【取材馬鹿一代日記】よつ葉＠千歳船橋編 : よつ葉

先日水曜、城山通りから世田谷通りへの抜け道である千歳船橋の商店街を
バイクで走行中に住宅街といってもいいその最果てで偶然発見したお店。
あいにくその日は定休日で入店しようにもどうにもならず。
リサーチがてら店の周りをマジマジ眺めていると向かいで八百屋を営むおばさんが
「こことっても美味しいのよ」と勧めてきた。
すかさず営業時間などを聞き出し、その日は撤収。

後々調べると店主の梶原洋樹氏はTongking＠新宿御苑出身で
何度も世界チャンピオンの座に輝いたことがあるキックボクサー梶原龍児の双子の実兄だとか。
俄然興味が湧いて本日ランチ訪問となりました。

コンセプトは「亜細亜創作屋台料理とおふくろの味」。
白と赤を基調とした店内はスタイリッシュなアジアン屋台風でかっこいい。
スタッフは想像したよりずっとスリムなマスター（貰った名詞にマスターと書いてあるので）と
パートナーの女性の計二人体制。
麺は釜を使ってたっぷりの湯で泳がせるように茹でて、平笊で湯切り。
料金後払い制、二杯目からセルフサービスのお口さっぱり冷た～いジャスミンティー、卓上に調味料の類なし。

取材によると…
九「ネットでTongking出身だと見掛けたけど味は同じでしょうか？
あとTongkingにはどれぐらいの期間いました？」
店「基本同じでランチは麺類を基軸に担々麺以外はとりソバと香麺を交互に替えて出してます。
それから夏ごろには汁なし担々麺の涼麺をやろうかと。
夜は麺類以外は日替わりですね。Tongkingのオーナーが実は友達の父親でして
その縁があって無償で半年間修行しました。その前は飲み屋を始め飲食業界に8年いて
店を開くにあたって何か武器になるものが欲しくて勉強の意味でTongkingで働かせていただきました」
九「ネットでどこも4月9日オープンになってるけど合ってます？」
店「いや、屋号の”ヨツバ”にちなんで4月8日に正式オープンしました。
その前に身内にメールしてプレオープンしてましたけど」
九「弟さんは有名なキックボクサーらしいけどマスターは何か格闘技をやってるんですか？」
店「グローブを付けた空手をやってまして、水曜はコーチのためお休みしてます」
九「何でまたこんな駅から離れた人通りの少ないところに出店したのですか？」
店「経堂と祖師ヶ谷大蔵には味こそ違いますが同じ担々麺が売りの「香氣」があって被るし、
テナントの賃料が安いこともあってここに決めました。正直昼の集客は半ば諦めてます。
実質仕込みに充てて夜の営業に備えてますから。夜はこれでも結講席が埋まるんですよ。
ですから仕込みが間に合わず昼の営業時間が遅れることもしばしばあります。」
九「担々麺の辛さの源、四川風とかのジャンル、スープのベース、製麺所と麺量、化学調味料の有無は？」
店「辛さの源は自家製ラー油と複数の香辛料を配合してます。辛さはTongkingより若干抑えています。
口唇がブルブル膨れ熱くなるような辛みではなく、鼻や喉をス～と刺激する爽快メントール的な辛さです。
ジャンルは四川×エスニックですかね。
スープはもっと重厚にしたいけど近所の方や農大生という客層を考慮して
鶏がらをベースにコク出しの豚挽肉を時間差で加えてあっさり仕上げてますね。
リピートしてくれるお客さんの舌が慣れてきたら徐々に辛味やスープに”らしさ”を出すつもり。
製麺所はTongkingから紹介してもらったところで、麺量は分りませんが既に5回も改良してます。
今日の麺は甘みと黄色味を出してもらいました。
麺を茹でる釜が一個しかないので担々麺も香麺も同じ麺を使ってます。
それから大盛はバランスが崩れて味が変わってしまうのでやる予定はありません。
腹が満たされない人はライスなんかで補ってほしいかなと。
化学調味料は使ってないです。甘みもシナモンによるところが大きいですよ」
九「店の外観と内観はもしかしてマスターが手掛けたとか？」
店「はいそうです。こだわってイチから手掛けました。外の看板も手彫りなんですよ」
以上で取材終了。しかし我ながらすごい質問量だ！これじゃ女性スタッフがどん引きするわけやねw

「超級担々麺」700円
Tongking譲りのシンプルで潔いビジュアルですな。
「かき混ぜてから召し上がって下さい」とマスターから指南された通り、
みじん切りのザーサイが入って食感豊かな肉味噌を沈めよく混ぜていただくと
山椒や各種香辛料の複雑かつスパイシーなス～ス～ハーハーする涼感に富んだ
心地良い痺れが喉を通過するたび清々しさを覚える。
辛味がしっかり効いてるけどもゴホゴホ咽返ることがないから不思議である。
スープはサラリと軽快な飲み口ながら独特の甘みや芝麻醤の香味もあって
当たりの弱さ、物足りなさは感じない。
麺は中加水のストレート太麺。プリプリとコシがありパツンとした歯切れ。
麺単体でも甘みがあって十分うまい。スープとの相性抜群。この担々麺は後を引くしクセになるなあ。
Tongkingで食べた時より丁寧でキメ細やかな仕事が施されており美味だったりして。

Tongkingでは裏メニューの「香麺」800円
マスターの説明によると醤油ダレとスープのベースは担々麺と同じだが、
ラー油と芝麻醤を抜いただけでこうも真逆に違うことを体感してほしいメニューらしい。
またスープや具材の煮玉子･メンマ・チャーシューを五香粉で調味しているらしく
それが香麺のネーミングに由来するとか。
油分少なくさっぱりした中にもジワジワと鶏の旨味が広がり、
本場中国を想起させる舌を包み込む仄かでやさしい風味と甘みが堪らない。
飲んだ〆の一杯にふさわしい胃袋を労わり沁み渡る美味さが魅力的。

Tongkingではトッピングされない白髪ネギが乗った「肉めし」200円
単純に担々麺のこっくりと甘美で痺れる肉味噌を応用してごはんに乗せた一品。
200円でこのボリューム、作り込みはありがたい。

このレベルの味を出せる店が行動範囲内にできたことは素直に嬉しい。
どちらかというと夜の”食べて飲んで”に注力したお店でメニューは限られますが、
食事だけなら昼でも利用できるのでこれからちょくちょくお世話になることでしょう。
アクセス不便な立地ではありますが、味は一級なのでわざわざ訪れる価値ある一軒だと思いますよ。