食べろメロス : 金木観光物産館 マディニー

第一話

メロスは空腹だった。必ず、あの邪ん暴なデカ盛りを除かねばならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。けれども食事に対しては、人一倍に敏感であった・・・。


夜行バスで早朝弘前に到着し、向かった先は五所川原市金木町。太宰治の生誕地として知られ、現在は観光地となっているこの町に、何と大食いチャレンジをやっているお店があると聞きつけて九州からはるばるやってきたのでありました。


お店は「金木観光物産館　マディニー」の中にあるレストラン「太宰らうめんと郷土料理はな」。その名前の通り、太宰治にゆかりのある料理や、地元青森の郷土料理がいただけるお店。チャレンジメニューは全部で三種類。他に回りたいところもあるから一つクリアできればいいやと遠征前は思ってましたが、先日関東から福岡まではるばる来られた方の連日の食べっぷりを見せられては、私も厳しい道を選ばずにはいられませんでした。食事が注文できるのは１１時から１６時まで。青森に滞在するのは三日間。つまり昼食時に１日１回ずつチャレンジすればよい計算。そう言えばメロスが王様に与えられた期間も三日間、まさに「走れメロス」ならぬ、「食べろメロス」であります(笑)


チャレンジメニュー


№１　大鍋太宰らうめん（１５００円）

№２　じゃんぼカツ丼（２０００円）

№３　Bigディッシュカツカレー（２０００円）


いずれも３０分以内完食で無料＋メニューと同額の食事券（有効期限１ヶ月）


１１時にお店に到着。まずは大鍋太宰らうめんに挑みます。チャレンジすることを告げると、お店のおばちゃんが急に真剣な眼差しになって、「心とお腹の準備はよろしいでしょうか？」と聞いてきました。初っ端からこんな感じで終始とてもノリのいいおばちゃんでした(笑)


太宰らうめんはこの店の看板メニュー。太宰治が若竹汁が好物だったことから、青森のご当地ラーメンである煮干し中華に根曲がり竹とワカメをたっぷり加えたものです。チャレンジメニューは麺４玉半、スープ２０００ｃｃ。汁物とはいえ合計３ｋｇ以上は確実。成功するにしてもあまり時間に余裕はなさそうです。


名前の通り巨大な土鍋に入って登場。やっぱり麺類のデカ盛りには土鍋が合いますね(笑)　写真を撮影次第すぐにストップウォッチが押されてバトル開始です。


まずは熱さをあまり気にせずに食べられて咀嚼に時間がかかるタケノコを先に食べてしまうことにします。思ったよりは柔らかくて食べやすかったです。脂身のないタイプのチャーシューも何枚か入っています。右手で具を食べている合間に、左手にはレンゲを持ってその上で麺を冷まします。漫画でやっている「右と左で交互に食べる」真似は私には無理です(笑)


具をある程度食べたところで麺に取りかかります。某王将で麺３玉のジャンボラーメン１５分以内完食に挑んだ時はお腹の方は全く問題になりませんでしたが、４玉半ともなると急にお腹に詰めるのはキツいですね。４玉くらい食べたところで一瞬止まりそうになったので不安になりましたが、しばらくすると落ち着いたので何とか時間内には完食できそうです。


麺もほぼ食べ終え残りはスープ。まだ土鍋が熱かったのでひたすらレンゲで口に運びます。ここまでくるといけそうとは思ってもやっぱり辛いものがあります。残り少しになったところで土鍋を持ち上げてラストスパートです。


２５分５０秒で完食。何とか第一関門突破です。なお、食事券をチャレンジメニューの代金に充てることはできないので失敗した場合は現金払い。負けられない戦いが続きます。ご馳走さまでした。

第二話

青森遠征二日目。本日も１１時に「マディニー」に移動して今度は邪ん暴…ではなくじゃんぼカツ丼に挑む予定でしたが、電車内でうっかり数分間寝ている間に乗り換えし損ねて次の電車を待つことに。結局２時間も遅れて１３時に到着。ちなみに、「俺らこんな村いやだ～」と歌っている方の出身地も太宰治と同じです。次の電車が来る時刻を見て頭の中でこの曲が流れたのは言うまでもありません(笑)…そういやメロスもうっかり寝過ごしそうになってましたね。今日はまだ大丈夫ですが、最終日に寝過ごすと帰りの飛行機に間に合わなくなるので本当にアウトです(笑)


電車を待っている間にお店に予約を入れていたので予約席に通されます。奥のテーブルには団体客の料理が並んでいます。しばらくすると観光客のおばちゃんの集団が入ってきました。遅れてしまったペナルティとして、これから多くの人に見世物にされるようです(笑)


じゃんぼカツ丼登場！　丼がまさに、福岡の「こまどりうどん」や、出雲「さの屋」のジャンボ丼の丼です。いかにもカツ丼が盛られていそうな普通サイズの丼には味噌汁が入っています(笑)　やっぱり丼物のデカ盛りには巨大な丼が合いますね…と言うか丼に盛らないと丼じゃないですね、世の中には丼に盛られていないのに、丼と名のついているデカ盛りもあるようですが(笑)　ご飯１５００ｇ、カツ３枚、味噌汁５００ｃｃと沢庵つき。量的には「中華のんき」のビッグスペシャルかつ丼に近いので３０分以内ならいけそうですが、今回もまたキツい勝負になりそうです。


当初は後半残ると食べにくいカツを最初に食べてしまう方針でしたが、卵とダシがご飯の量に比べるとだいぶ少ないのでバランスよく食べていく方針に変更。カツは肉厚ですが柔らかくてなかなか美味しい。チャレンジメニューでこのお肉は有難いですね。


１０分ほどで半分以上食べましたが、量の多さだけでなく、巨大な丼に入っているので後半は箸だと食べにくいこともありペースダウン。右手でカツ丼を食べながら、左手で味噌汁の丼を持ってテンポよく流していきたいところですが、丼がデカ過ぎてうまく交互に食べられません。しかしながら時間は刻々と過ぎ去っていきます。メロスのように、荒れ狂う丼の中のご飯をかきこんでただ食べるばかりです。


ご飯が残り少しになったところで、丼の中に残ったご飯を味噌汁に投入してラストスパート。完食タイムは２４分５５秒。前日に引き続きチャレンジ成功です。お客のおば様方から賞賛の声をいただきます。昨日のお店のおばちゃんからは、私が遠方からのお客ということで食事券の代わりにお店オリジナルのラスク「めぇラスク」をいただきました（めぇとは津軽弁で「美味い」の意味）。


青森に来たからにはりんごを使ったデザートもいただきたいということで、りんごとバニラのミックスソフトクリーム（３００円）も注文。リンゴシャーベットがすっきりとした味わいで、かつ丼と味噌汁約３ｋｇを胃袋に収めた後でも美味しくいただけます。ご馳走さまでした。


いよいよ次はカツカレーに挑戦…と行きたいところですが、お店のおばちゃん曰く、成功で無料になるのは１回までで、今回は特別とのこと。しかしここまで来たからには最後まで走らねばならないでしょう。成功失敗にかかわらず代金の２０００円を支払うということで作っていただけることになりました。


しばらくゆっくりした後で金木駅まで移動。「走れメロス」と書かれた津軽鉄道の電車に揺られながら店を後にします。明日も食べろメロス！

最終話

青森遠征三日目。いよいよ最後の相手、暴君ディオニス…ではなくBigディッシュカツカレーに挑みます。


１１時に予約を入れますが、前日のように途中で乗り過ごすと帰りが間に合わなくなるので１時間前に到着。館内を見学しつつ時間を潰します。お店のおばちゃんやお姉さんともすっかり顔なじみになりました(笑)


もう準備できますよと言われたので１１時少し前に入店。ついに最後の敵と対面します。


まずはサラダとスープが出てきます。何かサラダも大きいですよ、後で食べログを見返してみたところ、先月チャレンジに成功された方のサラダより明らかに量が増えてました。先月の成功者は残り３０秒でクリア。この差が響いてこなければいいのですが。


そしてBigディッシュカツカレーの登場。５０ｃｍはある銀皿で登場。先日の「ビッグハラペコカレー」の銀皿よりもデカそうです。やっぱりカレーのデカ盛りには巨大な銀皿が合いますね(笑)カツカレーはご飯１６００ｇ、カツ３枚にスープ５００ｃｃとサラダつき。「カレーは飲み物」とはいえ、前日のカツ丼より明確に量が多い。「元気が出れば何でもできる」のご飯２ｋｇのカレーキング盛り＋ジャンボチキンカツも３０分以内に完食できましたが、今回は決して万全とは言えない状態。カツ丼の時は余った最後の５分でどこまで戦えるかで勝敗が決まりそうです。


今回はルーもまずまず量があるので、先にカツを食べてしまう方針で進めます。カツ丼と同様肉厚で柔らかいカツです。ルーも辛さはなく大食いしやすいカレーです。


しかし案の定前日からのダメージもあり、カツ丼の時に比べるとご飯が減るペースが遅い。途中で諦めそうになりますが、メロスが水を一掬い飲んで力を取り戻したように、スープを一飲みして口の中をリセットします。「ビッグハラペコカレー」の時も後半余裕が無くなってから咀嚼が増えてタイムロスをしました。「カレーは飲み物」。そう言い聞かせてご飯を少量ずつ飲み込むようにお腹に収めていきます。


ようやくカレーがほぼ無くなりサラダとスープに手をつけます。残された時間はもう後わずかなのは間違いないですが、ここまで来ればもう間に合う間に合わないは関係ありません。ただ食べるのみです。


言うにや及ぶ。まだタイマーは鳴らぬ。最後の死力を尽して、メロスは食った。メロスの頭は、からっぽだ。何一つ考えていない。ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられて食った…間に合った。


タイムは２９分。まさにギリギリの勝負でした。誰に望まれたわけでもありませんが、目的は叶いました。私は自分の心に打ち勝ちました。三日間お世話になったお店の皆様、声援を送って下さったお客の皆様。本当にありがとうございました。今までのデカ盛りチャレンジの中でも最高の思い出になりました。ご馳走様です！