細部に渡るこだわりを観た : アビー ロード

当店の情報は、何気無くYouTubeに入り込んで来ていた動画からであり、観ていて興味が湧いた喫茶店。
ビートルズ好きな店主の一杯ずつのドリップコーヒーと丁寧に仕込まれたカレーがお勧めとのこと。
BGMは全てビートルズ。

◉スペシャルカレー
ミニサラダ、ピクルス、14時まではコーヒー又は紅茶が付いてくるセット。

初めにミニサラダとピクルスの皿が提供され、次にグレイビーボート(ソースポット)に入れられたカレー、大き目な皿に盛られたライスがサーブされた。

カレーだが、英国式インドカレーとあったので、デミグラス系かと思いきや、然に非ず。
入店した瞬間から爽やかなスパイスの芳香が漂って来ていたので、もう一品のチキンカレー用の仕込みの影響かとかと思いきや、これも然に非ず。
牛肉は、よく煮込まれた個体を解したものがグレイビー(カレーソース)の上に鎮座した形。
またグレイビーでは、野菜や果物等具材は全て煮溶けており、濃厚かつフルーティーな旨味。

カレーと牛肉を良く合わせてから、ライスに少量づつ掛けて頂いてみる。
ソースの粘度はサラサラ系。
色は漆黒系で、艶やかで照りのある色合い。
戴いてみたところ、数種のスパイスが軽やかだが個性豊かに利いており、濃厚なグレイビーとの調和がとでも優れている感じ。
皐月だというのにこの日30度近くまで跳ね上がった気温で暑い日に、カルダモンの爽やかな青い香りは何とも心を穏やかにしてくれる。
強過ぎる旨味は食べていくうちにクドくなって辟易してくるのだが、こちらのカレーは次から次へと口に運びたくなる衝動に駆られる。
濃厚だが軽やかという表現がピッタリ。
ホールのテンパリングも行き過ぎていないので、下手なスパイスの苦さやクドさも無い実にバランスの良い配合。
カイエン等の辛さはほぼ無く、フルーツチャツネからと思われる甘さと品質の良いのがうかがえるスパイス陣を丁寧に調合したテイスト。
超力的にはもう少し甘さ控え目で辛味を出してくれていれば更に好みの味となったであろうが、十分及第点である。

カレーで一番大事なのはライス！
ここでライスの出来が悪かったり、不味い品質だったり、カレーとマッチしていない品種だと全てが台無しだ。
カレーを味わう前に一口試してみる。
炊き加減は、水分含有量はやや少な目のやや硬の仕上がりではあるが、行き過ぎた硬さでは無かったのは良かった。
グレイビーがややシャバ目なので、これくらいの水分の炊き上がりで正解だ。
それぞれ単体でも十分美味い部類の品々であったが、マリアージュも上々。

付け合わせのピクルスは胡瓜と小玉葱。
一見辣韮(らっきょう)に観えるが、実は小さな玉葱であることを店員より告げられる。
言われなければ辣韮のつもりで口に運んでいただろう。
またこの小玉葱のピクルスがかなり独創的で、結構なエッジが利いていて目を見張った！
辣韮漬の様な甘さは皆無で只管酸味の強いピクルス。
しかし、このテイストがやや甘なカレーの口直しには最適で、少し甘味付けしてある胡瓜のピクルスとは違った様相を呈していた。
また、ミニサラダのドレッシングはフレンチだったが、見た目は市販のそれかと思いきや、これも酸がかなり利いていた。
酸の自称スペシャリストを自負して止まない超力だが、この方向性には大変好意的に感じた。
口直しやサッパリとさせる役割分担として十二分に機能を発揮していたからだ。
ここまでの酸は他店では感じたことのない程素晴らしい出来映えだ。

セットのコーヒーは、おまけ程度かな。
かなりアメリカンのあっさり浅煎り。
でも、豆自体からの風味は悪く無いな。
また、コーヒーフレッシュは本物の生乳で作られたクリームだったのは驚き。
結構コーヒーにはこだわっているが、クリームは植物由来の業務用が多いから。
しかも、わざわざ冷やしてあって、"いと怪しげなる奶油（くれむ） "だったり手が込んだことをしてくる店もあるが、こちらは真っ当なものであって嬉しくなった。
コーヒーカップとソーサーはナルミで、白を基調としてあっさりとしたデザインではあるが華やかで良かった。

◎ガトーショコラ
しっとりとした味わい深い濃厚なチョコレートの手作りクラシックショコラとの案内で、コーヒーと合わせてみたくなった。

フォークで入刀したところ、ムッチリとしたボディでしっかりと身の詰まりの良い体裁。
見た目と体裁から結構なコッテリさかと思いきや、オレンジピールの様な柑橘系の爽やかなテイストが軽やかに漂い、商品としての完成度を上手く統制している。
(結構重たいガトーショコラ有るからねー（汗）)
値段も適正価格でついでに頼みやすい。

◎リッチボディブレンド(おかわり)
一番深煎りのものをとリクエストしたところ、メニュー外だがこちらを提案していただいた。
他のものは浅煎りから中程度なのだとか。

サーブされたそれは、香りは穏やか。
しかし先立って提供されたブレンドより良い表情と心掴む薫りは漂って来た。
味わってみると、豆の含有量は少な目ではあるが、しっかりと深煎りで、苦味と渋味が良いバランスで、後追いで軽やかな酸味が喉奥に届いてくる。
これは深煎り初心者や、苦手な人でも試してみる価値有りのコーヒーだ。
終盤フレッシュを足してみて愉しんでみたが、フレッシュの生乳由来の豊かな味わいが香りを引き立ててくれる。

そして、ガトーショコラと合わせてみたところ…
グッと来た！
ショコラの風味をリッチボディの深い香りが膨よかに広げていく。これは圧倒的にこちらの深煎りとバッチリ合う。
定番ブレンドではなかったのだが、セット価格にしてくれて大変良心的な対応であった。

カレーと付け合わせに関しては独創的な面から4.0は硬いのだが、コーヒーは当方的には弱くてセットのブレンド3.0、別注のリッチブレンドで3.3あたりかな。
ただ、方向性は好みに合致しているので、名古屋に来た際にはまた来てみて今度はチキンカレーを試してみたいと思わせてくれた。