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梅雨空の鬱陶しさを払拭する、気持ちの良い「蕎麦屋酒」
小雨模様の土曜日、降り立ったのは目黒駅。
目的は久しくご無沙汰しているこちらの蕎麦屋。
駅前の交差点を渡って左へ下る「権之助坂」の北側には、ちまちまとした飲食店が犇めいている。
こちらもその中のビルの地下に、ひっそりと暖簾を掲げ続けている。
開店時刻の11時半直後に入店。
変わらぬ笑顔の女将さんに迎え入れられる。
一人なのでカウンターでも良かったのだが、4人掛けのテーブルに通してくれた。
まずはビール(ヱビス中瓶)で始める。
肴類は昼でも注文可能を確認し、次の2品を頼む。
「蕎麦の芽と長芋のサラダ」:蕎麦の芽は傷みやすく、質の良いものを大量に常備するのは難しい。
こちらではたっぷりの新鮮な蕎麦の芽と長芋の繊切りに、そばつゆベースのドレッシングが掛かり、上に散らされた揚げ蕎麦と刻み海苔が歯触りのアクセントとなっている。
シャキシャキとした食感が楽しく、蕎麦屋の肴では生野菜が少ないため有難い一品。
「和風かにしゅうまい」:注文が入ってから蒸し上げるため、10分ほどで熱々が供された。
こちらのご主人の修業先の今は無き「一番町 吉田」の名物料理で、表面には白菊の花を思わせる焼売の皮の細切りが塗されている。
蟹の身に鱧のすり身を合わせているそうだが、柔らかさから豆腐なども加えていると思われる。
添えられた和辛子と摺り胡麻入りの酢醤油で食べさせるが、上品な味わいが好ましい。
酒の品揃えは少ないが軽く飲むには問題なく、その中から石川の「黒帯」をもらう。
大振りのガラスのぐい飲みで出され、これらで暫しの蕎麦前を楽しむ。
蕎麦はこれも「吉田」のメニューを引き継ぎ、今ではすっかりこちらの看板商品となった「錦そば」を選択。
温かくも出来るが今回は'冷'で注文。
茹で上げた蕎麦に繊細な仕事が施された金平牛蒡や玉子焼きが盛られ、蕎麦の芽・揚げ玉・刻み海苔・山葵が添えられている。
これに徳利のそばつゆを注いで、客が好みの味に調整するスタイル。
蕎麦は十割で、くっきりとした歯触りと喉越しの良さが印象的。
よく混ぜ合わせて啜れば、色々な味や食感が交錯してなかなかの美味さ。
蕎麦湯は釜湯のままの自然体で、食べ終わった丼にたっぷりと注いで飲み干せば充足感が広がる。
期待通りの気持ちの良い「蕎麦屋酒」を堪能。
味もさることながら、相変わらずの女将さんゆかしい接客ぶりも健在。
悪天候の鬱陶しさを払拭するような、清々しい気分で店を後にした。
安定した仕事、女将さんの接客も好感
前回より随分間が空いてしまったが、久々に訪れる。
こちらのは昼に2回ほど訪れたが、夜は初めて。
用事の帰り、ちょっと遠回りして6時過ぎに入店。
まだ早いためか、カウンターにお馴染みさんが一人と言う状況。
どこでもどうぞと言う女将さんの言葉に、一人ながら4人掛けのテーブルに座らせてもらった。
まずは生ビール(ヱビス)。
少し時間が掛かって「お通し」が運ばれたが、手の込んだ内容に納得。
薄衣を纏った旬物の「白海老と蚕豆のバラ揚げの天ぷら」が、出て来た。
軽く塩が振って有り、熱々にレモンを絞ればなかなか美味く、結構ボリュームもあり一品料理としても良いほど。
料理は面白そうなものが品書きに並び、その中から次の2品を注文。
「汲み上げ豆腐」:どんなものが出て来ると思ったが、深さも有る大き目の皿に作り立ての温かい豆腐がそのまま固められ、上には蕎麦つゆベースの餡が掛かり、柔らかく茹でた大豆が散らされている。
部分的に湯葉の食感も感じられ、量もたっぷり。
豆の旨みが感じられ、餡が穏やかな味なので、蓮華ですくってすいすいと喉を通る。
「鴨ロース」:こちらの「鴨ロースせいろ」はかつての「一番町吉田」の手法に倣った独特のスタイルだが、これを転用した一品料理。
鴨の抱き身は真空調理され、これをスライスしたものに、斜め切りの葱の天ぷらが盛合され、たっぷりの練り辛子と、別に蕎麦つゆの小皿が添えられている。
'鴨でねぎを巻いてお召し上がりください'の言葉にこの手法で試したが、柔らかく旨みたっぷりの鴨と葱の食感が一緒に楽しめ、それに和辛子を効かせて乙な味となった。
酒は種類は多くないが、その中から「四季桜」と「黒帯」を頼む。
女将さんが一升瓶からグラスに注いでくれるが、なかなかの満足感。
蕎麦はこれからの時期の冷やかけが面白そうなので、おすすめを聴いてみたら「長芋冷かけそば」とのことで、これを選択。
大き目の鉢に盛られた蕎麦に、長芋の千切りと刻んだ蕎麦の芽がたっぷりと乗り、つゆが回し掛けられている。
長芋のぬめりと蕎麦の芽のシャキシャキとした歯触りが面白く、蕎麦の茹で加減も良好で、なかなかの食べ応え。
冷たいかけつゆは今どき流行の関西風では無く蕎麦つゆベースで、酢を加えて清涼感を出しているが、もう少し酸味は抑えた方が良いかも知れない。
別に空の蕎麦猪口と湯桶が出される。
蕎麦湯は多少手は加わっているようだが自然体に近く、すっきりと〆られた。
安定的な仕事振りを確認。
私の後からもポツリポツリと客が入店。
この並びにはちまちまとした飲食店が多く、入れ替わりも激しいようだが、こちらは地下の目立たない店ながら、常連客は多いと見受ける。
これは愛想の良い女将さんの接客振りに寄るところも、大きいと思われる。
久々に駅まで登る「権之助坂」がやけに急に感じられたが、気分よく店を後に出来た。
(新規に15枚の写真を追加掲載)
≪2011年12月のレビュー≫
目黒駅からだらだら下る「権之助坂」に沿ってちまちまとした雑居ビルが並んでおり、様々な飲食店が入っている。
こちらもうっかり見過ごしてしまいそうな地下店舗で、内部もいたって普通の造りの店。
目黒区内には評判の蕎麦屋が多いが何れも住宅地の中に点在している店ばかりで、こちらはその中では便が良い。
昼は3時までの営業であるため、土曜日の2時少し前に寄ってみた。
この時間でも7割の入りで、私の後からも3組ほどの客が次々と入店してきた。
カウンターの奥に座り、まずこの寒さなので出雲の「豊の秋」をやや熱めの燗にしてもらう。
少し傾がった徳利の形が軽妙だ。
こちらの主人は料理に定評のある「一番町 吉田」の出身であるため、肴にはなかなか面白そうなものが並んでいる。
‘どれでもご用意できますよ’という相変わらず愛想の良い女将さんが言ってくれたが、半端な時間なので軽めに「生麩の田楽」を注文。
ちょっと渋みのある八丁味噌の加減と、もっちりとした生麩の食感が楽しい。
蕎麦は「天せいろ」にしてみた。
こちらでは蕎麦のつゆで一緒に天ぷらも食させるタイプだが、先に出された天ぷらを見て尤もなことと頷ける。
海老2本と小さめの鱚1尾、それに野菜2種の盛り合わせで、衣は薄めだがやや揚げ過ぎともいえる仕上がりである。
最近は体裁を重視して塩や薄めの天つゆを別に添える蕎麦屋が多いが、あら方は従来の蕎麦屋の天ぷらであるため、濃いめの蕎麦つゆで一緒に味わった方がよっぽど美味く、その方がつゆを仲立ちにして蕎麦と天ぷらの相性の良さを楽しむという「天せいろ」本来の趣旨に適う。
こちらでは敢えてきつめの揚げ上がりにしているようで、これが甘さの少ない濃いめの蕎麦つゆと良く合う。
さて肝心の蕎麦は、正直それほど感動するような出来ではなかった。
件のつゆも締まってはいるものの、もう少し出汁の香りや味のまろやかさが欲しい。
蕎麦湯が釜湯のままの自然体であることは好感。
この場所に定着して、常連客は多いようだ。
またいずれ夜にゆっくり訪れて、色々と試してみたいと思う。
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蓼喰人
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店舗情報の編集
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店名 |
手打ちそば小菅(てうちそばこすげ)
|
---|---|
ジャンル | そば |
予約・ お問い合わせ |
03-3491-2132 |
予約可否 |
予約可 夜のみ予約可 |
住所 | |
交通手段 |
JR山手線【目黒駅】徒歩4分 目黒駅から270m |
営業時間 |
営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。 |
予算(口コミ集計) |
¥1,000~¥1,999
¥1,000~¥1,999
|
支払い方法 |
カード可 (JCB、AMEX、Diners) 電子マネー不可 QRコード決済可 (PayPay、d払い、楽天ペイ) |
サービス料・ チャージ |
サービス料なし、アルコール注文時お通し600円 |
席数 |
26席 (カウンター6席、テーブル12席、小上がり8席) |
---|---|
個室 |
無 |
貸切 |
可 |
禁煙・喫煙 |
全席禁煙 |
駐車場 |
無 |
空間・設備 | 落ち着いた空間、カウンター席あり、座敷あり |
ドリンク | 日本酒あり、焼酎あり |
---|
利用シーン |
こんな時によく使われます。 |
---|---|
お子様連れ |
子供可 |
ホームページ | |
オープン日 |
1997年 |
初投稿者 | |
最近の編集者 |
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昼間に出掛ける用事があり、その帰りに向かったのは目黒の権之助坂に面したこちらの蕎麦屋。
何回か訪れているが好ましい印象が残っており、再訪したい気持ちが募っていた一軒である。
13時半近くに、4年ぶりに地下に続く急な階段を降りる。
引き戸に手を掛けると、先客は1組3人と言う状況。
カウンターでも構わなかったが、愛想の良い女将さんは奥のテーブル席を勧めてくれた。
まずはビール(ヱビス中瓶)をもらう。
肴類は簡単なものなら昼でも注文可能で、久々なので「天ぷら」をもらう。
海老2尾に鱚、野菜は茄子・鞘隠元・牛蒡・葱と言ったラインナップ。
海老はまずまずの大きさで鱚は小振りだが味は有り、野菜類はそれぞれの持ち味が感じられ、塩と天つゆで食べ進める。
こちらの天ぷらは昔からカチッとした揚げ方に特徴があり、衣の配合が特別なのか色はそれほど濃く無いが食感は硬めで、この点は好みが分かれると思う。
酒にはこちらの定番の島根の「豊の秋」をもらう。
グラスに注がれて供されるが、口当たりの良さと名前通りの豊潤な旨味が秀逸。
蕎麦には久々なので、こちらならではの「鴨ロースせいろ」を選択。
ご主人は今は無き「一番町吉田」の出身で、独特の鴨せいろはそちらの手法を受け継いでいる。
一般的には鴨肉をそばつゆで煮込んで、その旨味が溶け込んだ汁で蕎麦を食べさせるのが主流だが、こちらでは鴨の抱き身は別に低温調理で柔らかく仕上げ、つゆ自体には鴨の味は一切加えられていないスタイル。
実際に運ばれた角盆には、蒸篭に盛られた蕎麦の向こう側に、鴨ロースの薄切りが6枚と出会い物の葱は天ぷらにされて盛られており、別につゆと薬味が添えられている。
鴨は柔らかくジューシーな仕上がりで旨味たっぷり。
蕎麦はやや粗く挽かれた粉が細目に打たれており、シャキッとした歯触りで香りもある。
つゆは江戸前にしてはやや薄めだがバランスは取れており、足りなければと徳利で添えられているのは親切。
まずは蕎麦だけを啜り、次いで鴨と葱天を蕎麦と共に、さらに山葵を添えた鴨で蕎麦を巻き込むなど色々な手法で楽しむが何れも美味い。
現在ではこのスタイルは唯一無二と思われ、こちらの名物として多くの方に味わっていただきたい。
蕎麦湯は多少揺すれば白濁が強くなるくらいの自然体で、徳利のつゆも猪口に移して割り、全てを飲み干して満足感に浸る。
久々に訪れたが、安定した仕事ぶりで期待通りの蕎麦屋酒が楽しめた。
開店当初から変わらぬ女将さんの穏やかな応対ぶりも好印象で、気持ち良いひと時を過ごせた。
支払いの5千円弱は相当。
先客の3人組はそれぞれ'Pay Pay'を使っていたが、私は当然ながら現金で支払う。
昨今は世を挙げてキャッシュレス決済が持て囃されており、カードや電子マネーを利用することがトレンディとされ、食べログ上でもそれを導入していない店を不親切とか時代遅れとか非難する物言いが散見される。
確かに安全性や利便性においては一理あるが、そういった決済には必ず手数料が発生するわけで、お店にはそれを差し引かれた金額が入金される。
これは利益の目減りに他ならず、大手のチェーン店などなら兎も角、個人営業の小規模店にとっては大きな痛手である。
ポイントが付くなどと目先のことだけ考える輩は多いが、決済業者ばかりに儲けさせる義理は無いであろう。
景気が良いわけでもないのに物価だけがどんどん上がるおかしな今の世で、懸命に頑張っている小さな飲食店のことを考えると、現金で支払ってあげるのが思いやりと言うものである。
今回も支払いの際に上記のような考えを述べると、女将さんからは'わが意を得たり'と大いに感謝された。
私が訪れる飲食店のほとんどが個人営業であり、余程の高額にならない限り現金で支払うよう心掛けており他の方にも推奨している。
異論はあろうが、私はこのスタンスをずっと貫くつもりである。