懐かしく親しみやすいのに香り高いこだわりビーフカレーが味わえる居酒屋さん : キッチンあや

昭和通りの中洲から蔵本の間から北側に入ると奈良屋町という界隈があります。
このあたりの裏道でひっそりと、しかし多数の常連さんに愛されているお店がこちらです。
入口は細道になっており、細道の入口でカレーののぼりを立てて、カレー専門店をアピールしています。

カレー専門店といいますが、外観はまさに昼は定食屋、夜は居酒屋という経営方針のこのお店にぴったりの
大変懐かしさを感じるたたずまいです。
実際、僕の訪問は夜でしたが、凄く大衆的な居酒屋の雰囲気であり、多くの常連さんたちが
盛り上がっていました。凄く風情のある光景です。
こんな雰囲気のお店で、こんなこだわりのカレーが味わえるなんて、一体誰が予想していたことでしょうか。

入口近くのテーブル席に通された僕は、カツカレーとビール、そして焼きなすを注文しました。
居酒屋料理のシメにカレーを食べる人が多いと聞き、せっかくなので、居酒屋料理も食べたいと話したところ、
カレーに合うのは焼きなすだろう、ということでした。

実際、焼きなすは、かつおぶしも乗っており、程よく焼けており、町の居酒屋さんの懐かしくて食べやすいものでした。
ビールにも合います。
次に来た、カレーのセットの野菜サラダも、大変良かったですね。レタスに、トマトの他にオレンジも乗っている。
地味にひとつひとつ、料理の細部にこだわっているのが感じます。

しかし、僕は、カレーに対する一見さりげない、しかし並々ならぬこだわりを、しかと受け止めました。

出て来たカツカレーは、香りが凄くいいんです。香り系スパイスが凄い。
口に入れてみると、クローブやクミンの匂いと味がします。他にも、ナツメグとかシナモンでしょうか（多分）、
とにかく、普通の定食屋のビーフカレーではあまり出てこないような、香り系のスパイスが存在感があるのに驚きました。

基本は、至って万人受けする、大変おいしいビーフカレーです。牛肉が凄く溶け込んでいるうえ、
野菜の甘さ、特ににんじんの甘みが濃く出ている。にんじんも牛細切れも形を残している部分があり、
これがまた旨みをかもし出している。
このため、普通のカレーが好きな人や、給食のカレーが好きな小中学生なんかでも、楽しむことが出来ますね。
実際、辛さは凄く穏やかです。
しかし、前述のスパイス由来の香りが、このカレーをとんでもなく上質に仕上げています。
辛くないけれど、香りが凄いんです。

本当に、丁寧に仕事をしているのが分かりますね。
きっと、居酒屋（昼は定食屋）という関係上、近所のカレー好きや、飲みのシメの人を魅了しているカレーなんだと思います。
しかし、同時に、スパイス好きも目を見張るものがあると思います。
このため、普通のビーフカレーが好きな人にも、スパイスにこだわりがある人にも、両方に愛されるカレーになっているんです。
まさか、こんなお店でそれが出るとは思っていないため、ノーマークのカレー通が多いでしょう、僕もそうでした、
本当に、凄いカレーを発掘してしまった気分ですよ。

よく、スパイスの香りこだわり系でホールスパイス（形のままのスパイス）を入れることで香りを高めるお店が多いですが、
こちらは、ホールは一切使っていない。ホールを使うと、通好みになってしまうので、あえてやらない。
結果、あくまでビーフカレーの旨みが第一なのに、香りはスパイスを駆使したインドカレーにも並ぶ一流のものになっています。
最近の福岡のカレーのトレンドは、ホールスパイスをやたら使うお店が多い気がしますが、
そういうのが好きな方も、一度このお店に視察に入り、全く違う方向性で、頂点に近づいたこのカレーを味わってみてはいかがでしょうか。
「素朴で王道なのに凄い」という新しいベクトルを知ることが出来ますよ。

ごちそうさまでした。

凄い穴場を発見してしまいました。あまりに感動して、ご主人と女将さんに、ありったけの賛辞を述べましたよ、ええ。
どうやらこのお店は、奈良屋町で最初にカレーを出したお店なんだそうです。
その後、近くのお店がそれに追従してカレーを出すようになったけれど、生き残っているのは少ない、と。
確かに、この近隣ではきいちゃんのカレーの店くらいでしょうか。「きいちゃんの～」の方は、
家庭的なカレーと、小鉢をたくさん付けて８００円という安さがうりでしたが、
こちらの「キッチンあや」は、カレー単体の味とこだわりで、勝負できる凄さがあります。

定食屋のカレーというと、他の料理のついでに、とりあえず出しているお店が少なくない中、
こちらのお店は、「カレー専門店」を謳う、居酒屋兼定食屋であり、同時にカレー専門店なのです。

ぜひ、居酒屋好きの方も、こちらに訪問して、飲みのシメに、ぜひカレーを味わってください。