【★4.0】居酒屋からイノベーティブ系リストランテへの覚醒【2622】 : ジーノ リストランテ

4,101文字★

（注）7月のレビューです

デグスタッツィオーネ（16,500円、内税）滞在時間：約3時間

東京から茨城県に来ております。

茨城県出身の先崎高弘氏（1978年生まれ）が腕を奮う同店（3.28）。
かつては居酒屋使いも可能な大衆イタリアンだったそうですが、
コロナ禍を経て完全予約制の本格リストランテに路線変更。

高級店から大衆店ならともかく、大衆店が高級店に変わるのは無謀にも思うところですが、
シェフの腕が元からリストランテとして勝負できるレベルだったのでしょう。
（茨城県は高級店出身の料理人が大衆価格に甘んじているケースが多いです。）
テロワールにこだわりながら、斬新な食材の組み合わせ方も楽しめる先進的な料理の数々。
茨城県のイタリアンで最もイノベーティブ要素が強いお店かも知れません。

つくば市を中心にトスカーナやプーリアといった郷土色の強い名店は多い茨城県ですが、
イノベーティブ系のリストランテは希少な存在。
同じ水戸市にはオオツ（4.16）というイノベーティブ系モダンフレンチの最高峰が在って、
東京から訪れる場合は悩ましいところですが、近所に住んでいれば定期的に通いたい実力店。

ご主人とマダムの二人三脚で切り盛りするこぢんまりした個人店。
店内の様子は掲載した写真（公式サイトより転載）の通り。
9,500円コースを予約していたのですが予約確認の際に15,000円も可能との営業あり。
税込で16,500円コースとなるでしょうか、提案に乗ってグレードアップしてみました。
下記の通り飲み食いしてお支払い総額1人あたり28,450円。

・ペアリング
1.鮪 2.玉蜀黍 3.鮎 4.鰻 5.鴨 6.羽太 7.牛 8.蟹 9.無花果 10.プリン

01.ピエロ マンチーニ ヴェルメンティーノ ディ ガッルーラ スプマンテ ブリュット N.V. 白泡 イタリア サルデーニャ
02.ヴィヴィア ビアンコ 2021 レ モルテッレ 白 イタリア トスカーナ
03.レンガ ピンク 2022 ロゼ ギリシャ エヴィア
04.牛久醸造場 エピヌ 常陸太田シャルドネ 2021 白 日本 茨城県
05.牛久醸造場 エピヌ 常陸太田メルロー 2021 赤 日本 茨城県
06.ニーノ ネグリ ヴァルテッリーナ スペリオーレ リゼルヴァ 2016 イタリア ロンバルディア
07.ポッジョ レ ヴォルピ バッカロッサ 2020 赤 イタリア ラツィオ
08.サン ミケーレ アッピアーノ サンクト ヴァレンティン ピノグリージョ 2020 イタリア トレンティーノ アルト アディジェ
09.常陸太田メルローとアマーロのカクテル
10.カンティーナ ディオメーデ カナーチェ 2019 赤 イタリア プーリア
11.アマレット水割り（ペアリングではなくて最後の〆に）

・デグスタッツィオーネ（16,500円）

00.奥久慈和紅茶 カモミール
01.本マグロ 真鯛唐墨 ナスタチウム
02.鹿島灘岩ガキ パッションフルーツ
03.パン
04.白エビ 白トウモロコシ ゴールドラッシュ 塩水ウニ ロビオラチーズ
05.奥久慈天然鮎 エゾあわび 奥久慈クレソン
06.かすみがうら天然ウナギ スカンピ 常陸乃国いせ海老ソース
07.かすみ鴨ハツ砂肝炭火焼き 白茄子 白霞 アニョロッティ
08.キジハタ 水牛モッツァレラ
09.つくば山麓熟成牛 ペコロス
10.ジロール茸 クリガニ タヤリン
11.バジリコ 桃
12.いちじく
13.パプリカのブディーノ フロマージュリーつくばジェラート

食べた料理の寸評は以下の通り、【】内は個別の採点、表示価格は内税です

【3.6】本マグロ 真鯛唐墨 ナスタチウム

プレゼンテスギ（4.44）という千葉県のイノベーティブ系イタリアンも、
中トロにトリュフとカラスミを乗せて握っていましたが、
マグロとカラスミは意外に相性の良い組み合わせなのでしょう。
（イタリア現地ではマグロの卵をボッタルガつまりカラスミに加工することもあります。）

細かくカットした本マグロ、真鯛の卵のカラスミ、シチリア産ピスタチオという構成。
プレゼンテスギもボラ子のカラスミではなくて卵黄（鶏卵）のカラスミで代用していましたが、
ボラ子は高級品なのでコース1万円台のお店ではなかなか扱えません。

食感をボラ子に近付けるのであれば濃厚な卵黄のほうが良いのでしょうが、
魚のニュアンスを求めるのであれば真鯛でしょうか。
ボラ子のカラスミほどのネットリ感は無いですがなかなか面白かったです。

【3.9】鹿島灘岩ガキ パッションフルーツ

66℃で軽く火を入れた岩牡蠣に、胡瓜、茗荷、オクラ、白バルサミコ酢を合わせて。
叩いた胡瓜からスイカを思わせるようなフルーティーさが漂って、
ソースにパッションフルーツを使っていることも相俟って何ともトロピカルな牡蠣。

常陸大宮市の雪村庵（4.01）も岩牡蠣にココナッツとパッションフルーツを合わせていました。
トロピカルな味付けが牡蠣の塩分や癖の強さに意外と合うのでしょう。
夏ならではの岩牡蠣を夏らしい食べ方で。

【3.7】パン

自家製のバター入りパニョッタ。
ギュムッとモチッとした食感を楽しめる丸パンで、酸味など無くて食べやすく美味しい。
魚料理にバターを使うから本日はバター入りのパンとのご説明。
オリーブオイルを使うフォカッチャを出すときもあるそう。

【3.8】白エビ 白トウモロコシ ゴールドラッシュ 塩水ウニ ロビオラチーズ

ゴールドラッシュ（黄色いトウモロコシ）を擂り流しているのか。
黄色いスープの糖度が高くてメチャクチャ甘いです。
トウモロコシ好きならこれだけで4.0級の評価となりそうな圧倒的な存在感。

白いソースは白トウモロコシと山羊のチーズ（ロビオラ・ディ・カプラ）。
塩水ウニ（ムラサキウニでしょうか）は宮城産。
シナモンバジルや紫蘇パウダーもトッピング。

ゴールドラッシュの甘みがあまりにも強く目立ってしまって、
料理としてのバランスに疑問を抱いてしまうも組み合わせ方は面白かったです。
キジハタ（後述）のときのように少し酸味を加えても良かったのかも知れません。

【3.7】奥久慈天然鮎 エゾあわび 奥久慈クレソン

ズッキーニ、カラーピーマン、玉葱のソースと合わせて。
前述雪村庵でも食べたことがある奥久慈の天然鮎は肝の苦味に特徴。
シットリ感を残す火入れなので骨がどうしても障ってしまう点は痛し痒し。

同じ時期に京都の食べログBronzeで食べた鮎は食感を重視したのか切り身でしたが、
それはそれで旨味を失ってしまっており非常にイマイチ。
同店の鮎のほうが全然良かったです（高級食材のあわびも少し添えてあります）。

【3.8】かすみがうら天然ウナギ スカンピ 常陸乃国いせ海老ソース

霞ヶ浦産の天然鰻と沼津産のスカンピ（フレンチで言えばラングスティーヌ）。
まさかの高級食材の共演。
ニラの花、メキシカンマリーゴールドの葉、クスクスを添えて。

鰻は皮よりも身のほうが主役となるような火入れ。
もっと皮をパリッと焼き切るような火入れのほうが好みですが悪くないです。
スカンピは殻からの身離れ良くてシットリした口当たり。

高級食材だけあってそれぞれ単体で食べて美味しいのですが、
一緒に食べることによる相乗効果までは得られず。
とはいえ初めて出会う挑戦的な組み合わせでした。

【3.8】かすみ鴨ハツ砂肝炭火焼き 白茄子 白霞 アニョロッティ

新利根チーズ工房の白霞（しろがすみ）と白茄子入りのアニョロッティ。
西崎ファーム（かすみがうら市）かすみ鴨のハツと砂肝を添えて。
イタリアン産サマートリュフの細切りもトッピング。

ラビオリのようなパスタであるアニョロッティ。
淡白で爽やかなチーズと蕩ける食感の茄子を詰めてあって、
ザラッとしたような中身とモチッとした生地の食感の対比が面白いです。
鴨はジビエではなく合鴨ですが、ハツも砂肝もフレッシュで食べやすかったです。

【4.5】キジハタ 水牛モッツァレラ

軽く火を入れることでプリプリ食感に変質して旨味も活性化したキジハタ。
イタリア産の水牛モッツァレラをソースに。
ゴールドラッシュのフリット、パリパリに揚げたカダイフをトッピング。

擂り流したようなゴールドラッシュのときは甘みがあまりにも強烈でしたが、
エシャロット、ニンニク、レモンなどで酸味を効かせたこの魚料理は、
甘みが適度に抑えられてキジハタのほうが主役といった存在感。

塩味、甘み、酸味が複雑に絡み合って、ブリブリ感やパリパリ感といった食感にも妙味。
これだけ色々な食材を組み合わせながら全体に統一感あって、
都心の総額60,000円クラスのフレンチやイタリアンの魚料理を凌駕する美味しさに。

【3.7】つくば山麓熟成牛 ペコロス

つくば山麓熟成牛のランプ、断面には削ったサマートリュフをトッピング。
青唐辛子入りのルビーペコロスとアマランサスを添えて。
玉葱出汁とマルサラ酒のソースで。
ランプの肉質が赤身メインで個人的にはもう少し脂肪も欲しいところ。

【4.0】ジロール茸 クリガニ タヤリン

手打ちのタヤリンに、イタリア産ジロール茸、クリガニという組み合わせ。
水を使わずに卵黄だけで繋ぐリッチなパスタ。
タヤリンのモチッとした食感にキノコやカニの旨味が良く馴染みます。
全体のバランス良くてシェフの技量の高さが分かりました。

【3.7】バジリコ 桃

メニューではマンゴーになっていましたが桃に変更。
爽やかに香るバジルと桃のグラニテでお口直し。

【3.7】いちじく

茨城産いちじくの赤ワイン（常陸太田メルロー）コンポート。
削ったホワイトチョコレートをトッピング。

【3.9】パプリカのブディーノ フロマージュリーつくばジェラート

濃厚なパプリカプリンと芳醇なチーズジェラートの組み合わせ。