北海道の大地のめぐみ×素材の組み合わせの神がかったセンス×札幌ホスピタリティ : AKI NAGAO

10年ほど行きたいと思ってあたためていた、札幌の名フレンチ。
結果的に北海道で今まで訪れたあらゆるジャンルの食べ物屋さんの中で、最も大きな感動を残した。
まだ暑い8月末の平日の夜。名前入りのメッセージカードと、冷たすぎず、ちょうど良い快適な冷たさのおしぼりに出迎えられ、出だしからホスピタリティに感動する。
各料理のサーブ前に出てくるスプーンも、いただくとき1番心地よい温度になるよう計算しつくされてサーブされる。

27500円のおまかせコースをいただいた。
夏は北海道でおいしい食材がたくさんとれるので、それを活かしたコースとのこと。
どの料理もたくさんの素材、思いも寄らぬ組み合わせだが、いかにもおいしそう、そして実際とてもおいしい。この組み合わせ、センスが天才的☆
サーブされたとたん、プレゼンテーションの美しさに感嘆し、実際味わって、とてもおいしくて感動する。
北海道各地の食材を使用していらっしゃり、かわいらしい北海道の図柄を見ながら説明を受け、北海道各地を旅している気分にもなれた。

サービスの方々のホスピタリティもすばらしい。とても親切、かつ料理にもとても詳しくて丁寧に解説してくださるので、料理の魅力が倍増する。
私は子供の頃よく札幌に行っていて、札幌の人たちはとても温かいと感じた。サービスの方々の温かさは、そんな幼少時代の札幌の人たちの温かさにシンクロした。

税サービス料込みで27500円。内容鑑みると、良心的な価格設定。

☆9増毛りんごジュース
「栄養豊富だとされる“葉とらず林檎”のジュース」
コース外で選んだソフトドリンク。
つぶつぶ感は無いながら、すりおろした感。自然な甘みが強くて、まろやかな味ながらりんごらしい旨味も凝縮してる、絶品りんごジュース。
こんなにおいしいなら、他のドリンクや、ソフトドリンクペアリングも秀逸なのだろう。

ソフトドリンクペアリングは、1皿ごとに料理との相性をひたすら追究してセレクトされているとのこと。税サ込みで11000円弱のコース。

★9アミューズ
コースには載せられていない。
カリフラワームースの上に、海水で茹でた石狩うに、オホーツクけがに。
さらにその上に、フランス産オマールコンソメジュレ。オマールブルーという、火入れする前の殻が青い、希少なオマールだそう。
そして挽きたての珈琲パウダー。

それぞれの素材自体も素晴らしい上、バランスが考え抜かれてるので、全部一緒にいただくのが一番おいしい。
オマールのジュレに潜んだ特に珈琲パウダーが絶妙な仕事。個性とアクセントを加える。
食材の組み合わせのセンスの塊☆

★9厚岸　かきえもん　–　海洋深層水のミネラルと梅　ビーツのムース
厚岸は牡蠣の名産地。ある程度大きくなるまで他の場所で育てても、水揚げを厚岸で行えば厚岸産と名乗れるそう。
一方で、かきえもんは小さな種自体から厚岸で育ててている、厚岸の方々も誇るブランドとのこと。
こちらの牡蠣は、小さな頃は温かい湾内で育て、少し大きくなったら冷たい湾外の海水に移すことで、旨味を凝縮させているとのこと。
たしかに、小粒ながら濃厚でうまみが凝縮されている絶品牡蠣。かきえもんは何回かいただいたことがあるが、今までのかきえもんとも一線を画すおいしさ。
今ちょうど産卵を終え、ミルキーさよりミネラル感が強くなってくる時期だそう。それでもミルキーだと思ったが、言われてみればさっぱりした味わいでもあるかも。臭みはゼロ。


☆8.5合わせるソースは、オレンジ色のものが梅のジャム、緑色のものはミントオイル。
その上にはたっぷりと、海洋深層水と梅のジュレ。
海洋深層水は岩内町産で硬度高く、それにより牡蠣の旨みを閉じ込めるとのこと。日本にはいくつか海洋深層水を汲める場所があり、北海道では岩内町のみとのこと。
トップにはキャラベイというハーブが添えられている。
ジュレなど全体的に塩気強め。

★8.5支笏湖　チップ　–　おぼろ昆布とエストラゴン　玄米味噌のタプナード
チップとはヒメマスのこと。
支笏湖は日本で1番透明度高く（摩周湖ではないか）、ヒメマスは6-8月のみ捕れるそう。
今回は、ひめますらしい味わいと特に感じられる頭と尾のみ。
酢漬けにしたエストラゴンとおぼろ昆布で巻いて素揚げしている。
美しい洗練されたプレゼンテーション、凝った調理とはうらはら、実際口に入れると、いい意味で土臭い、素朴なおいしさ。
手前左に添えられたペーストは、黒オリーブ、アンチョビ。つけるとさらに、素朴で自然な味わいを楽しめる。

☆8.5左奥にかわいらしく添えられているのはラディッシュ。甘酸っぱいハチミツのソース絡めた。そのまま手で食べて自分で収穫しているような感覚を味わってくださいと。

かなりジューシー（硬めのりんごくらい）で旨みもしっかり。ラディッシュってぱさついて旨みもあまりないイメージだったこともあり、こんなにジューシーでうまみもしっかりしたラディッシュが存在することに驚きと感動！大地の恵みを感じる。


★8.5自家製パン
さっぱりしてて主張しないんだけど、粉の旨みはしっかり。とてもおいしい。
☆7.5季節のバター
アボカドと豆乳で軽く仕上げている。４種の味の異なるハーブと一緒にいただき、違いを楽しむ。

★8.5季節のスープ　–　フルーツトマトと白桃　香味野菜のガスパチョスープ
フルーツトマトはあらごしの食感を残している。赤パプリカ、きゅうり、セロリ、バジルオイル。緑の粉フェンネルのつぼみ。独特のハーブ香を加える。

それぞれの食材、言われなくて当てるのは不可能だが、事前に説明受けてからいただくと、何が入っているのかはっきりわかる。
素材から想像するどおりの絶品ガスパチョ。白桃が入ることで、まろやかなおいしさに仕上がっている。

★9羅臼　キンキ　–　バイマックルー香るリゾットとガルムソース
左に添えられた青いリゾット。紫キャベツの天然色素を重曹と炊くことで青色に仕上げたとのこと。
ブロッコリー、イタリアの魚醤コルトゥーラで作った酸味あるガルムソース。
ソースとリゾット混ぜると酸性が加わって色がピンク色に変化するのを楽しむ。小学校の理科の実験を思い出す。
こぶみかんの葉を上に散らして、アジアンテイストに。

アジアンテイストの香り、きんきの火入れの艶かしい色合い
きんきがとろとろ、口の中でとろけてなくなる。素材自体が絶品☆


★9白糠　蝦夷鹿　–　皮付きヤングコーンと黒トリュフのソース
松野さんという名手ハンターが捕った鹿とのこと。馬木葉（まきば）という会社で、東京の三ツ星レストランがこぞって手に入れたがる名ハンターとのこと。AKI NAGAOさんは昔から関係があるので、常連さんとして仕入れることができ、それはとても貴重とのこと。

蝦夷鹿は通年捕れるが、夏は余計な脂が落ちて、エレガントにさっぱり、赤味を楽しめるとのこと。
付け合わせはノーザンルビーというじゃがいもピューレ。
☆9ソースペリグー（マデラ酒）とトリュフのソース　王道の絶品☆

切れ目の美しい艶感と色にうっとりする。その見た目通りなめらかでどこまでも柔らか。フォークやナイフでこのやわらかさを一ミリもつぶしたくなかったので、そのまま掬って大事にいただいた。たしかにさっぱり。赤身のうまみを堪能する。味より食感の感動が大きい絶品鹿。
名猟師は100メートルなど先の獲物にも一発で急所に当てるので、個体にストレスを与えず、硬くならず、良質の肉になるとのこと。まさにその猟の腕前がそのまま、このすばらしい食感となっている。

☆9ズッキーニ
7割水ってくらいのジューシーさでこれまた驚きと感動の食材☆こんなにジューシーなズッキーニに炙った香ばしさも加わる。

☆8ヤングコーン　ひげも一緒にいただくことで素材そのもの感増すとのこと。たしかに。大地の恵みをそのままいただいている感じ。


次は圧巻の美しさの茶葉のプレゼンテーション。
3時中央の位置にはレモングラス、9時　茎ほうじ茶、10時カモミール。
手前のコーヒーは深煎り（6時）と浅煎り（5時）。深煎りは徳光珈琲とのこと。調べたら札幌のコーヒーの名店。
かなり迷ったけど、☆7レモンバーベナ（1時）と☆6.5ラベンダーのハーブティーにした。
数種のブレンドも可能とのこと。

★8〆のデセール　–　玄米チャイのムースとブラックカカオのソルベ
こちらもモダンアートのような美しいプレゼンテーションで登場。
☆6右奥はチャイ、カルダモンと生姜のムース、メレンゲ（たしか）を玄米茶とバタークリームの土台に乗せたもの。

☆9ブラックカカオのソルベ
ウイスキーの香り、甘さ控えめで大人の味とのこと。
ミルクを入れていないタイプでカカオの風味の濃厚さをしっかり感じられる。好みにどはまり。

完熟パイナップルは台湾ハーブでマリネ。フィンガーライムで酸味のアクセント。　　　

★8ウィークエンド　というネーミングのプティフールでしめくくる。
日本茶茶葉のお菓子。柔らかめのクッキーというかなんというか、ありそうで食べたことない食感のお菓子。
パッションフルーツの砂糖がふりかけられている。
日本茶とパッションフルーツも合うんだっていう感嘆、というかNAGAOシェフの手にかかかるとどんな食材の組み合わせもおいしくなってしまうのかも。