廣島の中華そばらしさが拔群でゐて個性的な一杯 : 寿楽亭

本日（令和6年2月12日、月曜日）、廣島市中區十日市町にあります「壽樂亭」さんにて、御晝を頂きました。

此方は廣島の中華そばを提供されてゐる老舗です。ご高齡の女將さんに據る「ワンオペ」の營業です。「御晝を頂きました」と書きましたが、今囘、御店をたづねたのは、午前10時20分の事ですから、御晝としては可也早めの時間です。同店に就いて、何時からの營業なのか、私は正確な情報を持つてゐませんが、感覺としては「朝ラー」と云ふはうが正確な營業時間帶かも知れません。

何せ午前11時には閉店してゐる事さへあるやうな氣がします。上述のとほり、10時20分に入店すると、御店はほゞ滿席です。「ワンオペ」で、女將さんは中華そばを作り、提供されてゐる爲、暫く、註文はせずに店内の樣子を見ます。

二年前の10月以來の訪問ですが、昭和な雰圍氣は變らずです。女將さんの御仕事が一段落したのを確認して、カウンター越しに口頭で註文します。私の註文は以下のとほりです――。

「中華そば大盛チャーシュー麺」（1,030圓）

――以上です。二年前も同じメニューを頼んでゐますが、その時よりも50圓値上げしたやうです。因みに「麺柔らかめ」、「チャーシューは赤身で」ともオーダーしました。會計は、後拂ひでいゝのですが、カウンターにお札や硬貨を置き、セルフで行ふ方式です。お釣りも、カウンターに置いてある硬貨を自分で取ります。

このセルフでの會計方式、私のばあひ、嘗て早稻田大學理工學部の近くにあつた煮干ラーメンの老舗「めとき」さんを思ひ出します。上述しましたやうに、後拂ひでいゝのですが、私はセッカチなのでせうか、女將さんに「先にお支拂ひします」と告げて、先に拂ひました。

註文して9分程で待望のラーメンが屆きます。上述しましたメニューに就いて、詳しくは何時ものとほり、畫像を御覽下さい。「百聞は一見に如かず」と申しますから。

廣島の中華そばに於ける特徴の一つとして、青ネギともやしが乘りますが、同店ではネギラーメンや野菜マシなどはないものゝ、普通の状態で可也の量の青ネギともやしとが乘ります。

チャーシューは昨今逸りの低温調理されたものではなく、昔ながらのよく火がとほつたタイプです。註文どほりに赤身の部分ばかりで、赤身の特徴として肉の旨みを堪能出來ます。チャーシューの味附も押し附けがましい事がない、絶妙な加減です。

スープは廣島の中華そばらしく、豚骨醬油ですが、非常にクリーミーな舌觸りと風味とです。と云つて、醬油に據る返しが弱い訣ではなく、豚骨や根菜類等に據る出汁の旨みや甘みに、返しが加はる事によつて、スープ全體としての輪郭が備はつてゐる印象です。

麺も註文どほり、柔らかい茹で加減です。パキッとしたかためも樂しいですが、小麥の甘み、そして麺とスープとの一體感を重視するならば、柔らかめにしたはうがいゝです。

廣島市に於ける中華そばでは、私は八丁堀の「上海總本店」さんに據る「ワンタンチャウシュウメン」が一番ですが、その「上海」さんは廣島の中華そばとしては破天荒（前代未聞）な存在です。廣島の中華そばらしい中華そばとして、私が一番好むのは「壽樂亭」さんかも知れません。女將さんのホスピタリティも素晴らしいですし。

とまれ、御馳走樣でした。

本日（令和4年10月3日、月曜日）、廣島市中區十日市町にあります「壽樂亭（寿楽亭）」さんにて、可也早めの御晝を頂きました。廣島中華そばの老舗です。

同店をたづねるのは、昨年6月以來です。御店は10時ちやうど開店との情報がありますが、9時40分ぐらゐに御店のまへに到著すると、ちやうど女將さんが玄關を開けて、暖簾を掲げる處でした。

聞くと、先に御店にはひつていゝとの事です。と云ふ訣で私は一番乘りです。私は一人ですので、一番奧のカウンター席に著席しましたが、女將さんの御厚意で、眞ん中の席に坐つていゝとの事です。

註文は「チャーシュー麺大盛」（980圓）です。「可也早めの御晝」と記しましたが、實際にはブランチである爲、大盛にしました。註文の際、麺はかためがいゝか、普通がいゝか、チャーシューは脂身が好きか、それとも赤身が好きか、と女將さんにたづねられました。ですので、麺は普通で、チャーシューは何方とも好きです、と答へました。

この邊、私が一番乘りで、後の御客が來る迄、ほんの少し餘裕が生じた爲、たづねられたのかも知れません。

早い時間帶であるにもかゝはらず、後の御客は數名ですが、常連の方に就いては、「何時ものね」とだけ確認するのが、女將さんの流儀のやうです。

上述しましたメニューに就いて、詳しくは何時ものとほり、畫像を御覽下さい。「百聞は一見に如かず」と申しますから。

註文して3分で、「チャーシュー麺大盛」が屆きます。畫像を見れば、一目瞭然ですが、ネギラーメンかと思ふぐらゐ、大量の青ネギが盛られてゐます。之は廣島市の觀音ネギでせうか……？　具材は、その青ネギにもやし（この邊は廣島の中華そばに於ける基本形ですね）、それにほゞ短册状に切られたチャーシューが澤山です。

因みに料金に就いては、後拂ひでも先拂ひでもよく、カウンターのうへに釣錢として硬貨が置いてある爲、御札で拂ふばあひは、御札を文鎭で留めて、セルフサーヴィスとして、釣錢を受取る仕組です（この仕組は嘗て東京は大久保に存在した「めとき」さんを思ひ出します）。私は、その旨を女將さんに傳へたうへで、ラーメンが屆く前後に拂つて置きました。

扠、中華そばに話を戻しますと、スープは、廣島の中華そばらしい、豚骨醤油のそれです。恐らくは豚骨、鶏ガラと云つた動物系の出汁、根菜等の野菜系の出汁とを合はせて、醤油が主體である返しを用ゐたものだと思はれます。前囘は、どちらかと云へば、出汁の旨味に重きを置いた仕上りだつたやうに記憶してゐますが、今囘は醤油が主體である返しの主張に就いて、そこ／＼強い印象を受けました。ほんのわづかに感ずる酸味は、出汁に據るものか、醤油に據るものか、私には判斷出來ません……。甘みに關しては、矢張り、豚骨や野菜に據るものと思はれます。

Orthodoxな廣島中華そばに於けるスープの作り方だと感じますが、鹽味、甘み、酸味の合はさり方が絶妙な鹽梅です。

麺は、之また廣島中華そばのそれらしい、低加水率寄りの細麺です。大盛にした爲、量もそこ／＼あります。かたさは普通と傳へてありますが、私には之でちやうど良かつたです。私にとつては、かたくもなく、柔らかくもなくと云ふ感覺です。寧ろ、麺の甘さを抽出す爲には、柔らかめと云ふ註文さへもありかも知れません……。小麥のかをりも仄かに感じて、今囘は普通の茹で加減で滿足しました。麺とスープとの相性も良好です。

具材は上述したとほりの内容です。脂身が主なチャーシューは、矢張り、甘みを感じ、赤身が主なチャーシューは、矢張り、肉の旨味を感じます。青ネギやもやしに就いては、矢張り、廣島らしさを感じます。

スープの出來に關しては、前囘よりも今囘のはうが、私には好みに感じました――多少濃いめが私の好みです。機會があれば、また伺ひたいと思ひます。とまれ、御馳走樣でした。

※前囘のレヴューとはスコアの採點方式が異なります。詳しくは私のProfileを御覽下さい。

本日、廣島は十日市町にくらゐします中華そばの老舗「壽樂亭（寿楽亭）」さんにて、御晝を頂きました。

前囘、當店をたづねた際には、十一時二十分過ぎの事でしたが、既に營業を終了されてゐました。今囘は、開店時間である十時ちやうどの五分過ぎくらゐに御店に伺ひました。早い時間帶であるにもかゝはらず、十名ぐらゐは先客の方がいらつしやいました。

年配の女將さん一人で御店を切盛りされてをり、その女將さんに註文を傳へます。メニューは、中華そば竝（600圓）、中華そば大盛（700圓）、竝チャーシュー麺（780圓）、大盛チャーシュー麺（880圓）と云ふ邊でせうか。酒類は提供されてゐるのかどうか、私は未確認ですが、店内にキリンビールさんのポスターは貼られてゐました。

カウンター席とテーブル席とがありますが、カウンターの右端に著席して、「竝チャーシュー麺」（780圓）を註文します。註文して三分くらゐで、ラーメンが屆きます。左記したメニューに就いて、詳しくは何時ものとほり、畫像を御覽下さい。「百聞は一見に如かず」と申しますから。

當店の中華そばの特徴の一つとして、トッピングやコールなどをしなくとも――抑、そんなものはないと思はれますが――、普通の註文で、可也の量の青ネギが盛られます。確認はしてゐませんが、廣島の觀音ネギでせうか。具は他には、もやしが適量、チャーシュー麺ですので、チャーシューが數枚です。

まづはスープのみ飮んで見ます。色合ひとしては、薄茶色と白濁してゐる博多ラーメンのスープとの中間邊でせうか。味はひとしましては、いはゆる廣島の中華そばらしいスープだと感じます。豚骨、鶏ガラ、各種野菜邊を用ゐて煮出したものが、スープの風味に於ける多くを占めてゐるものと思はれます。前文にて、「風味」と記しましたが、豚骨に由來する臭みは一切感じません。

廣島に於ける中華そばのスープは、豚骨醤油（或は醤油豚骨）であるとよく云はれますが、當店に關しては、醤油に由來するタレの味は、控へめです。控へめではありますが、薄味と迄は行かない、絶妙な「鹽梅」とでも云ひませうか。上述しました「だし」の旨みが、甘くてまろやかな味はひを演出してをり、アッサリとしてゐながら、こくをも感じます。之は、女性や子供にも好まれる、正に優しい味と云へませう。

麺は、之また廣島の中華そばらしい、細麺です。低加水で、やゝかために茹でられてゐます。小麦の香りはそこ／＼感じ、低加水の細麺ですので、スープともよく絡みます。矢張り、上述した優しい味はひのスープであれば、左記しました麺との相性が良好です。

具に關しましては、上述したものが入つてゐます。青ネギは、その香味が豐かな風味です。澤山盛られてゐますので、ネギ好きには嬉しいですね。もやしは、廣島の中華そばに於ける特徴の一つと云へませう。チャーシューは、縱長にやゝ薄めにスライスされたものが、數枚です。醤油ダレにて、少しばかり下味が施されてゐますでせうか。チャーシュー自體は、とてもアッサリとしてゐて、齒應へもそこ／＼に感じます。スープに浸して食べると、ちやうどいゝでせう。

既に記しましたやうに女將さん一人での營業ですので、會計は客が其々、セルフで行ひます。カウンターにお釣り用の各種硬貨が置いてありますから、みづから支拂ふお札は、カウンターのうへに置き、文鎭にて固定した後、お釣りを自分で取ります。このシステム、嘗て東京は新大久保にあつた「めとき」さんを思ひ出します。

餘りにも美味しい中華そばでしたので、スープも完飮して了ひました。すると、それを見た女將さんが、「丸ぢやね」と云ひ、ニッコリと笑つて呉れました。私もつられて笑顏になり、「御馳走樣です、美味しかつたです」と御禮を云つて、御店を後にしました。