【★3.8】乾貨（ガンフォ）と湯（タン）【2495】 : 柏ノ木

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20,000円コース（20,000円、内税）滞在時間：約2時間30分

東京から茨城県に来ております。

横浜の某ホテルで長年修業したという柏寛士氏が腕を奮う同店（3.56）。
レストランオオツ（4.16）のマダムに優しい味で美味しいとオススメされ、
高級食材の扱いにも長けているようなので、初回から20,000円コースを予約してみました。
（公式サイトに掲載されているディナーコースは、8,000円、15,000円、20,000円の3種類。）

2016年にオープンしたのですが2019年の令和元年東日本台風（台風19号）でお店が水没。
水害対応の保険に入っておらず二重にローンを負うことになったそうですが、
2020年10月に敢えて同じ場所でリニューアルオープン。

水戸北S.I.C.（下り）すぐ目の前という車でのアクセスであれば超好立地。
駅からは非常に遠いので運転できない人には過酷な僻地となります。
2020年にリニューアルしたばかりということで建物は綺麗でした。

お店に入ると入口の反対側の扉に誘導され、階段を上って2階の個室へ。
アルプスの少女ハイジの部屋のように（ロフトのように）天井が傾斜しています。
6名ぐらい座れるのではないでしょうか。

卓上に、箸、レンゲ、フォーク、スプーン、ナイフが用意されており自由度が高いです。
日立製のエアコンを棚の中に収納しており部屋の意匠がスタイリッシュな反面、
エアコンの効きが悪いのでダイソン製の扇風機も補助として置いてありました。

20,000円コースということで高級乾貨（ガンフォ）のフカヒレも出てきたのですが、
乾貨の中では安物であろう干し椎茸や干し鰈を活かした焼売が意外なヒット。
焼売の餡にも湯（タン）が使われているでしょうし〆のつゆそばも素晴らしかったです。
おそらく乾貨と湯の扱いに長けた厨師なのでしょう。

紹興酒4種飲み比べセット（2,080円）6年上澄厳選、10年、15年、20年、4種類を20ccずつ
酸梅湯（1,200円）車必須の立地だからか中国茶のラインナップが豊富

・20,000円コース

1.冷前菜の盛り合わせ
1-1.トマト、クラゲの冷菜、白菜の甘酢漬け、紅芯大根、自家製カラスミ
1-2.干し豆腐の和え物、香港直送のジャスミン茶葉で燻製したサクラマス 自家製の山椒と葱のソース
1-3.那珂かぼちゃフリッター鹹蛋和え、スナップエンドウと肉味噌の四川風炒め
1-4.ジャガイモの和え物、台湾産ソンファピータン（松花皮蛋）、生姜の甘酢漬け、山口産白バイ貝の白酒漬け辛め煮込み
1-5.北海道産ボタン海老の老酒漬け 甘夏の皮
2.窯焼き自家製チャーシュー 落花生
3.点心3種盛り
3-1.自家製広東焼売
3-2.北京ダック
3-3.自家製大根餅揚げ チリソース 花に見立てたラディッシュ
4.フカヒレ2種盛り（台湾産ドラゴンフルーツの花、ヨシキリザメの尾ビレ、モウカザメの尾ビレ、ウバザメの頭部コラーゲン、削った金華火腿、金華火腿のスープ）
5.宮城産生ホタテと栃木那須産黄ニラの炒め 自家製XO醤添え
6.山口産白甘鯛松笠 油で焼いた葱とパクチー 蔓菜 とろみ付けした醤油ダレ
7.つゆそば（塩ベース）
8.自家製杏仁豆腐 鉾田産イバラキング（緑肉メロン）山形産佐藤錦（さくらんぼ）ツバメの巣のシロップ漬け

追加：口水鶏～よだれ鶏～（1,490円）、ライス（250円）自家栽培コシヒカリ

食べた料理の寸評は以下の通り、【】内は個別の採点、表示価格は内税です

【3.7】冷前菜の盛り合わせ

5列10数種類の冷菜をチョコチョコ楽しめテンション上がりました。
面白かったのが白酒（バイジュウ）を使った白バイ貝の辛め煮込み。
まず殻から簡単に取り出せて処理の上手さを感じます。

白酒は癖や臭いがキツいので料理酒には全く向かないと思っていたのですが、
軽やかな仕上がりとなっており貝の臭み消しにも良いのかも知れません。
ボタン海老は醤油の尖りが気になったので、もう少し薄味のほうが好みに合いそう。

【3.6】窯焼き自家製チャーシュー 落花生

1品目の冷前菜に対してこちらは温前菜という扱いになるでしょうか。
窯焼きの自家製チャーシューに落花生を添えており、焼け石を下に敷き詰めて保温しています。
やわらかさと弾力感のバランスが良くて上品な味付け。

・点心3種盛り
【4.3】自家製広東焼売【3.7】北京ダック【3.9】自家製大根餅揚げ

モチモチの皮にプリプリ＆ジューシーな餡がギュッと詰まった焼売がスマッシュヒット。
手切りの豚肉、海老、干した鰈（かれい）、干し椎茸など入っているそうで、
食感の良さも旨味の強さも楽しめて素晴らしかったです。

お支払い60,000円を超えた某アワード中華でも点心が出てきましたが、
そういう価格帯の高級中華になると料理が抽象的になり過ぎて筆者の理解を超えてしまいます。
例えて言えばピカソの絵画を楽しむにはそれなりの素養を要するようなものでしょうか。

単純明快な美味しさを好む筆者としては同店の焼売のほうが好みに合います。
この焼売はアラカルトメニューにも掲載されているので同店の必食メニューでしょう。
北京ダックは高級ホテル中華ならではバランス良くて上品な味わい。

自家製という大根餅はカリッとなるよう外側を油で揚げており、
モチモチした内側の食感との対比が心地良いです。
チリソースの味わいも複雑玄妙（再訪の機会あれば海老チリも試したいです）。
花に見立てたという生のラディッシュも余さず貪っていました。

【3.9】フカヒレ2種盛り（台湾産ドラゴンフルーツの花、ヨシキリザメの尾ビレ、モウカザメの尾ビレ、ウバザメの頭部コラーゲン、削った金華火腿、金華火腿のスープ）

右手がヨシキリザメの尾ビレ、左手がモウカザメの尾ビレ。
今はもう獲れなくなったウバザメのコラーゲン（頭部のゼラチン質）も楽しめますが、
美味しさという点ではヒレのほうが遙かに優るように思います。

ヨシキリザメのほうがモウカザメよりプリプリしたような食感を楽しめて好印象。
金華火腿（ハム）で取ったという湯（スープ）も滋味溢れるような優しい旨味を楽しめて、
ドラゴンフルーツの花は「クタクタに煮込んだ葱」といった味わいでした。

【3.6】宮城産生ホタテと栃木那須産黄ニラの炒め 自家製XO醤添え

レアー感を残す火入れの生ホタテが優しい味わい（個人的には黄ニラのほうが主役）。
自家製というXO醤には干し貝柱や干し海老がザクザク入っています。

【3.6】山口産白甘鯛松笠 油で焼いた葱とパクチー 蔓菜 とろみ付けした醤油ダレ

カリッと鱗ごと火を入れた白甘鯛。
白甘鯛は冒頭で申し上げたレストランオオツで八幡浜産を何度も食べてしまっており、
山口産も甘鯛のブランド産地ではありますが、有難味をそこまで感じられず。

【4.0】つゆそば（塩ベース）

清湯（チンタン）を思わせるクリアーなスープですが塩をしっかり効かせており、
ガツンと強烈な旨味を感じられて好みに合います。
麺はもう少し硬めなほうが好み。

【4.2】自家製杏仁豆腐 鉾田産イバラキング（緑肉メロン）山形産佐藤錦（さくらんぼ）ツバメの巣のシロップ漬け

濃厚クリーミーで甘さしっかり、現代的に緩く固めた杏仁豆腐で素晴らしいです。
シンプルながら厨師の実力を感じられます。
そしてメロンやさくらんぼといったフルーツも杏仁豆腐に負けず劣らず良質。
中華はデザートが弱いと言われますが、これならブランマンジェやパンナコッタよりも美味しい。

【3.6】口水鶏～よだれ鶏～（1,490円）、ライス（250円）自家栽培コシヒカリ

アラカルト追加注文。
鶏の胸肉を使っていると思うのですが、しっかり火を入れて固めてありながら、
パサつきは少なくてシットリした食感を残しています。

タレは辣油の辛さがそこそこ効いており、トッピングに落花生やパクチー。
日本人厨師ならではの麻辣よりもタレのコク重視といった口水鶏ですが、
火入れや味付けのバランスなかなか良いと思います。
ライスはもう少し硬めな炊き加減のほうが好み。