辛くて美味しい『ガパオ・ルア・ミット』 : タイキッチン チャバ

この店舗は私の娘夫婦が住んでいるアパートから徒歩圏にあり、1度は行ってみたいと思っていたのです。例によって敬老パスを利用し、市バスを乗り継いで最寄りのバス停で下車しました。徒歩１～３分程度のバス停もありますが、時間帯によっていい感じで乗り継げる組み合わせがなかったことと、多少は歩きたいので「十一番町」で下車し12分ほど歩きました。このバス停からはほぼ真北に直進すればよく地図がなくても迷いません。また道の途中には人気店の『人生餃子』と『紫陽花』がありますので、どんな感じなのかチェックしがてらまったりと歩きました。

店舗は思っていたよりもこじんまりとしており、店内は奥に長い構造です。入った瞬間に店内には大音響が響いていました。私が入った時点では店主1人しか居らず、自分のスマホとアンプ・スピーカーを繋げて好きな音楽を爆音で聞いていたようです。私が入ってもすぐには音量を下げませんでしたが、私が両耳に人差し指を入れる格好をしたところ、半分程度まで下げてくれました。それでも一般的な食事スペースで流れる音楽よりも大きめでした。まあ“郷に入れば郷に従え”ということで、ギリギリ我慢できそうだったので、それ以上はリクエストしませんでした。流れているのはおそらくタイのポップスのようで、意外にも”洋楽＋歌謡曲”みたいなテイストでした。

こんな感じ（この曲ではなかったとは思いますが）『TATA YOUNG - NGOR NGOO ง.งู』▶https://youtu.be/-oYI-oItvH4?si=-tqXLSgEuAHnoSm1

やっと会話が出来る状態になったので、店主に「これが食べたいのですが」と、GoogleMapsであらかじめ検索して画面表示させていた料理の写真を見せると、慣れた手つきでメニューをめくって該当ページを開くと「ガパオルアミットです」と即答してくれました。「じゃあこれと、それからシンハービールも」と注文しました。やはりその場でアレコレ考えるより、事前に準備をしてこのようにビジュアルで伝えたほうが間違いない気がしました。特にネイティブなスタッフに対しては。もちろんこの店のおそらく店主だと思われる人物もタイの人だと思います。

ビールが先に配膳され（例によってグラスは持ってこない）栓が抜かれたビールをダイレクトに飲みながら待つことにしました。カウンター内の厨房からは何かを炒める音がしっかりと聞こえてきます。目では見えませんでしたが、調理中の煙が少し流れてきたのかむせそうになりました。調理にそれなりの量の唐辛子（に類するもの）を使っているようでした。「辛そうだな、期待できるぞ」と思いながら、メニューの写真を撮ったりして出来上がりを待ちました。

思っていたよりも早く、10分弱で『ガパオルアミット』が配膳されました。先客なしの状態だったのでこれが純粋な調理時間でしょうけど、この時はワンオペでありもし客が多数いたらもう少しかかると思われます。

大きめの皿に盛られた『ガパオルアミット』は、なかなかボリューミーで一瞬「食べきれるかな？」と思いましたが、結果的には美味しく完食できました。スプーンとフォークが添えられていたのですが、カレーライスのようにライスと細かく刻まれて炒められた具（海老、鶏肉、牛肉、バジル）を一緒にスプーンですくって食べるのが基本だと思われます。

途中まではその食べ方をしていましたが、付け合わせだと思われるレタスをひと口食べた時にドレッシングの類がかかっていなかったので、ちょっと考えた末に焼肉のようにレタスでくるんで食べたらどうかと思いました。この場合は手で食べる必要があり、指先がかなり脂っぽくなりましたが、美味しく食べられました。テーブル上にはティッシュボックスが置いてあったので、それで手指を拭きましたが「この食べ方ではビールが飲めないぞ」と思い、そのあとはレタスを適当にちぎってそこにライスと具を一緒に乗せて、スプーンですくって食べました(結果的にレタスチャーハン状態)。少々面倒ですがゆっくり美味しく食べることが出来て良かったのかな、と思いました。

ジャスミンライスの上に乗っている目玉焼きは一見”よく焼き”風だったのもあって、最初は無視していたのですが試しにフォークで半分に切ってみると中は半熟状態だったのです。これを一緒に食べない手はないと思い、ライス・具・目玉焼きを混ぜても食べました。一般的なガパオライスと同様の品数ですがなかなか充実して食事ができたと思います。もちろんそれなりに辛かったことを付け加えておきます。

途中でビールが無くなったのでメニューを見て、ネタにもなると思い『KAMIKAZE』という名前が付いた（タイで人気だという）ワインクーラーを頼んだのですが、店主が「今はロゼしかないです」と言うので「じゃあそれを」と返事をしました。ここまで来たら相手に合わせるしかないでしょう。ただ、栓の抜き方が下手なのか予想外に冷えてなかったのか分かりませんが、店主が栓を抜いた時に噴き出てしまい、テーブル上にそれなりの量がこぼれてしまったのです。私が特にそのことに言及しなかったせいか、店主はこぼれた液体を拭くこともせず、ワイングラスを持って来てそこに注いだのです。そして「とても甘いですよ」と言うのです。今更そんなこと言われてもねぇ、そのセリフは注文した時に言うべきだと思いました。このあたりのアバウトさは日本人の店とは違うんでしょうね。これも”郷に入れば郷に従え”でしょうか。

でも怪我の功名と言うか、ガパオの累積してきた辛さがそのロゼでリセット出来て良かったのかも知れません。お水でも良さそうでしたが（辛いので水も大ジョッキに入っていたのかも）。

余談ですが、私が食べている最中に車で来た子連れの若い夫婦が入って来たのですが、ベビーカーも引いてきてそこには０歳児と思われる小さな赤ちゃんが眠っていました。それを見た店主は先ほどまで大きな音で流していた音楽のボリュームを下げて、通常の店で流れる音量にしたのです。そのあたりの対応はなかなかのものだと思いました。その夫婦は「食べきれるのかな？」と思うほど何種類も料理を頼んでいたのですが、さすがにその時は店主も「食べきれますか？」と訊いたのです。夫婦は「余った分は持って帰るので」と返事をすると、店主は「分かりました」ということで調理に向かいました。このあたりも臨機応変さがうかがえます。アバウトさの良い面とも言えます。

完食をした私は「チェックお願いします」ということで、現金で3,080円を支払い「ごちそうさま」と言ってドアを開け外に出ました。3月としてはかなり温かい、というか暑いくらいの日でした。上着を1枚脱いで帰途に就きました。

ごちそうさまでした。