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奥さんと久しぶりの北野ランチ。で、選んだのはこちらシチリア料理のヴィカンチァさんです。ハンター坂の一本西の通りを北へ、注意していないと見落としそうな普通のビルの一階入り口にある立て看板とお店のロゴ。何度もこの道は通ってても、そういえばなんか看板があったよねレベルのささやかな存在感、しかし料理は全く違っていました。
こちらを訪れたのはシチリア料理に興味があったため。シチリア料理といえば悲しいかなゴッドファーザーのカンノーリぐらいしか思い付かない、何となく南イタリアだから魚介なのかな?というイメージ。シチリア自体のイメージも淡路島みたいなもの?(実際は四国より大きい!)
先入観を持たないために行く前には調べませんでしたが、シチリアの料理は野菜と魚介、この持ち味を生かした料理で、塩、オリーブオイル、ヴィネガーが味の基本。様々な文化が入り交じってきた歴史的背景からイタリア料理に限定しない多くの味わいの要素が組み込まれているとのこと。味わった感想は確かにそんな感じがベース、しかしこれに止まらない繊細でオリジナリティー豊かな料理の数々が頂けました。
ランチはコース(6500円)がひとつだけ、そして夜も10000円のコースのみ、すべてをシェフにお任せするシステムです。
先ずは前菜一品目、可愛らしい小さな容器に3種類の前菜。鰆はルバーブとマリネに。ルバーブの仄かな甘味が味わい深い。卵白のクッキーの上にからすみと大蒜、オリーブオイル、上にはいくら。これが濃厚な味わい、淡白な卵白のクッキーと味わうと旨い。グラスの中に赤ピーマン、バフン雲丹、小海老のムース。混ぜちゃって頂きましたがちゃんとそれぞれの味が残っている。3種3様、ユニークかつ大胆な前菜、楽しめました。
2皿目の前菜は兵庫県氷室町の川をこの季節に遡上してくるサクラマス、これの燻製と胡桃、リコッタチーズのムース、うすい豆のソース、春キャベツのソース、、2種類のソースに文旦、上には春の野草を乗せ、容器の下に
は飾りつけの桜が敷いてあります。料理も美味しいのですが、ちょっと手が込みすぎでしょう、びっくりです。シェフの説明が(ひとつひとつの料理、すべてをシェフ自らサーブして細やかに説明されます)いつまでも終わらない! シチリアのワインが進みます。
前菜の3皿目はズッパ、イタリアのスープ仕立ての料理。明石の飯蛸、れんこん、里いも、パンチエッタをスープ仕立てに。里芋とれんこんは形がなくなっていますが味わいはしっかり残っている。パンチエッタは味とかりかりの食感が楽しい。飯蛸は火の通し方が絶品。生の風味は残しながらぎりぎりに火が入った加減が春の飯蛸の魅力を十二分に引き出している。
次の一皿はインタラータ、魚介のサラダ仕立て。パルマのプロシュート、ネック 赤身の多い部分、これにホタテ、ズッキーニをオーブンで軽くソテーしたものが散りばめられたサラダ。様々な味わい、甘い、苦い、辛い、こういった野草を上に散らして、これが薬味としての風味を醸し出し、一つのソースになっている。
勿論通常のソースも2種、リンゴとキャラメルを煮込んだソースとバルサミコのソース、上からシェフがシチリアのワイナリーで造られている絶品のエクストラバージンオリーブ
オイルをさっとかけて仕上げ。こラァもうサラダではありません。感動しました。
そしてメインの魚料理。
ズッパリペッシェ、イタリアのブイヤベースらしい。スープは明石海峡で捕れた魚介を使って取った濃厚、かつ重曹感のあるスープ。ガーリックトーストの上には桜鯛を胡桃で燻製にしたものとさつまいも、ケッバーが乗せられ、せりを散らしてある。スープが泣きそう。ガーリックトーストに滲みている。パンも浸してね、また泣きそう。桜鯛の燻製もすごい。桜鯛ではなく、この燻製が使われているところが素晴らしい。生の桜鯛ならばこれだけの奥深い味わいは得られなかった。風味、食感、味、いずれも魅力を増している。絶品でした。
最後にポモドーロ、といっても普通のポモドーロではない。2日前に解禁になった明石海峡の春の風物詩、イカナゴと大葉のポモドーロ。風味付けにロレンツォ、シチリアの貴族が作っているエクストラバージンオイルをまたまたシェフがかけてくれます。このオリーブオイルがすごい、鮮烈の一言、一挙に風味が増し、イカナゴ(生しらすの少し骨っぽい感じ)の磯臭さが飛んでいきますます。
面白い趣向の一品でした。
ドルチェはミルクのジェラート
一番下に明石の苺のジュレ、その上はチョコのムース、一番上がアイス。これをかき混ぜて食べるのですが(かき混ぜは今日二品目)、ミルクのリッチさ、濃厚だが甘さ控えめチョコ、苺の酸味、混ぜたために余計にひとつひとつが際立つ、そして混じり会う、たまりません。
飲み物は珈琲、エスプレッソ、シチリアアイスコーヒー、オリーブの葉のハーブティーから。私たちは当然シチリアとオリーブの葉です。
シチリアのアイスミルクコーヒーはカフェフレッドというらしい( フレッドはアイスの意味)。さすが様々な文化の入ってきた土地だけあって独特の風味のコーヒーです。アジア、北アフリカ、東ヨーロッパ、イタリアの要素が絡まり合った感じの色々な風味が感じられ楽しい。オリーブの葉のお茶は至極あっさりした感じ。ハーブティーほど香りは強くない、優しい味わい。
シチリア料理自体への造詣がないため頂いた料理がシチリア料理の典型だったかはわかりません。しかしシチリア料理というよりは、シェフの料理を、技術やホスピタリティー、料理にかける思いを頂いた気がします、堪能しました。
隠れ家のような空間で、シェフにすべてを委ねて、料理と雰囲気を楽しむ、、実に素晴らしい体験でした。次回は夜のコースを利用する予定です。楽しみです。