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今日は土曜日だ。午前中のインプラント手術は下顎に3本のインプラントを埋めるという内容だったが、顎の大きさが非常に小さい女性で、ドリルを正確な位置に固定することが難しかった。なんとか、上手に手術を終えることが出来、栄まで夕食の材料を買いに出かけた。買い物では魚と肉を買う予定なので、食材が痛まない様に先に昼食を済ませることにした。昨晩は桑名まで蛤を食べに行って、楽しい友人達との会話に花が咲き、帰宅したのは深夜で、朝御飯も軽くしたのに、どうも腹が張っている。おまけに、今晩は友人夫婦を迎えての食事ということで、沢山食べることになる。という訳で、昼は軽く済ませようと栄町ビルの中の古〜い、サンドイッチ屋に来た。
私は出身高校が市役所にある明和高校だったので、高校の帰りはよく栄を彷徨いていた。という訳で、栄は良く知っているつもりだが、どんどん時間は過ぎていて、丸栄と丸栄スカイルを繋いでいた、空中連絡通路は無くなり、今日見たら明治屋まで閉店していた。どうも取り壊すらしい。昔はその横に日興證券ビルがあり、地下の白亜館というフレンチには何度か行ったような気がする。この店が入っている栄町ビルは北側が名古屋の誇る老舗の国際ホテルがあり、立派なビルで、その名残は大理石張りの共同トイレを見ると現在入店しているテナントレベルから考えると信じられない程の豪華さだ。
さて、この店はその老舗ビルの地下にある、まさに老舗喫茶店だ。ミックスサンドとカツサンドとアイスコーヒーを注文する。昔はアイスコーヒーのことを「レーコー(冷たい珈琲)」と呼んでいたが、まさにレーコーという言葉が似合う店だ。アイスコーヒーは市販品でなんていうことは無いが、小さなミルクポットに入ったミルクと珈琲に付いて来る豆菓子かアラレが古き良き名古屋を感じさせる。カツサンドも薄い肉とウスターソースに塗れたみじん切りキャベツ、そしてトーストしてから耳を切りそろえた感じがやはりレトロだ。
54才の私は知らない内に、年配の部類に入る歳になってしまった。暗いところでは細かい文字は読めないし、朝は4時過ぎに眼が醒め、夜更かしすると眠くてしかたない。まさに、年寄りだ。この店の空間の佇まいは、むか〜し、むか〜し、高校の授業を午前中で早退し、ボーと喫茶店で珈琲を飲みながら時間を潰していた、ふる〜い昔の記憶を呼び起こしてくれる。あの頃は、現実は厳しかった筈だったが、将来は明るいと何の根拠も無く信じていた自分が居た。今は、ワクワクするような毎日は無いが、神様は一生懸命私を守って、私に家族と生活と幸せを与えてくれたんだな〜と漠然と思う。この店で、40年前の自分に会うことができるのなら、「まあ、いろいろあるけどなんとかなる」と教えてあげたいものだ。