【★4.3】茨城デラックスコース【1988】 : 炎神

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茨城デラックスコース（10,000円、内税）滞在時間：約2時間40分

東京から茨城県に来ております。

食べログ 中国料理 EAST 百名店 2021 選出店となっている水戸市の炎神（3.61）。
オーナーシェフ（1973年生まれ）は水戸プラザホテルの四川飯店（3.37）で10年修業。
茨城の地産地消にもこだわった創作的な四川料理を楽しめます。

茨城デラックスコース（10,000円）＋飲み放題（1,500円）

1.前菜盛り合わせ
1-1.愛知産天然鰻を生薬と太白胡麻油で3時間低温火入れ
1-2.よだれ鶏
1-3.くらげ 雪の妖精（白いスイートコーン）
1-4.加賀野菜の茄子と丸オクラ
1-5.スモークサーモン ひたちおおたチーズ工房ストリングチーズ
2.梅山豚スペアリブ スパイスマヨネーズ
3.岩手大船渡産アオリイカ（1.2kgサイズ）自家製オイスターソース炒め
4.常陸牛A5サーロインステーキ唐辛子ソース
5.北海道函館産花咲ガニ春雨
6.フカヒレとアワビの奥久慈軍鶏出汁オイスターソース煮込み
7.茨城産金ごまの冷やし担々麺 黒トリュフ掛け
8.デザート盛り合わせ
8-1.シャインマスカット杏仁豆腐
8-2.ブルーベリーソルベ
8-3.メロン
8-4.シャインマスカットと白餡の春巻き カスタード胡麻団子

食べた料理の寸評は以下の通り、【】内は個別の採点、表示価格は内税です

【4.1】前菜盛り合わせ

ホームページで「茨城産の素材を中心に」と謳っている茨城デラックスコースですが、
愛知産の天然鰻（うなぎ）や加賀野菜（加賀＝石川県）が出てきてズッコケました。
茨城産と説明されたのは、ひたちおおたチーズ工房のストリングチーズだけ。

しかし地産地消にこだわり過ぎて不味い地物を出すよりも正しい判断でしょう。
地産地消にこだわって茨城産の鱸や鯰を出すフレンチもありましたが、
ハッキリ申し上げて高級レストランで出してはいけないレベルでした。

天然鰻は生息地の個性を反映したその香りも魅力というのが筆者の持論なので、
トロトロになるまで生薬と3時間も火を入れるのはどうかと思ったのですが、
うなぎ百名店で食べた関東風に蒸しを入れた白焼きより美味しくて予想外のヒット。
生薬と太白胡麻油で関東風の白焼きを更に進化させた料理とでも申しましょうか。
中華料理店でここまで美味しい鰻に出会うのは初めてです。

よだれ鶏は本場四川出身の料理人が作る口水鶏より穏やかな味付けですが、
胸肉と思しき鶏がパサつかずシットリしており火入れ良し。
四川料理にしては控え目な辛さで日本人にも食べやすいと思います。

くらげとトウモロコシは一緒に食べるより別々に食べるほうが美味しかったですが、
生のまま食べても甘い雪の妖精（白いスイートコーン）の素材良し。
くらげは塩ダレのような味付けが好みに合いました。
ウェスティンホテル東京の龍天門（3.79）で食べたくらげに匹敵する満足感。

野菜は醤油ダレのような強めの味付けとなっており酒肴に向いています。
食べログで4.00を超えるような（お値段も4万円を超えるような）高級中華に比べると、
アタリ（塩）強くて大衆的にも思う部分あるのですが、
1,500円で飲み放題を付けられるので酒肴と考えれば許容範囲。

地物ストリングチーズをスモークサーモンで巻いた前菜も、
スモークサーモンの塩分、チーズの塩分、タレの塩分の三重奏でしたが、
味は良いですし酒肴として飲み放題を活かせるとも言えます。

【4.6】梅山豚スペアリブ スパイスマヨネーズ

茨城県に美味しい食材なんて無いのではと思っていましたが、
そういえば梅山豚（めいしゃんとん）を育てているのは茨城県の塚原牧場でした。
中国の太湖豚系の原種豚。
1990年に中国が輸出禁止品目に指定したので、国内に100頭だけと言われる希少種。

サラリとした上質な脂肪分に特長あって都内の飲食店でも重宝されていますが、
その梅山豚のスペアリブをスパイス蒸しにしたような料理。
脂身から強烈な旨味と爽やかさを感じられてメチャクチャ美味しいです。

筆者は豚のスペアリブより羊のスペアリブのほうが美味しいと考えており、
スーパーマーケットで購入した豚（国産）と羊（NZ産）を同じように調理しても、
やはり羊のスペアリブのほうが美味しいと感じました。
しかし梅山豚のスペアリブはノーブランドの国産豚や羊を遙かに凌駕。
ブランド信仰するつもりは無いのですが梅山豚の脂身の美味しさには圧倒されました。

そして甘いマヨネーズ（スパイスマヨネーズ）もコッテリした味わいで美味しい。
これで海老マヨを作っても最高に美味しくなるのではないでしょうか。
スペアリブの味変アイテムにも、付け合わせのブロッコリーや舞茸と合わせても良し。

【3.8】岩手大船渡産アオリイカ（1.2kgサイズ）自家製オイスターソース炒め

茨城県は常陸牛、梅山豚、奥久慈軍鶏といった有名ブランドを抱え畜産には優れていますが、
海産物に関してはイマイチという印象を持っています。
（フォローしておくと鹿島灘の蛤、大洗の鮑や岩牡蠣といった貝類は良質です。）

同店の厨師もそれを分かっているのでしょう大船渡（岩手県）のアオリイカを出してきました。
ヤングコーン、しめじ、アスパラガスと自家製オイスターソース炒めに。
発酵させた塩ダレを思わせる味わいで深いコクあって美味しいです。
アオリイカに細かく包丁を入れる超絶技巧もお見事。
コースの全容が掴めないので自重しましたが白米のおかずにしても良さそうでした。

【3.5】常陸牛A5サーロインステーキ唐辛子ソース

脂っ濃いA5サーロイン、カボチャ、獅子唐、舞茸、ホールの赤唐辛子。
トロミの付いた酸っぱ辛い唐辛子ソースでサッパリと味わえます。
筆者はコッテリ濃厚な味わいを好むので酸味を蛇足に思ってしまったのですが、
理に敵った組み合わせとして一般的には評価されると思います。

【3.8】北海道函館産花咲ガニ春雨

茨城要素は無いですが蟹出汁の効いたスープと春雨の組み合わせは良かったです。
カニスプーンで花咲ガニの身をほじくり出して食べられますが旨味は弱め。
出汁に旨味を吸い取られた後なのかも知れません。

【3.8】フカヒレとアワビの奥久慈軍鶏出汁オイスターソース煮込み

春雨でも十分に美味しかったですがフカヒレまで出てきました（食感が似ています）。
アワビは乾貨ではなくフレッシュなものを使っているのではないでしょうか。
茨城県の誇る奥久慈軍鶏で出汁を取ったアタリ強めな湯（タン）で食べます。

理想を申し上げると湯のアタリを穏やかに、アワビはもっとやわらかなほうが良いですが、
10,000円ポッキリのコースでフカヒレもアワビも楽しめて文句は無いです。
湯のアタリが強いので白米のおかずにしても大活躍したかも知れません。

【4.0】茨城産金ごまの冷やし担々麺 黒トリュフ掛け

仕上げに厨師が黒トリュフを細かく削ってくれるのですがそれは蛇足かも知れません。
トリュフなんて無くてもこの冷やし担々麺は4.0級に美味しいと思います。
地物という金ごまの香りに鹹水のような麺の風味がマッチして硬めな茹で加減も良し。
中華料理店で麺料理を食べてもラーメン屋のほうがと思うこと多いですが、
この冷やし担々麺は専門店として勝負できそうなぐらいレベル高かったです。

【4.1】デザート盛り合わせ

中華料理のコースは〆のデザートが弱いように思っていたのですが、
そんな心配は御無用と言わんばかりにデザート盛りをドカーンと出してきました。
濃厚コッテリ蕩ける杏仁豆腐は、例えれば杏仁の香り漂うパンナコッタ。
リストランテでも出せるレベルと思う感動的な美味しさ。

コッテリしたパンナコッタ、春巻き、胡麻団子、アッサリしたソルベ、メロン。
構成のバランスも良いと思います。
1,500円で飲み放題を付けられてコース10,000円ポッキリでこの充実した内容。
東京を基準に考えればコストパフォーマンスは非常に高いでしょう。

唯一にして最大の弱点は提供が遅かったこと（8皿で2時間40分という遅さ）。
この弱点さえ解消されれば筆者にとっては4.5級の中華料理店となりそうな予感。
水戸にはレストランオオツ（4.29）という全国トップクラスのフレンチ在りますが、
まさか四川料理の名店まで在ったとは水戸駅の近くに別荘でも欲しくなります。
（なお同店お昼はランチメニューのみ、コースやアラカルトは夜となります。）