貴匠膳 : 貴匠庵

お蕎麦が売り切れるのが早くて前を通るたびに早仕舞いをしているし、日曜も休み。
いったいいつ行けばいいんだと思いながら渋々と予約した。

当日の入店後、A4サイズの注意書きを渡されて、席に着く前に読まなければいけない。
大声禁止、7歳以下の子供入店禁止。静かに食べろ。
注文が多いな。

どんなおっかない場所だろうとびくびくしながら席につくも、対応してくれた店員さんはむしろ朗らかで優しい。
うーーーーん……。
メニューはその場で決めている。
貴匠膳と、クリスマスデザートプレートをお願いした。
貴匠膳にも蕎麦甘がついてくるんだけれど、蕎麦甘は同伴者とシェアしている。
また別にだし巻き卵の小も頼んでる。
小は3切れらしいが、お値段変わるけれど4切れにしましょうかと店員さんに言っていただきお願いした。
優しい。

さて、最初に届いたのが蕎麦豆腐。
まって、その前に、テーブルに敷いてある四角いテーブルクロス、木製で、曲がってるのかなんなのか、くるくる回っちゃうしずれるし、めっちゃ怖いんだけれど。
まあいいや。
で、蕎麦豆腐。
かなり固めの高野豆腐みたいな造りになってるんだけれど、つるんとしてて、濃厚ですごくおいしい。
おいしい。うん、おいしい。
匙もいただいたんだけれど、結局うまく取れなくて、お箸でいただいてる。
お箸で持ちあげられるのよね。

さて、湯葉のお刺身。
湯葉のお刺身ってはじめましてだ。
醤油とわさびでいただくんだけれど、これもすごくおいしい。
ぷるぷるとしていて、つるんと入っていく。最高かな。
お皿に残った豆乳もいただいたんだけれど、大豆のおいしさそのもので、雑味がなく、いかに素材のおいしさを引き出そうと苦心したのかがわかる。
めっちゃおいしい。

さて、だし巻き卵。
お砂糖が入っているのか、けっこう甘さが強めでびっくりした。
ふわふわで、この厚さがたまらないし、大根おろしもおいしい。

お待ちかねの天ぷらの盛り合わせとせいろ蕎麦。
お蕎麦、太さが均一ですごくきれいね。
ひとくち。

あ、おいしい。
めんつゆはかなり甘めのもので、でもお出汁がよく効いてるから嫌な甘さじゃない。
むしろ、お蕎麦がかなりさっぱりとしたのど越しだから、めんつゆの後を引くようなお味と相性がいい。
蕎麦を打つのもすごく上手なんだろうなぁ。麵がすごく長いのよね。
薬味のおネギも甘くておいしいし、すごく好き。

天ぷらは、海老の他に茄子、蓮根、紫大根、えのき、舞茸、あと、緑はピーマンだったかな？
それと、湯葉。
すごい湯葉の天ぷらって初めまして。
ふわふわつるつるでおいしいんだね。
特に気に入ったのが紫大根。
あらかじめ炊いてあるのか、ほくほくで本当においしい。永遠と食べていたい。
天ぷらも、天つゆとお塩だけじゃなくて、レモンも塩入り七味もついてきて、何をどうつけて食べようか悩むのが楽しい。
おいしいわぁ……。

同伴者が鴨せいろを頼んでいて、あまりにもおいしいというので、鴨せいろのめんつゆを少しだけ飲ませてもらったんだけれど、これがもう、ありえないくらいおいしすぎて気絶するかと思った。
えっ。こんなにおいしい鴨のめんつゆをいただくなんて初めてなんだけれど！！！！
鴨せいろや鴨南蛮って昔別の店で食べたときに、鴨の臭みがひどくて、それからずっと苦手だったんだけれど、こちらの鴨せいろは苦みゼロ。
なんなら豚汁みたいなお味だった。
えええええ、めっちゃおいしいいいいいいい。信じられない！！！！！！！

最後にデザート。
クリスマスプレートは、バニラアイスにシフォンケーキ、抹茶のムース。
シフォンケーキがふわっふわですごくおいしいのよね。
ふわふわ。ふへへ、ふわふわ。
一生食べていられる。
抹茶のムースが上にかかっていた黒蜜といい、かなり甘さが強いのよね。
玉子焼きも甘かったし、もしや作ってる人は甘党なのかな……？

蕎麦甘は同行者の残りをいただいた。
蕎麦の寒天？　がすごくおいしいんだけれど、ほんのりと黒蜜が入ってるのか優しい甘さがあるのよね。
すごくおいしい。

接客も始終穏やかですごくよかったし、お料理もおいしかった。
ただ、残念なことは、大声禁止のあの注意書き。
同行者は高齢の祖父母で、特に祖父は年々耳が遠くなり、どうしも声が大きくなる傾向がある。
そのたびに祖父を祖母がたしなめて、二人ともしょんぼりしていた様子にとても心が痛んだ。

ならば来なければいいと言われるかもしれないが、生い先が長いとは言えない二人においしい物を食べてほしいというのはわがままなのだろうか。
「子供叱るな来た道だもの、年寄り笑うな行く道だもの」という。
そう思うのは、客側のエゴだろうか。