「そんな居酒屋」を応援します。( ^.^)/ : まとりや小五郎

カラオケのデュエットの「定番」、と云うか、オッサンがオネーさんと歌いたがるのが
「銀恋」等と並んで人気の「居酒屋」。

その中にこんなくだりがある。
“絵も○い　花も○い　歌も○い　飾る言葉も 洒落も○い　そんな○○○で。”（一応伏せ字にしておきました。）
そう、“そんな居酒屋”が好きである。
そして「そんな居酒屋」で、旨い酒がオイシく呑めればほかに贅沢は要らない。


久し振りに、旭川の繁華街「サンロク」に在る「小五郎」を訪れてみた。
昔、このお店の雰囲気が好きであった。

店内は、「昭和」の雰囲気を残すような適度な古さ。
長いカウンターと、向かい側の大広間。
大漁旗が飾ってあり、大きな魚拓もぶら下がっている。
港町でもない旭川だけれど、不思議と違和感が無かった。

大広間では、呑兵衛たちが実に楽しそうに酒を酌み交わしている。
そのオッサン達のオヤジギャグを軽く受け流すオバ・・・ＯＬさん（？）たちも楽しそうで
とにかく活気に満ち溢れていたものだ。

割烹や小料理屋と云うような上品な雰囲気では無いけれど、
酒の飲み方も知らぬような五月蝿いだけの若者の集団など居ない。
もちろん、ふんぞり返った傍若無人なガハハオヤジも居ない。
カラオケも無い（たぶん）ので、
“唄声とは云えないドラ声”などに耳をふさぐこともない。

まさに、あの唄に登場するような“そんな居酒屋”であったと思う。


しかし・・・
何年か振りに訪れてみると、どうも様子が違う。
まず、入り口からして、暗い。
いやもともと古いビルで照明も暗いんだけど、それ以上に暗い。

そして・・・あの活気は何処に？

うーむ。地方都市は何処もお客が減ってしまっているが
とは云っても、流行っているお店も在るのだ。
その（流行るか流行らないかの）分かれ道は、どこにあるのだろう・・・


こちらのお店は、サンロクの交差点に看板が出ているが
実際には、この路地の奥にある階段から行くので、知らないと行き方が分からない。

でも、一度行けばきっと気に入ると思うのだ。

ある意味“定番”の「ホッケの塩焼き」は
皮までバリバリと食えるほどの絶妙なる焼き加減。
もちろん身はホクホクで脂が乗っていて、端っこのほうにも独特の臭みなどもなく
かなりのハイレベルであった。
少なくとも、最近の繁盛店である「独酌三四郎」のホッケよりも旨いと思う。

「空豆はさみ揚げ」もカラッと揚がっていて美味しい。
「かすべ揚げだし」は、軟骨のようにコリコリとしてもちろん旨い。

「いもっぺ」と云う料理も面白そうなので頼んでみた。
これは「いもだんご」を焼いたものらしいが
芳ばしく、外はカリッ、中はふわっ・・・
そして何よりもタレの旨味。
思わずニンマリしてしまうくらいのオイシさであった。

ただ、「イかごろ味噌焼き（￥６５０－）」は、自分の好みには合わなかった。
何しろビビるくらい量が多いのと、
味付けも濃厚なので、かなり重く感じたのである。

白味噌風の「味噌汁」は旨かった。
“（わかめ、豆腐）￥１５０－”と書いてあったので、両方入っていると思ったら
ワカメか豆腐を選ぶそうな。（まぁ１５０円だし。）
このワカメが、厚めのワカメで食感も良く、ネギとの相性も良かったのだ。


こんな具合に、料理自体には決して華やかさは無いし
とにかく種類が多いので、どれもこれも美味しいというわけではない。

しかしながら、繁盛店と比較しても流行らなくなるほどの差はないと思うし
料理によっては繁盛店よりも旨いと思う。


そして、結構旨い酒が置いてある。
「男山木綿屋」など、滅多に見掛けないお酒もある。
もちろん呑んでみれば「あぁ・・・旨い・・・。」だ。

そういえばこのお店で面白かったのが
「男山・ハト燗」
写真のように愛嬌のあるトックリで飲む熱燗なのだが、
真冬の旭川では並の熱燗では暖まらない。
このトックリで固形燃料で熱々に炙りながら飲む燗酒は、いつまでも熱々のままなのだ。

ただ、今は固形燃料が無いのでメニューから外してしまったそうな。
でも、混んでいないときは奥で焼いて来ればｏｋだそう。
これで￥３５０－である。
手間ひま掛かっているのに、ナンだか申し訳ないような気がした。


接客もきちんとしている。
女将さんは、昔は美形であることを思わせるような（ちと失礼かな？スミマセン）キリッとした男前。
もちろん余計な愛想笑いなど無いけれど、お客をきちんと見ている。
真冬に入り、カウンターに座って寒そうにしていたら、
いつの間にか後ろにストーブが置いてあったりも。


このように、雰囲気は「そんな居酒屋」だけれど
なぜ流行らなくなってしまったのかが全く分からないくらい
じつに魅力的な要素の多いお店なのだ。
いつかきっと活気が戻ることを期待して、陰ながら応援して行こうと思う。