、エビフライ）があることは以前から把握していたのですが、なんといってもこちらはあくまでうなぎ店。苦手な人向けとかで一応置いてあるメニューといった所で、例えるなら珈琲専門店の紅茶のようなもので、大して力を入れているわけではないだろうと思い、注文したことがありませんでした。
　しかしながらこれだけ評判だと気になってしまうのが人情というもので、食べに行ってみました。

　注文から出てくるまで20分以上かかり、さぞかし厚いとんかつを揚げているのか……などと考えていると、やって来たとんかつは本当に想像を上回る厚さ。これ……300gくらいあるのでは……？
　それでいて、ほんのりと赤みの残る絶妙の揚げ加減で、噛むと肉汁と脂の甘みがはじけます。衣もカリカリで、とんかつに求める要素全て入っている感じ。これは、とんかつ専門店でもなかなか見ないレベル……というかとんかつ専門店だったら、3000円～の値段設定になる品ではないでしょうか。
　評判通り……いや、評判以上の絶品とんかつでした。

　ただ、こちらはあくまでうなぎ店。とんかつ専門店ではないので、勝手の違う部分もあります。
　そこらへんも一応挙げておこうと思います。

・とんかつ店でありがちなごはん、みそ汁、キャベツおかわり自由といったサービスはありません
（といっても確認したわけではないので、お願いすればご飯おかわりくらいはできるかもしれません）
・キャベツはドレッシングがかかっています。不要な場合は注文時に言いましょう
・卓上調味料は醤油、ソース、山椒というラインナップで塩がありません。欲しい場合は言えば出してもらえます。
（余談ですが……塩＋山椒で味変したらかなりのおいしさでした。試してみてください）

　また、あるのはロースのみで、ヒレカツなどはなく、なかなかの脂っぽさでもあります。ボリュームもすごいので、小食の方や油物に弱い方は注意が必要です。
　揚げ物類は定食でなく単品注文もできるので、２～3人くらいで分けてビールのつまもみにするなんてのもいいかもしれませんね。

　しかしまさか、揚げ物のレベルもここまで高いとは嬉しい誤算でした。
　というわけで、これは他の揚げ物メニューもチェックしなければと思い、後日エビフライ定食をいただいた所、こちらもかなりの大きさの海老が3本と、豪勢で満足感の高いものでした。

　さらに後日、鶏の唐揚げを、これは定食ではなく、ビールのお供として単品で注文してみたのですが、これがまた、とんかつに匹敵するボリュームでした……。ひとつひとつが、子供の拳骨かな？　というような大きさで、しかもそれが6個も。ややフリットのようなふわっとした衣をまとったタイプで、クリスピー感は弱いものの、脂と肉汁あふれるジューシーな揚げ加減で、味についてはかなり良好。ボリュームを考えるとCPも素晴らしい……ですが、あまりにもボリュームがありすぎ、このあと運ばれて来たメイン（うな重）を完食するのが、かなり大変でした……。
　サイドメニューとしてたのむなら、２～３人で分ける前提で考えた方が良いですね。

　大洗キャンプ場の向かいにある、いかにも地元の皆さんに愛されてるますといった風情の鰻屋さん。

　注文を受けてから生きた鰻をさばき、それを焼いて提供してくれる店。なので注文してから出てくるまで40分～１時間ほどかかります。事前に予約しておくと、来店時間にあわせて焼いておいてもらうこともできます。
（テクアウトもできます）
　うな丼やうな重は、他に漬物ときも吸い、それに小鉢としてサラダがついてきます。蒲焼定食だと茶碗蒸しも付きます。
　ちなみにうな丼とうな重では、重の方が若干値段が高いのですが、これはうなぎが大きいサイズになるそうです。

　昨今のうなぎの高騰でどうしても3000円～の値段設定ですが、1000～2000円代の別メニュー（とんかつ、エビフライ等の定食）もあります。
　メヒカリ唐揚げなどのサイドメニューもおいしいので、うなぎの焼き待ち時間にビールなんかと一緒に楽しむのもアリです。

　さて、うな丼というと、鰻の旨味の染みこんだタレがたまらない、むしろ鰻のタレご飯の方が好きだ、なんていう人も珍しくないですが、こちらのうな丼はご飯がべちゃっと浸かるほどにはタレがかけられていません。しかし、鰻が非常に脂がのっていて、加えて炭火の香りが香ばしく……　“鰻のタレ”ではなく”鰻”をおかずにご飯を味わうことができるようになっています。
　このご飯とのバランスも素敵なのですが、鰻の品質や焼き加減も素晴らしく……　お世辞抜きで、これまで食べた中で三本指に入るくらいうまい鰻を食べることができました。

　サラダも、見た目はごく普通ですが、ゴマ油の効いたドレッシングで、これと肝吸いを合間合間にすすって鰻の脂をすすぎながら食べすすむと、丼一杯、気がつけば無くなっている状態でした。
　年甲斐もなく、子供のようにがっついてしまった……。
　特に旬の冬うなぎだと最高です。
　大洗といえば海の幸という認識が強いですが、なかなかどうして、鰻も名店が潜んでるんですね。