本当は教えたくない、大人の宿。 : 杓凪華

　二度目の利用です。
　以前こちらに主人と泊まったとき、大変失礼ながら「群馬にこんなにおいしいものが、こんなにたくさんあったなんて！」と感激。
　その感動が忘れられず、今回は両親も連れてリピートしました。


　まずはお食事のレビューから。
　こちらのお宿では、草津周辺や群馬の食材を使った創作会席がいただけます。
　群馬の野菜のおいしさは関東圏にお住まいの方ならおなじみですよね。
　この季節ですと、生でも甘くてみずみずしいキャベツや、とれたてぷりぷりのトマト、トウモロコシなど。
　それらがふんだんに使われていてヘルシーで彩りのよいお料理になっています。


　そして意外にも、お魚も美味しいんです。
　海のない群馬が誇る最高級ニジマス、その名もギンヒカリ。
　とろけるようなお造りは他では味わえない最高のおいしさです。
　（最近は技術が発達しているのであまり気にすることもないでしょうが）山の中で魚なんか食べてもなぁ、と思われるような方にはぜひ一度召し上がっていただきたいです。
　実は私もそのクチでしたので……。


　群馬といえば真っ先に出てくるコンニャクも、上品なみそをつけたり丁寧なお造りにしたりして、「名物に旨いものなし」なんて言わせません。


　今回はお料理を少しアップグレードしたのでフォアグラやオマール海老も出していただきました。
　地元食材ではないものの、そこいらのフレンチレストランに負けない仕上がりになっていました。


　そしてメインは上州和牛。
　今回は溶岩焼きで、さっと表面に火を通しただけの霜降り肉を、ブロック状の溶岩でさらに好みの焼き加減にアレンジできます。
　（ファミレスのハンバーグについてくるペレットがすごく上等になった感じです。）
　そのままとろけるお肉を味わってもよし、焼いても全然硬くならないので脂を落としてさっぱりいただくのもまたおいしい……！


　シメは鮎ごはんでした。
　ほぐし身が混ぜてあるのですが、香りがよく、骨も取り除いてあって食べやすい。
　でも前回まるごとの塩焼きで出てきた時より見た目のインパクトには欠けます。
　同じく前回おっきりこみ（きしめんのような郷土のうどん）のお鍋がおいしかったのですが、今回は出てこなくて、代わりに揚げたものが前菜に入っていました。
　お料理は定期的に変わるようなので次には復活しているかもしれません。


　帰りに気づいたのですが、出入口のところに和牛の証明書が貼ってありました。
　野菜を作っている農家の方や卵の紹介なども飾ってあり、地元食材にこだわっているのが伝わってきます。


　今回のお食事は全9品で、量は多すぎず、女性でも無理なく完食できます。
　前回いただいた上州和牛の握り（別注）がすごく良かったので、男性陣はそれを足してもよかったかなという感じでした。


　お酒は一般的なものの他、クラフトビール、地酒、地ワイン、地ウィスキー、地焼酎。
　ソフトドリンクも地元のサイダーやジュースが中心です。
　今回いただいた川場シードルは今まで飲んだ地物シードルの中で一番おいしいと感じました。
　アルコールがたったの3%で甘くてほとんどジュース感覚なので、お酒が得意でない女性にもおすすめです。
　日本酒は前回も今回も水芭蕉をいただきました。
　すっとして飲みやすい、手間のかかった群馬の地酒です。


　朝食は和定食で、ドリンクのみセルフサービス。
　地元のリンゴジュースや牛乳、コーヒーなどがあるんですが、この牛乳がさらっとしているのにとても甘くて衝撃的な美味しさでした。
　詳しく銘柄など見ておけばよかったです。


　前回は岩魚の焼いたのが出てきて山っぽさにテンションが上がったのですが、今回は塩鮭に。
　ですが、ふわふわの出汁巻玉子や、キノコの旨みたっぷりのお味噌汁、新鮮な野菜サラダ、コンニャクの煮物には上州和牛がちょっと入っててお得感があり、バランスのとれたおいしい朝食でした。
　卓上で作る出来立てのお豆腐も目新しくてよかったです。


　食事処はテーブルと椅子で、布で仕切られた半個室になっています。
　夕食・朝食ともに同じ席で決まっていて後に入るお客さんもいないため、ゆっくりと食事できました。
　細かいことですが、ロゴ入りのお箸が先細りになっていて使いやすいのも好印象でした。


　最後に宿泊に関して。
　まず館内は二階建てで客室9室とこじんまり。
　移動は階段のみですが、浴場とお食事処は一階にあるので、一階のお部屋を取ればスムーズに利用できます。


　湯畑から徒歩15分、さらに小学生以下のお子様にはご遠慮いただいているため、とても静かで落ち着ける空間になっています。
　水回りの一部に古さが感じられますが全体的にはリノベーション済で清潔。
　館内は禁煙でお食事中ももちろん禁煙。
　ロビー隅に喫煙コーナーがあります。


　温泉は万代鉱源泉のかけ流しということで、湯畑周辺の宿とは違い、サラっとした透明な湯。
　ですが美肌効果には変わりなく、熱くて少しぬめりのあるお湯でお肌がすべすべになります。
　浴場も小さめで露天風呂もありませんが、女性への色浴衣サービスや温泉用の籠バッグの貸し出し（部屋に備え付けてあります）、足袋ソックス、湯上りのドリンクサービスなどで工夫して、十分すぎるほど補っている印象です。


　一階と二階にそれぞれ読書のできるラウンジがあり、一階ではハンモックとハーブティのサービスも。
　卓球場や、貸出備品としてオセロやカードゲーム（中には上州かるたも！）があります。
　チェックインしたら即温泉、浴衣に着替えてあとは館内から一歩も出ずにのんびりと……そんなおこもりステイも堪能できます。


　そしてお食事や設備もさることながら、スタッフのサービスもとても心地よいんです。
　布団の上げ下ろしなど一部はセルフですが、それがまたつかず離れずの心地よい距離。
　フロントも配膳も同じスタッフの方が少人数で切り盛りされているようで、大変だとは思いますが、顔の見える安心感があります。


　前述のとおり湯畑には徒歩で15分ほど。
　散策しながら向かうのも楽しいですが、途中に坂や階段もありますので、巡回バス（後払い100円）もあわせて利用すると便利です。
　このあたりはチェックイン時に詳細な地図と一緒に教えていただけると思います。


　ハイシーズンはなかなか予約が取れない人気のお宿なので、レビューせずに秘密にしておこうかな……と思ったくらいお気に入りです。
　ですが、群馬の魅力をもっと知ってもらいたくて書いてみました。
　こちらのように地元食材を上手に提供できるお宿が、各地にもっともっと増えればいいなと思います。


　ごちそうさまでした。