maffinさんのマイ★ベストレストラン 2010

The days of wine and roses

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マイ★ベストレストラン

レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!

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 レストランの評価の上で大切にしているのは「新しい発見や驚きがあったか」と、「いかに楽しんだか」という点のふたつ。そういった点でいくと、家の近所のお店より旅先の方がどうしても「特別感」は高くなってしまうのだけど、その中でも長野の蕎麦屋2軒「せきざわ」と「ふじおか」と、温泉宿「明神館」は新鮮な驚きととびきりの幸福感を与えてくれる素晴らしい場所だった。
 
お店に誰といくか、というのもかなり重要でやっぱりできれば気の置けない打ち解けた間柄の人(できれば舌の趣味も近く、)とが一番楽しめる気がする。目上の方に連れていっていただいた「京味」と「サンパウ」はその意味では例外的だがいずれも沢山の「発見」と「驚き」を与えてくれ心から楽しめる食事だった。食べログで高評価で憧れだった「k.u.k」はサービスの質の高さも印象的。
 
そういった非日常とはまた別に、日常の中でずっと大切にした店が「香菜軒」と、もともと食べログにレビューを書くきっかけとなった「incanto」。「シェフス」もその流れの気軽なチャイニーズで様々なオイル使いが印象的だった。
再オープンでいきなり「驚かせて」くれた「虎白」の今後にも多いに期待したいと思う。まだ完璧ではないけれど進化の過程での勢いを感じさせてくれる存在にはいつでもワクワクする。

マイ★ベストレストラン

1位

せきざわ (都住 / そば)

1回

  • 昼の点数: 5.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.5
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥2,000~¥2,999

2010/05訪問 2013/07/24

「桃源郷」

<2013年7月レヴュー>
このところ夏になると長野に行きたくなる。。。信州に来ています。

長野の魅力はいろいろあるけれど、こちら「せきざわ」さんにおじゃまするのも大きな目的の一つです。
こちらに今回が3回目。
昨年も7月にきて紫蘇切りをいただきました。

今年は3年前の初訪問時、美味しかった鴨焼きをリピート。相変わらずアツアツ、ジューシーで美味しいです。
胡椒がぴりっときいているのもいいんだな。

そして初めて頼んだ「おまかせ」。
蕎麦豆腐にずんだ餡を載せたもの、ふっくらと炊いたおたふく豆や蕗、玉子焼きなどしみじみ美味しいです。

蕎麦三昧は今年も同じ7月で、変わり蕎麦が紫蘇切り。
紫蘇切りはやはり鮮烈な紫蘇の香りが鼻孔に抜けて抜群にうまい。

しかし今回は生粉打ちがずしん、と美味しかった。
ここの蕎麦、もともと細めでしゃっきりタイプではありません。どちらかというとふくよかで太めの蕎麦、
これが昨年と比べてもさらに進化した太めになり、
で、なんだろう、このあり得ないくらい絶妙な力の抜け具合。
気張ってないのに本当に、「ずしん、」と迫る包容力のある旨い蕎麦なんです。

たぶん愛情をこめて蕎麦を育て、手挽きして、毎日蕎麦と会話しながら打っている蕎麦だからこんなふうに滑らかかつ内からわき上がるような力を持っているだろうな、と感じます。

いい蕎麦打ってます、とか、日々技を鍛錬しています、
という打ち手の気合いを感じさせる、緊張感ある尖った蕎麦とは違うので、この蕎麦の良さってもしかしたら気がつかないで通りすぎてしまうかもしれない。

でも私はここの蕎麦が本当に好きだし、今年はさらに進化して美味しくなっていた=「円熟味が増している」ことに感動しました。


<2010年5月レヴュー>
高得点連発の旅で自分のウカレポンチ気味にちょっと気が引けるけれど、
でもでもついに辿りついてしまいました、
ここ、「蕎麦好きの桃源郷」。

ここのところ季節が変わるごとに蕎麦目当てに遠出をしているけれど、
本来は「気取らぬ街場の蕎麦屋」が好き。
「特別な体験」としての蕎麦、より、「日常の中の楽しみ」を探す蕎麦が好きだから。

そんな中、ここ「せきざわ」は小布施の美しい自然の中にありながら、なんとなく「街中の蕎麦屋さん」の雰囲気も味あわせてくれた素晴らしい店でした。
その秘密はやっぱり「蕎麦屋の定番っぽい」メニューにあるのかな。
それとも店主の「おいしい蕎麦食べてって」、=あたたかい包容力みたいなものなのでしょうか。

当日いただいたものから列記すると・・
まず「蕎麦がき」・・・!
ふわーっとしたお湯の中にとても気持ちよく浸かってるお団子状の蕎麦がき。
手挽きの蕎麦の香りが湯気とともに立ち上り、そして味わいはまろやかながら舌にほどよく蕎麦のざらりとした質感がたなびき、理想的な蕎麦がきです。うん、おいしい!
ワクワクしてきますねー。

続いて鴨焼き。
街の蕎麦屋のメニューっぽい。しっかりと焼かれた鴨と葱が熱々の陶板に載って供されると、ものすごい湯気!ジュワーっと言う感じ。
気取りがなくっていいな、どうだ!といわんばかりの簡潔さ。そして嬉しい臨場感。
鴨は分厚くジューシー。ああビールのみたい・・・が我慢我慢。

続いて三昧そばの一枚目は生粉打ちです。
細め。微かな透明感。
昨日いただいた「ふじおか」に比べるとあちらの研ぎ澄まされた緊張感はないけれど、こちらはこちらで気取らぬ市井のおいしさ、をどこまでも凝縮させ昇華させたような完成度。
いいですね。

続いて変わり蕎麦は「わさび」。
美しい緑、こちらは生粉以上に表面が滑らか、味わいにも透明感があります。
山葵の香りはそれほど強くないけれど、かすかに鼻に抜けるような緑の香りが小気味よく、うーん、当然ながら今までいただいた「変わり蕎麦」で一番美味しい。
色、香り、食感、味蕾への刺激、そして自分でたてる「蕎麦の音」。まさに五感で味わう「強く、美しい」蕎麦です。

最後にあら挽き。こちらは小麦がはいってるそう。
これは他の蕎麦より若干ですが太い印象。
これがもうおいしくって!豊かな、緩やかな蕎麦。蕎麦のおいしさを本当に味あわせてくれるこちらも力のある蕎麦。大地の力、という感じでしょうか。うーん。凄いなあ。
これはやっぱり「かけ」もいただかないと。

と、最後にいただいた「かけ」の美味しかったこと。
出汁の色がとても薄いのですが、(そしてそういう「かけ」にいい思い出が多いのですが、)なんと洗練されたつゆなんでしょう。あたたかく、ふわん、と香る蕎麦の喉越し、なんという快楽なんでしょう。

こんなに楽しんで自分の分のお勘定は2,950円・・・あり得ない・・・CP!
自家栽培で蕎麦育てて、蕎麦挽いて、蕎麦打って。
すごいですね、関沢さん。
頭が下がります。

外に出ると店の裏には可憐な桃畑、そしてどこまでも青い空。
天気にも恵まれましたが本当に天国みたいな場所だなと思いました。
特別なロケーションであることは間違いないんだけれど、なぜかとても親近感を感じる蕎麦。
特別な蕎麦なんだけれど、なにか日常の中の出来事のように身近に感じました。
それぐらい自分の好みにあった蕎麦だったんでしょうね。
ああ、またここに来る日が楽しみです。

  • 2013年7月:おまかせ(酒の肴)
  • 2013年7月:鴨焼き
  • 2013年7月:粗挽き

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2位

京味 (新橋、内幸町、汐留 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 5.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 5.0
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - -

2010/07訪問 2010/07/15

一夜かぎりでも

尊敬している年上の女性に一度お食事しませんか、と声をかけたところ、お店のアレンジをしてくださるとのこと。
お気に入りの和食の店、と聞いたので嬉しいな、と思っていましたがその後「京味」でと聞き正直度肝を抜かれました。ミステリアスな人だなあ・・・。

さて当日。
お店にご一緒すると大変丁重なお出迎え。
カウンターの中、お弟子さん多いですね・・・そして噂の西さんがご挨拶。
うちとけた雰囲気、お連れくださったくだんの女性はかなりの常連さんの様子です。私はちょこっと緊張気味ながらも、これから始まるお料理の数々に胸がときめきます。

「飛切り」という大人っぽい味わいのお酒をいただきながらお料理は先付けからスタート。
今日は特別な日になりそうだから、しっかり全て記憶しておこう、
と思いつつ、最初のお料理に箸をつけた瞬間から
記憶が飛びました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

飛んだ。

お酒のせいでなく、お料理の素晴らしさで完全に脳のある部分が「飛んだ」感じ。

・・・・・。

で終わってはレビューにならないので記憶の濃淡の中からたぐり寄せるように断片を集めてみると。

先付けの一番右、最初のお料理。
若輩者なので確かではないのですがインゲン豆のもっと瑞々しいような緑の豆の間にほんのり挟まれたおそらく、イカの塩辛。
それだけなのに、五感をすべて刺激され、大切にしまってあった記憶を呼び覚まされるような鮮やかな瞬間。
プルースト・・。

そして続いたズイキの吉野煮の鮮烈さ。
熱々の吉野葛に抱かれた熱々の出汁のなんたる力。そしてそれをやさしく受け止めるズイキのシャキシャキとした若々しさ。美しい生姜の香り。

この後はもう、順番も記憶も定かでないのですが、それでもなんとか記憶をとりとめようとする。

たっぷりのウニを冷たくした茄子にのっけたの。

そして鱧の湯引きと炙り焼き・・・。
言葉もない。
今まで食べていた鱧ってなんだったんだ???
鱧ってこんなにふわっと、豊かな味わいだったんですね。
そう口にしたら、西さん、「これが普通なんです」
「普通」=「最高の最高」
最近の若者の言葉みたいですね(笑)

鮑のカリントウ。
鮑を細く切って軽く衣つけて揚げたもの。おいしくって笑いがとまらなくなる味。

お造りは鯛をあこう(石茂魚)。
特にあこうの洗いのひらひらとした、しかし凝縮された旨み、素晴らしいです。

まる鍋。鱧しゃぶとの選択でしたがまる鍋をお願いしました。
当然ながら熱々の澄んだ、コクのあるスープ。スッポンのゼラチン質がほんのり骨から離れる瞬間の快感。しっかりとスープを吸った葱の表面の香ばしさ。

鮎の塩焼き。
箸をいきなり身の部分につけた瞬間、西さんが「ああ、見てられないな」と思ったのか、「鮎はこうやって骨をとるといいですよ」と御自ら骨をぬいてくださいました。
若輩ものでほんとに恥ずかしいんですが、とはいえ西さんの優雅な骨抜きを眺めるのもまた至福。
やり方はあまりに簡単にみえますが、実にたおやか。食通だったら当たり前のことなのかもしれませんが私はこういう骨抜き初めて見ました。
尾っぽを身の側に軽く折って、ちょこちょこっとやってささっと骨を抜いてくださった。
色っぽいなあ。
次回鮎をいただく時にやってみよう、と思うけれどきっと再現は難しいことでしょう。
こうやっていただいた鮎の味は今までのどの鮎の味わいとも違っていました。

蛸の子、小芋、麩の炊き合わせ。お料理の最初の頃は薄味気味(=普段から薄味好み私にとっては普通の味付け)でしたがこちらはしっかり味がしみこんでました。

次に鱧寿司。
ちょうど祇園祭りの時期だからとのこと。ご飯がほろっ。鱧はふんわり、ほんの少しあったかいままで、冷たいご飯と一緒にいただくとなんてやさしい味なんだろうと感じる。
この辺でお腹ははちきれそうですが、
そのあとさらに鮭はらすご飯がでてきて、これもまた特に皮のぱりっぱり部分が笑っちゃうほど美味しい。

最後は西さんが目の前で丁寧に作ってくださった葛きり。
もう、なにか拙いコメントするのがはばかられるほどの境地の葛きり。

。。。。。
などと、意識が飛んだ、といいつつ確かに少しづつ鮮烈にフラッシュバックする味覚の断片。

今までありがたくも美味しいもの沢山いただいてきたけれど、食べログ書くようになって初めて
「私ごときが評価するなんておこがましい」という気持ちになりました。
うーん。結局身銭をきることもなく、気持ちの上での葛藤もあるけれど、でもこの感動をやっぱり☆に表しておきたい気持ちがまさるので謹んで満点つけさせていただきます。

それにしても、ここの再訪はあるのかないのか。
私自身ネット時代にどっぷり浸かってますが、万年筆で原稿用紙に書く美文のような、こういうお店がまだこの東京にあるんだなあ。と思いました。
大人の、本当に料理を楽しむ度量のある人達が通う、本来は常連のためのお店なんだと感じます。私みたいな新参者がひょっこり現れてはしゃぐ店ではないだろうと。
とはいえ、そういう、昔のいい時代の文化の残り香みたいなものを一晩だけでも感じ取ることができただけでも相当な果報者だと思う夜でありました。

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3位

香菜軒 (富士見台、中村橋 / インドカレー、オーガニック)

1回

  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 3.5
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥3,000~¥3,999

2010/10訪問 2010/11/03

五感が研ぎ澄まされる

ここ数ヶ月のうちでもっとも感動したお店。
ここにうかがって後しばらくの間、何を食べてもあまり感動できず、不思議な脱力感があったくらい。

ここに行かない?と誘われた日、実を言うとその日「カレー食べたい度」はけして高くなかったけれど、「香菜軒」って名前には一瞬でひかれて、それでドライブがてら行ってみることに。結構遠かったんだけど・・・。

自然派系とは事前にわかってたので店構えも、ふーん、こんな感じだよね。と入店。
お店のテーブル周りには古い「太陽」や料理の方、ロシアアバンギャルドアートの本など、なんとなくこだわった雰囲気があり、ゆっくり時間が流れている感じ。

2,100円で小さな前菜と有機野菜のサラダ、ハーフサイズのカレー(メニューから好きなの選べる!)2種にライス、プーリー、デザート二種に飲み物がついたセットを頼むことに。
二人だったから当然カレーは4種類選びます。カレーによっては多少プラス料金がかかりますが、おいしそうなカレーのラインナップにそんなこと気にしてられません。

飲み物・・ビオデナミのいかにも良さそうなワインがいろいろ揃ってるので後ろ髪ひかれながら、運転担当なので・・・うー。と思っていたら見慣れないノンアルコールビールがあるみたい。
新潟麦種のノンアルコールビール。オーダーしてみました。

まずはビールが出てきて、ひとくち、あれれ、これ美味しい。
時々飲んでる「KIRIN FREE」とは相当違う。
しっかりした麦芽の香りがして、一方かなりフルーティでリッチな口当たり。これはいいです。

一方お料理の方は・・・

まずは小さな前菜で温かいスモークチキン、バジルが添えられています。
かみしめるとぎゅっと凝縮した良質な鶏肉の旨みが口中に広がります。うーん。おいしい。これってきっとシングルモルトのアイリッシュウィスキーとかにもとてもあいそう。

続いて有機野菜のサラダ・・・これ、ちょっと別次元のサラダと思いました。
野菜それぞれがしっかり美味しいのは嬉しいんですが、なんというか。今までちょっと「余分にくっついてたかな」とう自分の五感の上に張った薄い膜のようなものが流れ落ちちゃうような、ピュアで新鮮な味わいです。
ちなみにひじきに人参に大根にきゅうり、人参って言うありふれた内容・・・なのにね、すごいなー。
毎日食べたい・・・。

ライスとプーリー、ライスは胚芽米、プーリーはぱんぱんに膨らんでいておいしそう。実際全粒粉の香りがして本当によく出来たプーリーだった。

でカレー4種・・・。

カツオのカレー
モルジブフィッシュみたいな鰹の香りがカレーのスパイスとマッチした、マイルドだけど深みのある旨みが印象的。
いきなりレベルが高いです。

ひよこ豆のキーマカレー
ひよこ豆大好きなんですが、美味しいですね、ほっとする味わい。でも4種の中ではこれが一番平凡な印象ではあった。

豚と2種のチーズのカレー
これ絶品です。ブラックペパーがきいていて、それほど辛いわけではないんだけどガツン、と来る感じ、でとろーりと溶けたチーズと相まって、絶妙な幸福感。すごいカレーだと思う。都内ポークカレーとして個人的に最強、と今回勝手に位置づけさせていただきます。表現が貧弱で申し訳ないんだけど・・・とにかく う・ま・い!

天然エビとキノコのカレー
今まで海老のカレー食べてあんまり楽しい思いしたことないんだけど、その主たる理由はだいたい海老がちょっと生臭く感じるというか、うーんわざわざ海老にしなくてもよかったかな、って軽く後悔するような経験だらけだったんだけど・・・。
ここ来たらそんな先入観は忘れてこのエビのカレーを食べてみることをお勧めします。
海老ってこんなにぷりぷりして甘くて、カレーにするとこんな喜びがあったんだな。って新しい発見。

結構量が多いのですが、陶然としながら完食です。

続いて焼き菓子と冷たいデザートの2種のデザートプレート。
「白ごまのブランマンジェと、ガトーショコラ」に、「マンゴーのジェラートと、いちじくとポピーシードのカトルカール」。
アイスチャイと一緒にいただきます。
どれも丁寧に作ってあってとてもよい雰囲気。
アイスチャイもしっかりと薫るいいチャイです。最後までまったく手抜かりない、このまっとうさ、丁寧さ、
頭が下がるというものです。

遅い夏の終わりというのもあってちょっと疲れてたというのもあるのかもしれないけれど、
ものすごく気持ちよくリセットした、という食事、幸福度が高いです。
お店の方はきっとまっとうな食材を選んで毎日丁寧に正直にお料理を作ってるんだと感じます。
当たり前のことのようでなかなか一朝一夕に出来ることではないんだろうな・・・。
自然食系のお店にありがちなストイックなところが全くなくて、食の喜びを呼び覚ましてくれるようなおおらかさが魅力です。
本当に美味しいものってこんなふうに、シンプルなことの積み重ねの中で生まれていくのかもしれませんね。
でもきっと人を感動させる料理ってジャンルにかかわらず、料理人の「センス」が絶対不可欠なものだと感じます。

  • 自家製チキンスモークの前菜
  • 有機野菜のサラダ
  • 胚芽米とプーリ

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4位

虎白 (飯田橋、牛込神楽坂、神楽坂 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.5
    • | CP 3.5
    • | 酒・ドリンク 3.5 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 -

2010/09訪問 2010/10/07

待ち遠しかった再オープン。

「9月に装いも新たにリニューアルオープン!」
のお知らせの葉書をいただき、再訪の機会を心待ちにしておりました。
その願いは割合早くかない、ある晩2名で神楽坂のこの店の暖簾をくぐることに・・・。

建物ごと建て替えと聞いていたけれど、確かに坂の途中をちょっと入った、あの場所に復活してます。
嬉しいな。アプローチは前よりゆったり。
中に入ると。。。あ! かなり広くなってる。
前のお店の広さの倍以上でしょうか。
新しいお店のインテリアデザイン・・・この手の和食の店の中では一番好みかもしれない。
(美味しくてもインテリアはあれれ?・・・な店が多いのが和食。)
席の間をしっかりとった直線的なジャパニーズミニマルデザインは落ち着きます。
カウンターは6席かな。カウンターも惹かれますがこの晩はテーブル席へ。

さて、お料理!
ん、以前は10,000円だったコースは13,000円に値上がりしてるけど・・・どうかな?
写真一枚しか撮ってないのでメニューの流れ、少々不確かですが、こんな感じ。
特にはっとしたお料理には★印を付けてみました。

★毛蟹と茄子、柑橘のジュレ
★ゆり根のコロッケ、銀杏とトリュフソース
スッポンのスープ
お造り(鯛)
★鰻、パリッパリに焼いたの(美味しい!)
あと飯蒸しの料理があったような・・・。(失念、すみません)
サンマにイチジク、トマトをあわせた大胆な料理、
茸と和牛の炊き合わせ。カブと
イクラご飯
★黒蜜とジュレのデザート。

お酒はビールに始まってそのあと鄙願をいただきました。

お料理の全体の印象は確実なパワーアップ。
特に素材の食感に以前より心をくだいていらっしゃるように感じました。
クリスピーに揚げた湯葉を散らしたり、鰻もこれでもか、とパリッパリに焼いたり。
気持ちが高揚する食の楽しさが感じられます。
トマトにサンマ、イチジクを会わせたお料理はかなり「冒険」と感じましたが、うん、これもまさにクリエイティブ。
同席した和食に造詣の深いブロンドの長身さんはずっと感激しっぱなし(良かった)。
まだお若い小泉料理長、食の可能性に果敢に挑戦していらっしゃる印象を受けました。
前におっしゃっていたとおり、この1年の休業の間、シドニーのTetsuya'sや元修業先「石かわ」で研鑽を積んでいらっしゃったとのこと。
きっと視野が広がって新しいアイディアも沢山できたんでしょうね。

確かにお値段は少々あがったけれど、それでもこのゆったりとした環境とパワーアップしたお料理、十分納得の内容です。
新生「虎白」の今後がとても楽しみになってきました!


*******************
↓2009年7月

冬にお邪魔して印象的だったここの夏のお料理に心魅かれて久しぶりに2名で訪問しました。
連休明け、当日予約だったけれど、なんとか席をご用意いただいたという感じ。

本日も9品、10,000円のコース。
順番&内容、少々うろ覚えですが、確か以下のとおり。

1.トマトのジュレ
2.鮎をパリっと焼いて、タデを散らしたおつゆで
3.トリュフを散らした飯蒸し
4.アカザエビの熱いスープ
5.アコウダイのお造り
6.とうもろこしのムース、白桃とじゅんさいと併せて
7.鰻をパリっと焼いたお料理
8.〆の御飯・・・3種から選択のうち、焼いた牛肉を載せたショウガ御飯
9.デザート、スイカに塩のジュレ、白ごまのスープ

結論・・・前回よりぐっとお料理の輪郭がはっきりしてテンポもよく、心から「おいしい!」とすっかり堪能しました。前回はテーブルだったけれど、今回はカウンターでいただいたのも楽しかった。
総合評価☆4つから4.5にアップしました。

相変わらずジュレ、とろみ多用は賛否わかれるところかもしれないけれど、夏のお料理は特にちゅるん、としたものが美味しい。
一方鮎や鰻は直感に訴えるカラッとしたお料理で、このコントラストも楽しい。
今回のベストは鮎かな・・・でもとうもろこしのムースにじゅんさいはともかく、白桃をあわせるセンスも好き。トリュフ風味の飯蒸しも反則でしょう、というくらいおいしかった。
何より10,000円でこの内容を提供してくれるのは嬉しいです。

現在の店舗は9月30日まで、そこから約一年間ビルごと改装にはいるそう。
その間店主の小泉さんは石かわに舞い戻りつつも後半は料理修行の旅に出るかも、となかなか興味深いお話をしてくださいました。
さらにパワーアップした「虎白」も楽しみだけど、1年ちょっと先の再オープンは待ち遠しすぎる。
秋口のお料理を楽しみに、滑り込みで9月にまた再訪できたらなあ、と考えてます。

**********

↓2009年1月


久しぶりに東京に来る友人が和食を所望とのことなので、別の友人と3名で利用しました。
年末に一度利用しようと思ったとき、予約がとりづらかったことを思い出して今回はかなり早めに予約を入れて、土曜日の午後7時半。
神楽坂の小道をちょこっとはいった大変雰囲気のよい佇まいです。

店内はカウンターそしてテーブルがふたつと小さな個室。
我々は個室に通されました。小さい個室ながらテーブル周りは割合ゆったりしていてよい感じ。

寒い夜だったので黒龍をぬる燗でいただきながら、10,000円のコースを。
会話が盛り上がったので料理の順番などかなり曖昧かつ、いくつか飛ばしてしまっているかもしれませんが印象に残ったままに記載すると以下のとおり・・・。

スタートは「甘エビの炊き合わせ」
・・ちぢみほうれん草と一緒に。上にちょこっと小さなあられ(お茶漬けにはいっているようなやつ)がかかっており、これがクリスピーな上に香ばしい。甘エビはとろっと甘く、柔らかなちぢみほうれんそうとのバランスもなかなかのもの。

「ふぐと姫くわいの唐揚げ」・・・ふぐがかなりカリカリッと仕上げてあり、ちょっとフィッシュアンドチップスを思わせる楽しい食感。ふぐとくわい、旬の味わいで気持ちが盛り上がります。

「金目鯛のスープ」
澄んだお出汁をベースにしたスープに脂ののった金目鯛の旨味が渾然一体となって・・・絶品スープでした。

この辺でお酒は冷たい「鄙願」に切り替えて・・・

「山形牛、とんぶりと餅米と一緒に」
山形牛は軽く炙って、上にとんぶりと山葵、下にとろふわっとした餅米。
これは抜群に美味しい組み合わせ。とんぶり、大好きだし、食感の対比の楽しみもある。センスいいですねー。

「鯛のお造り」
シンプルな鯛のお造りですが、鯛に甘みがあって美味しかった。香りのよい岩のり等のあしらいもとても気が利いています。

「筍を焼いたもの」
え、もう筍!正月過ぎとはいえずいぶん早いですね。でも春を先取りするみたいでとても嬉しい。
だけでなく、筍の皮にちょこっと火が灯ったままに出してくれるので炙った香りが素晴らしい・・・龍吟の夏のメニュー、鮎を焼いて笹に火が灯ったまま出してくれるお料理も大変贅沢だけど、こちらはもう少しさりげなく、でもとても幸福度の高いお料理で五感に訴えます。
味はもちろんおいしいけれど、何より風流を楽しむ料理と言えますね。

このあと、確か白いスープのお料理が・・ああ完全に忘れちゃった。
スープの美味しさだけはしっかり覚えているのですが、確か何かお魚と海老芋だったかな?

「ふぐ刺し」
上にふぐ葱が載って、しゃきっと美味しい。ふぐはやさしい味わいながらきりっとしています。

「松葉ガニのスープ」
とろみのあるスープ、松葉ガニの旨味が嬉しいコクのある味わい・・・中には鱈の白子がはいっており、全体にふんわり、ほっとする味わい・・・。

〆はお店の手打ちの蕎麦、鯛茶漬け、フカヒレあんかけご飯の3つからの選択。
「フカヒレあんかけご飯」にしてみました。
フカヒレのとろみとご飯がマッチして大変おいしゅうございます。そして添えてある赤出しがまた美味しい・・・こんがり焼いたお揚げをあわせているのですが香ばしさが端正な赤出しにアクセントを与えてなかなか素敵。

デザート。
きなこでつくったクリームソースに苺とココナッツのムース。その上にラム酒のジュレがかかっていて、一緒にいただいた緑茶がこれまた姿勢が正しくなるほど美味しくて、大変幸せな気分で食事を終えました。

心のこもった接客も大変気持ちよく、サーブのテンポも絶妙、お店の雰囲気もシックで居心地抜群。これはよいお店に巡り会ったなあと大満足。
さらに10,000円懐石でこの内容、高級食材もそこここに取り入れて、かなり頑張っていらっしゃると思います。若いカップルの和食デートにもよいのではないでしょうか。

同じ10,000円懐石でミシュラン☆のラボンバンスよりはこちらの方が個人的にはツボ。
全体に「葛餡」などを多用した「とろみ系」がかなり目立つのが少々気になるとはいえ(個人的には葛餡、ジュレなどとろみ系大好きなんですけれどね)、季節感を取り入れ、サプライズも嬉しいワクワク感のある和食のコースは店主の勢いを感じ、楽しいです。
初筍ご馳走さまでした・・・次回はどんなサプライズがあるか、今から楽しみです。


  • 2010年9月:かなり大胆な組み合わせのサンマのお料理。
  • 2009年7月:トウモロコシムース。ジュンサイと白桃を添えて。
  • 2009年1月:皮をあぶった筍・・もう春の気配なんですね

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5位

蕎麦 ふじおか (長野市その他 / そば)

1回

  • 昼の点数: 4.7

    • [ 料理・味 4.7
    • | サービス 3.5
    • | 雰囲気 4.7
    • | CP 3.5
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥4,000~¥4,999

2010/05訪問 2010/05/12

呼吸する蕎麦

都内の予約困難レストランに挑戦する器量も甲斐性もない私ですが、こと蕎麦となると急に行動力&忍耐を発揮するから不思議。
滅多に連休のとれないパートナーの連休を見付けるやいなや自分の休みも確保してこれ一番にとここ、「ふじおか」さんに予約の電話。
約3週間後の予約に成功すると、次にはさっさと宿の予約。我ながら相当テキパキしてます。

当日は都内の我が家を午前7時まえには出発。というのも、11:30amの予約に遅れると相当怒られるって先人のレビュアーさんに教えられてたので、小心者の私は「早めに着く分にはいいや」と。
GW明けの金曜日だったので高速はものすごく空いていて、すいすいと着いてしまいました。
ちょっとわかりにくい道のりも、先人レビュアーさんがアップしてくださった地図でしっかり確認でき、大変ありがたかったです。

さて。11:30amにはちゃんと店前にいましたが、お店が開いたのは11:35amを過ぎていて、
あれれ時間厳守・・・じゃないじゃん。ってちょっと心でツッコミいれてみたり。
ま、ここは客がお店のペースにあわせる希有な店なんでしょう、美味しいもの食べさせていただけるならそれはそれでアリです。

で店内へ。3,000円の蕎麦コースがおきまり。で、あとの選択は何か飲むか、そして蕎麦がきと蕎麦ぜんざいを別注するか。
ドライバーなので飲みものは泣く泣くあきらめ(お酒は鄙願だよ、根津の「釜竹」でも飲めるよ!)蕎麦がきと蕎麦ぜんざいはすかざず注文します。

最初に摘み草というか山菜というか、春ですねー。
のお料理がでてきます。
主にコンクリートジャングルで育ったのではっきりいって山菜のどれが何なのかはあやふやなのでその辺の細かい説明は飛ばしますが、
シンプルに言うとおいしい。で、血液がサラサラになる気分のお料理です。
特に素晴らしいのは山葵の茎の白和え風。鮮烈。
あとは「芹」みたいな味わいだけどもっと繊細な草・・・こちらは緑のふくよかな味わい。春だなあ。
「うるい」なのかな、はちょっと甘い味付けがつけてあってほんのりフルーティ。
山菜はそれぞれ個性豊かで異なる味わいや香りがあるのに、食べてるうちに全体が渾然一体となってきて、あの小太りグルメタレントだったら、「春を奏でる味のオーケストラやー!」と叫ぶかもしれない。(爆)

次に蕎麦がゆ。
ふんわり。筍の香り、山菜を軽く揚げたの、山椒の香りに山葵。
すべてが主張しながらほどよく調和。蕎麦の実の粒々が心地いい。こっちはスーラの点描のような印象です。(爆)

でもパートナーと一緒に「ん?」と顔を見合わせてしまったのが「蕎麦がき」。
すごーく手間かけて、繊細に練り上げた蕎麦がきなんですが、残念ながら我々の好みにはあわなかった。香りはすばらしいし、蕎麦粉の魅力満載なんですが、我々、ほろほろっとした蕎麦がきが好きなんですね。
ここのは相当ソリッドステートサヴァイバー。あ、すみません。今日のレビュ、滑ってます。
そう、Solid=中身のつまった、とか固体の、とか実直な、って印象です。
私は蕎麦がきは Fluid=可塑性がある、柔らかい、優雅な、ってのが好きだな。
といってもこれはあくまでも個人の好みの問題なので、はい、さっさと次行って、

そう、真打登場、お蕎麦の出番です。
見た目・・・最高峰の蕎麦の呼び名高いのに、量、意外としっかりある。
静岡の「宮本」さんとは大違いです。ありがたいね。
香り・・・蕎麦の豊かな香り。がやはりしっかり詰まった感じ。
食感・・・細い!細いのにものすごく端正で、姿勢正しく、襟元正しく、涼やかで男前。
で、円熟したすごみがあるというより、正反対で「若くてかつ、てらいがない」。
これほど細いのは銀座の「古拙」を思い出すけどまったくレベルが違う・・というか次元が違う。
喉越し・・は快感以外の何者でもない。

と、こういう風に拙い文字にするそばからどんどん蕎麦の実像が逃げていくような・・・
そんな素晴らしい、清々しくも遊び心もあれば洒落心もある蕎麦で、けして「その道の仙人が丹精こめて悟りをひらいた」という「厳しい」系統でなく、蕎麦の楽しさや喜びを伝えてくれるような蕎麦です。
次元が違う・・・というのはたぶん本当のことだと思う。
ただ、その次元の違いが何に起因するのか、それをどう捉えたらいいのか、は謎のままです。

濃いめでしっかりした蕎麦湯いただきながら、お漬け物がでてきます。
すべての野菜の味が濃く、はっきりとした味の輪郭をもっている。林檎のシロップ煮もちょこっとあったりして、楽しめます。
こんなに漬け物たっぷりだと塩のとりすぎになっちゃうからちょっと・・・(塩多いの苦手)、と思ったのもつかの間、野菜自体に力があるから塩っけがあまり気にならず、結局すべていただいてしまいました。

蕎麦ぜんざいもふんわり、蕎麦を練って餅のように仕上げてあるのですが、さきほどの蕎麦がきに比べ、こちらの方が好みの食べかたです。
柔らかい気持ちになったところでお薄をいただいて食事は終了。
その間店内のこだわりのオーディオセットからはクリアな音色でずっとシューマンやラヴェルのピアノ曲が。
これがなぜか蕎麦にあうから不思議です。

店の外に出るとまだ微かな小雨が降っていましたが、そのせいで周りの新緑が匂い立つようでした。
春に来て、沢山山菜を堪能できて、体の中に美しい水を取り入れたような、そんな気分になって店のある別荘地を後にしました。

  • 摘み草・・というか山菜、のお料理。
  • 取り分けて、春の香りがいっぱい。
  • 蕎麦がゆ。

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6位

レストラン カーウントカー (溜池山王、国会議事堂前、虎ノ門ヒルズ / ヨーロッパ料理)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 3.5
    • | 酒・ドリンク 3.5 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 -

2010/04訪問 2010/04/19

比類なき名門レストラン

マイレビュアーのうぇりっしゅさんが足繁く通うこのレストラン、以前からずっとうかがいたいと思っていましたがなかなかその機会がなく、

そうこうするうちに仕事でお世話になってる知人が定期的に美味しいものを食べに行く「美食会」を立ち上げる、ということになり、ありがたくも初回から参加させてもらうことに。
お店のリコメンドを頼まれたので迷わずここの名前をあげました。

ところが当日の朝から珍しく胃がしくしくと痛む。
一度は「今日は無理?」と暗雲がたちこめたのですが、なんとか気力で胃痛をおさめ、這うようにして(?)ディナーのテーブルについたのでした。

まずは自家製サングリア(白と赤があります)の白の方をいただきながらメニューを拝見。
Menu 1 とMenu 2がありますが、胃の様子もうかがいつつなので当然お皿の少ないMenu1 を選択しました。
メインも普通だったら迷わず「肉」なのですが今日はおとなしく「魚」で。

やさしい味わいのサングリアをいただきながら、まずは定番の「ケーゼ・ベッカライ」をいただく。ごくごく薄ーいパイのような感覚。
さくっとした味わい、それぞれスパイスも異なり大変細やか。
続いてコースには入ってないけれどここに来たらまずは試してみたい評判の「梅山豚バインシンケン」。固まりのままワゴンで運んできてサービスしてくださいます。
マスタードをベースに玉子や蜂蜜の香りのするソースをちょこっと添えて、どんな味?

「! 」
実に美味しい・・・というか、ハムの中でもこれは別格。
旨み、味わいも素晴らしいのですがなんといってもすごいのがハムが口の中から消えた瞬間の「余韻」の香り。かすかにスモーキー。たなびいて。
素晴らしい。
この余韻を楽しむにはまずはソースつけずいただいてみることをオススメいたします。

続いてアミューズ。
ヘリング(ニシン)の酢漬け。ドイツ以北ではよく見かける料理ですが・・・
ここのは実に繊細。ディルの香りも爽やか、上質のビネガーにくるまれたニシンの優雅な味わいです。
このあたりで食欲が・・・完全復活しましたね。
そう、ここの料理。食欲を覚醒させる力があるような気がする。

前菜は伊達鶏をマリネしてポーチにしたのかな、冷製前菜。
表面に鶏のスープでつくったジュレがはってあって、艶やかできれい。
とても完成度の高いラタトュユのような野菜のソースが添えてあります。
味わいは・・これは・・うん、この日唯一あまり「理解」出来なかったお料理。
おいしくなかった、のではなく、「捉えどころののない」感じの不思議な味わいだったのです。
美味しかったのだけど、今までの食の経験のどのあたりの引き出しにしまってみたらのかな?って感じです。
うん、あえて言えばものすごーく洗練された「地鶏の味噌漬け」系の味?
 はは(ごめんなさい!)。

続いてスープ。
この日は冷たいトマッテン・ズッペン、要するにトマトのスープ。
ずいぶん庶民的なものが・・・が、私の知るトマトのスープでは全くなかった。
季節のトマトの味わいを凝縮させた冷たいスープ、こちらも優しい風味なのですが、真ん中に浮いたレモンの香りのクリーム系チーズ・・・を溶かしながらいただくと、
うーん、なんて美しい調和なんだろう。
派手ではないんですが、じわじわっ、と心の中にまでしみいってくるような、幾重にも重なった味わいの妙。すごい。

さらに度肝を抜かれたのがメイン。
北海道産エイヒレの料理。シャンパーニュクラウトと根セロリのピュレ添え、と説明を受けました。登場したお料理は・・・見た目はまったく田舎料理・・ただしちょっと量が抑えめだけど。
根セロリのピュレがジャガイモのマッシュで、シャンパーニュクラウトがザウワークラウトだったら間違いなく田舎料理なんですが・・さて。
まずナイフとフォークを入れて一口エイヒレをいただいたところで、パタっと思考が停まってしまった。
一呼吸おいて、思わず口から「おいしい・・・」
これが、あの、お酒のおつまみの「エイヒレ」と同じ素材ですか。驚き。
なんだろう、食べたことのない味覚です。
食感はうーん、ちょっと弾力があり、なんとなく平目のエンガワにも似た感じ。
味わいは一瞬淡泊ですが、軽いコラーゲン系、というか、味わっていると口中にふわーっと独特の優雅な旨みが広がります。
これも実に洗練されたお料理・・・じっくりと味わいたい真剣勝負のお皿です。
添えられたシャンパーニュクラウトとは、ザウワークラウトをシャンパンで仕上げたもの。
キャベツの甘みとビネガーの酸味、シャンパンによる軽い華やぎの気配が、同じく添えられた根セロリのピュレの爽やかな味わいとともにエイヒレの旨みをバックアップします。

ちなみにワインですが・・・調子悪いなんていいながらしっかり白をグラスで2杯いただきました。グラスはロブマイヤー。
お料理にあわせてグラスワインを選んでリコメンドしてくれるシステムがあるのでそれを利用しました。高貴な香りのワイン。だったような印象です。

メインの後、デザートの前に「貴腐ワインのブルーチーズ」というのを薦められたので、こちらも試してみました。うん、これも高貴な香り。幸せな気分になります。

デザートはお米をスフレ状にしたものに、日向産夏みかんが添えられて。
メランジェコーヒーをいただいて、その日は満足して帰途につきました。
特に派手なものは何もなかったせいか、ここまでの感想では、味は☆4つかな、と。

しかし翌朝起きて、「ああ、あの魚料理、もう一度食べたい」という気持ちがじわじわと・・・。胃腸の不調はすっかり治っていて。
昨晩の食の幸せの記憶がかなり鮮明に蘇ってきて、
ああ、あの料理は最初のシンケンで感じたように「余韻の」お料理だったのだなあ、と。
で、☆は4.5にアップ。

一口にヨーロッパ料理、といっても、美味をつきつめると、スペインでもスイスでもドイツで北欧でも、素材はそれぞれの伝統のものを使いつつ結局は「フレンチに傾いた方向」に集約されるてくるのが摂理、と思っていた私はこのレストランに出会ってちょっと認識を新たにしました。
あれはまごうことなき「ウィーン宮廷料理」という1ジャンルであり、それ以外のなにものでもないに違い有りません。日本人シェフだから、そのあたりの影響はあるかとは想像しますが。
フレンチやイタリアンの若干「攻撃的な」料理に比べ、同じヨーロッパ料理でも、なんだか少しゆったりした、ドナウの流れのような、でもそれだけに「伝統と洗練」を感じさせる料理。素敵です。

さらに特筆すべきは素晴らしいサービス陣。
ここ数年でうけたサービスの中でも間違いなくトップレベル。
食の担い手は文化の担い手として、誇りを胸にサービスにあたっていらっしゃるのでしょう。
きっとオーナーが人を大切に育てるタイプなのでしょうね。
ロブマイヤーがつくった200年前のシャンデリアがさりげなく食卓を照らすなど、調度品も本格的。シックな大人のためのレストランだと思います。

  • バインシンケンはその場で切り分けてくれます
  • 伊達鶏の前菜。
  • トマッテン・ズッペン。真ん中にレモンの香りのチーズ。

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7位

インカント (広尾、白金高輪 / イタリアン、ワインバー)

1回

  • 夜の点数: 4.8

    • [ 料理・味 4.8
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 4.4
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 5.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 -

2014/07訪問 2014/07/04

Incanto 運命のワイン〜その6

<2014年7月レビュー>
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うーむ、ため息ののち、唸ってしまった。

思い起こせば食べログでレビューを書くきっかけとなったのが2008年、ここのお店を初めて訪問した時の感動から。
ということでその後も何度かお邪魔していたのですが
前回の訪問から間があくことなんと4年。。。(いったい何をしていたんだ?)

この晩も実は他のイタリアンがお休みで予約がとれず、そしたら久々にINCANTOでも。。。。などと向かったのだけれど
はあ、
この店に長らく足を運ばなかったことを今は激しく後悔しています。

もともと素晴らしい店だったけれどこの4年の間にさらに進化しておりその完成度の高さはもう驚愕もの。

はい、私は以前こちらでは藤本ソムリエ(今はイルプレージョにいらっしゃいます)に接客してただくことが多かったけれど、
そして藤本さんの接客も大好きだけど、
今回オーナーソムリエの竹石さんのワイン選びにはただただ「参りました」の一言のみ。
です。

さて、始めは軽快なロゼのスプマンテに始まり、
イニッツィオ(ベルペッパーとイタリアのなんとかというキノコ)のきめ細やかな完成度の高さに感心しながら
まずは冷たいアンティパスト。
これは鱒の薫製を選んだのですが、
グレープフルーツやカブの他、キャビアが添えてあり、なんというかもう、美味を極める味わいのレイヤーに圧倒される。
そしてそのレイヤーをこれまでに無いほど美しく纏め上げるカラブリアの白ワイン。
ため息が。。

続いてリストランテ自家製の鴨ロースの生ハムをいただきました。
ボディのしっかりした、鴨の脂の旨味を凝縮させた素晴らしい出来の生ハム。
これに季節のフレッシュな桃をあわせて、至福の味わい。
あわせるワインが凡庸な赤でなく深みのあるシチリアの白だったこともさらに感動を増幅させる。

このあたりからワインの細かな記憶がなくなる(写真撮ったりメモとったりするべきなのでしょうが)、のですが、
ともかく、料理の複雑なレイヤーの重なり合いにうっとりしながら、さらにそこに「句読点」を打つようなワイン選びに何度ため息がでたことか。
こんな贅沢な時間、過ごしてよいものか?

プリモの一皿目は最古のパスタと呼ばれるサーニエ。もちろん手打ち。スペルト小麦で作ったものだそう。
小麦感の美味しさとつるっとした表面の食感の滑らかさが素晴らしい。
ソースは珍しくもチェザネーゼという赤ワインで煮込んだ鯰のラグー。なんと洗練されたラグーなんだろう?

プリモ二皿目は珍しくこの季節に選んだ南瓜のニョッキなのだけれど、とにかくもう、焦がしバターの具合とか、ケシの実を散らしたあたりとか、料理のレイヤーの数々が複雑に絡みあいながら素晴らしい弦楽四重奏のような少し遊び心ある調和が、選ばれたワイン(あれ、もう順番が。。。確かスーパートスカーナだったような)で美しくも完成される気持ちの良さ。

セコンドは数有る誘惑の中から自家製サルチッチャを選んだのだが、これも大当たり。
というか、こんなにスパイスが洗練されたサルチッチャをいただいたのは初めて。ブラックペッパーは当たり前として、フェンネルやアニス、クローブのような重層性の有る香りが混在して食の快楽を誘うだけでなく、しっかり選ばれた上質な豚肉の味わいをガツンと味わうこの幸福感も大変なもの。
あわせていただいたワインは。。。あああ、バルバレスコだったかしら。凡庸なネッビオーロが苦手な私をしっかりねじ伏せるイタリア女のような芳香にただただクラクラ。

「インカント」という言葉に「うっとりさせる」とか「魅了する」とか「魔法をかける」意味があることを実感として理解した感じ。

結論。
やはり私は薫りを知り、それを自由に操る料理人にとても弱いのだと思う。
やはり私は食をトータルでコーディネイトし、提案できるサービスにとても弱いのだと思う。

ああ、インカント様、この4年近くのご無沙汰を心からお詫びします。
私がぼーっとしている間に貴方様はここまでの高みに到達されており、さらに進化を続いておられるご様子。
しかしながらこういうサプライズは本当に嬉しいもの。
訳あって別れた恋人に久々にバッタリ会ったら以前よりもとても素敵になっていて見違えた、なんて感じかしら。。。

ということで僭越ながら点数も見直しさせいただきました。
(しばらく来ていないうちに写真撮影もOKになりました。。。美味しい時間の記憶のためにこれは嬉しいです)


<2010年11月レビュー>
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個人的に偏愛するレストランなのだがなかなか来られなくて、でもある晩近くで仕事が終わったので思い立って電話すると席がとれるとのこと、良かった。

久々に来ても顔を覚えていてくれる居心地の良さ。
何でもこの時期は「アオスタ地方の料理」を特集しているとかで、アオスタメニューが目を引くが、久しぶりなので、どちらかというとちょっとカントリー食強いアオスタ料理ではなく、やはりレギュラーコースで楽しんでみようと。

で、今回も美しいワインの数々をグラスで楽しみ(6種類。飲み過ぎか。)、そして今回特に嬉しかったのはお料理のさらなるパワーアップと、料理の運ばれてくるタイミングの改善・・・・ようするにオペレーションの良さ、といったところ。

小さな前菜はビーツのマリネに生ハム、スモークモッツァレラ。スモークモッツァレラ良かった。

続いてアンティパスト。八丈島産キンメの柑橘マリネ、ベルガモット風味。金目鯛のとろっとした味わいにベルガモットの爽やかさがとても合う。
そのあと、自家製のサルチッチャ。これもごつっとした素朴かつ力強さがいい感じ。

パスタは最古のパスタと言われる幅広のパスタに豚とトマトのソース、これも力技がよくって、またショートパスタでいただいた鯖とウイキョウのパスタも香り高くよかった。
パスタはいずれも手打ちだが、以前にもまして口腔内での滑らかさが何とも官能的で「腕上げてるなあ」と感じる嬉しい発見だった。

セコンドにオックステールとセロリの煮込み。これもどっしり、繊細なだけでなく、こういう力強い料理が私はやっぱり好きなんですね。

ちなみにグラスでいただいたワイン6種ですが確か最初フリウリのビオデナミの白で始まりその後アオスタ2種、ラツィオ1種、シチリア2種、というぐあいに北から始まってどんどん南にくだっていったのも楽しかった。
いやあ・・本当にここに来ると他では絶対できない経験ができて、ものすごく満足度が高いんだけど、振り幅が大きいって言うか、無難に繊細にまとまってないっていうか、万人向けではないだろうかなあ、と思う。
でも私はこういう万人向けではないけど個性あるレストランってのが好きなんだろうなあ、と妙に納得する夜でした。

<2009年12月のレビュー>
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東京に素晴らしいイタリアンは数多くあれど、素晴らしいイタリアワインを北から南までグラスで楽しみつつ、多彩なメニューを楽しめる店と言えばここに勝るリストランテはない。
と断言してしまう割に、
ご無沙汰していて、でも、ずっと恋い焦がれておりました。会えない恋人のように?

2009年が終わらないうちに絶対来なくては・・・と3名で訪問。
テーブルの相手は食通のご夫婦のクライアント。私なんかよりずっとワインにお詳しいお二人ですが、ここだったら彼らにとっても面白いと感じるワインをお薦めいただけるはず。

いつものとおり6,800円のプリフィクスをお願いしましたが、スプマンテをいただきながらのメニューの選択の時間が本当に楽しいこのお店。一時オペレーションのことを気にしてましたが、メニューを減らさず、そのまま頑張ってるのも頼もしい限り。

いただいたアミューズでは、前にも感動した押し麦を煮込んだものが秀逸。
個人的にはこの素朴だけど力強いお料理、この系統のジャンルではビオディナミコのリッボリータの上をいっていると感じる。

アンティパストは平目のカルパッチョ、柑橘系のあしらいと、カラスミとフェンネルを添えて。爽やかな料理。よくあるオリーブオイルでしっとりさせたものよりより「和」なアプローチ。
シチリアの力のある白のグラスワインにぴったり・・・。というか、お料理にあわせてそれぞれ3種ぐらいワインをお薦めいただけるここの「芸風」は変わらず、その上、前回いただいたワインのことさえ覚えていらっしゃる藤原さんの素晴らしい記憶力(おそらくメモをとっていらっしゃるのでしょう、)というかプロフェッショナリズムに感動。

で、プリモはショートパスタをやめて、めずらしくピチにしてみました。
ソースは牛頬肉のラグー・・・ピチがものすごくフレッシュな食感、今生まれたてのヴィーナスの肌のようななまめかしさ?が、しっかりした旨味のラグーを受け止める、この晩一番のお料理。どっしりとしたキャンティ・リゼルヴァとあわせて。

セコンドは迷ったあげく、小鳩のロースト・・赤ワインと内蔵のソースで。
鳩の肉の旨味よりソースの個性が際立った料理・・・このあたりで次になんのワインをいただいたか記憶が定かでなくなるけど、美味しかったことは確かです。

デザートにババをいただいて、デザートワインもいただいて、この夜も幸せ満喫。
やっぱり個性のあるリストランテはいいなあ。
でも、ここは絶対ワインを飲みにくる店だと思う。お料理も素敵だが、お料理あわせてここまで多彩で的確なワインを選んでくれるお店は他にはないし、その楽しみは何にも代え難いと思う。


<2008年4月のレビュー>
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月一回incanto計画第三弾。
多くは語りませんが今回は白アスパラと半熟卵の一皿トリュフソースが圧巻でした。
この料理がテーブルに登場したとき、圧倒的なトリュフの香りが漂って、一同ただただ幻惑されたものです。アスパラは軽くローストしてあり、ものすごく甘みがありました。
そして今回ワインはお薦めの白のビオワイン、そして赤はスーパートスカーナ(もう悶絶もの)が素晴らしかった・・会話が忙しかったので名前をひかえてこられず残念です。

<2008年3月レビュー>
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3月初旬、小雨の夜二回目の訪問。
前回あまりの素晴らしさに思わず「食べログデビュー」してしまった Incantoです。
今回も2名で6,800円のコース。
ご一緒した方はメニューのあまりの多彩さに「あーもう決めて!」と匙投げ状態でしたがメニューはいろいろ迷うのが楽しいんですよね。

アミューズはビーツのジェリー寄せ、押し麦のスープ仕立てのもの(きっとイタリアの地方料理でしょうね、名前わかりません)、そしてサフラン風味のエスカベッシュ。押し麦の一皿が特に素朴ながら素晴らしかった。

そして前菜には豚のパテを選択。パテを作るときに抽出した良質のゼラチンで作ったコンソメ風ジェリーが素晴らしいアクセントになっています。パテは2種類。右の方がコラーゲンいっぱいというか、肉の繊維質のコリコリ感とナッツの食感が楽しめて特においしかった。

パスタは今回はロングパスタを選択。シーフードとフレッシュトマトの濃い味がさわやか。
さて、ここで一緒にいただいたワイン(スプマンテからいれて3杯目)が今回の出色。カラブリア産のロゼのワインです。エチケットはクリムト風の優雅な絵柄。Mabiliaというワイン。あの南の田舎にこんな洗練されたワインがあるなんて。ごめんなさい、私イタリアワインのことなんて何もわかっていませんでした。

そしてメインは乳のみ子羊のクスクス仕立てを選択。会話が盛り上がりすぎて「美味しい」を沢山、言葉に挟めなかったのが残念だったけれどこれ本当に美味しかったです。料理としては今日のメニューの中のベスト。子羊はほろほろだし、ちょっと北アフリカ風のスパイスが鼻孔を刺激してたまりません。細かく刻んだお野菜もいい引き立て役になっています。

最後、これも初めての感激!のデザートワインをいただきながらくしゅっとしたサバラン(Baba) をいただきました。

うーん、Incanto二回目も沢山のサプライズと感動がありました。しばらくイタリアンは他に行く余裕がありません、本当に。


<2008年2月レビュー>
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2月中旬、とても信頼している友人の「素晴らしい店を見つけた!』の言葉で一緒に訪問しました。夜八時に彼女の名前で予約。昨年11月にオープンしたそうですが、すでに人気店でテーブルが空いておらずカウンター席で。テーブルの方が落ち着くのになあ、とは思って出かけたのですがカウンターもよい感じ。でもきっとデートであればもっとよい感じかも。

先に着いたので、お店の方になにか飲み物は?と聞かれ、迷い無くグラスのスプマンテを注文。レビューを見ていたのでスプマンテが何種類か紹介されることを知っていました。想像以上の丁寧な説明のあと、選んだスプマンテは上品な味で大正解。ここで友人が到着。メニューの選択となりました。

今回は6800円のプリフィクスのコースを選択。しかし困った...。前菜から始まってパスタ、メインとあまりに美味しそうなものばかりが列記されています。迷う事10分、とりあえず前菜はレビューでも高い評価だったトリッパ、パスタは友人の薦めでバターとカカオのソースの一品、そしてメインは鹿のタイアータ。ここでスプマンテが空いたので白ワインをグラスで注文。料理にあわせて友人と私にそれぞれ2つづつ、別のワインのご提案がありました。

ここで選んだ白ワインの素晴らしさに絶句。あまりに素晴らしかったので名前を伏せておきたいぐらいなのですがそれでは口コミの意味がありませんね。はい、白状します。コスタソプラネア 。ミラノの南、ロンバルディア地方のワインだそうです。私はけしてワイン通ではありませんが、イタリアの白は好きで結構飲んでいる方(どちらかと言うと気取らずガブガブと)。個人的にはフリウリ地方のソーヴィニヨン種のワインが好みでした。しかし!このワインはイタリアの白ワインの印象をまさに裏切る劇的な味。まさに運命のワイン!なんという複雑なアロマ。

もちろん一緒にいただいたトリッパの煮込みの素晴らしさも忘れてはいけません。丁寧に仕事され、フレッシュトマトが効いた絶品。これに先ほどのワインで本当に極楽。

その後いただいたバターとカカオのソースのパスタも素晴らしかった。ここのパスタはすべて手打ちで、それも12種類ぐらいをサンプルで見せてくれます。いままでイタリア本土を含めいろんなんところで手打ちの生パスタをいただいたけれど、どちらかというと無骨な「お母さんが作った手打ちうどん」という雰囲気のものが多く、「乾燥パスタのが滑らかじゃない?」ぐらいにおもってました。

しかし、ここのパスタは。。。まさに粘膜で味わう官能的な滑らかさ。なんだか罪って感じさえします。ここに匹敵する快楽は麺屋七彩のこれまた官能的な手打ち麺ぐらいだな。。。

メインの鹿のソースはなんだったんでしょう?こちらもかなり刺激的なスパイスが効いた味。初めての味でした。鹿肉は結構好きなのですが、ちょっとだけ臭みを感じたので今回は満点でなく4.5点です。友人のいただいた豚にすればよかった(一口もらったけれど悶絶もののお味)。

ともかく大満足。いただいたお勘定を見てまた大満足。間違いなく今の東京の宝のひとつです。

  • 2014年7月:鱒の薫製のアンティパスト。キャビア、グレープフルーツ、カブを添えて。
  • 2014年7月:鯰の力強いラグーのサーニエはスペルト小麦製。
  • 2014年7月:セコンドのサルチッチャ。どーん、と旨い!
  • 2014年7月:調子にのってチーズをセレクト。快楽はまだまだ続く。。。

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8位

レストラン サンパウ (日本橋、三越前、茅場町 / スペイン料理)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 4.5
    • | CP 2.5
    • | 酒・ドリンク 4.5 ]
  • 使った金額(1人)
    - -

2010/04訪問 2010/05/03

「今」を味わう、舌の記憶。

モダンスパニッシュ。
奇をてらった実験料理。一時期の流行では?
と捉える方も多いでしょう。
でも個人的な経験としては、ここ数年で一度だけ、「人生観が変わった」とまでの感動を与えてくれたこのジャンルのお店がスペインの片田舎のサンセバスチャンというところにありました。

それ以来、スペインに行きたいな、あの感動をもっと味わいたいな、との気持ちがつのる。
サンセバスチャンだけでも他に行きたい店が2つもある。
その後バルセロナ市内のとあるお店でやはりデギュスタシオンコースを味わって、そこそこに楽しんだけど、やっぱり少々遠出をしてもここ、「サンパウ」の本店に行くべきだったのかもしれません。

さて。
このお店に来る機会は突然にやってきて、
予約してくれた海外のご夫婦・・・は相当の食通さん達。
「日本橋のとある店を予約したから。」と聞いたとき、真っ先に頭に浮かんだのがこちらのお店。案の定ばっちりその想像はあっていました。え、そうなんだ、嬉しいな、それはとても楽しみ!
で当日。

重厚なエントランスの並びにブルーを基調とした広々としたキッチンを大胆にも外に向かって見えるがままにしているそのファサードに近づいた時から今日の食事への胸の高まりが始まります。
特別なレストラン。そんな演出。
いったいどんなお料理に出会えるのでしょうか。

夜のメニューは18,000円のMenu Gastornomic と22,000円のMenu Degustacio の2種。
内容は変わらず、デギュスタシオンの方が単純に皿数が多いそうです。
この晩はデギュスタシオンを選択しました。以下料理の内容です。

4種のミクロメニュー
それぞれ趣向を凝らした4種類のアミューズ・・・がひとつのお皿に載って供されます。
「バカラオのクロケッタ」。こちらはバスクあたりでよく食べられる塩鱈を小さなコロッケにしたもの。塩鱈のちょっと繊維を感じさせる食感とクリーミーな味わい。
「豆とブティファラネグラ」。スペインの血のソーセージと豆のペーストをサンドイッチ状態にした小さな前菜。ソーセージの旨み、塩っ気がふわっとしたやさしい味わいに豆のベーストとマッチしていました。
「カジキマグロのハンバーガー」。マイクロミニ、なハンバーガー。見た目は可愛いけど味はしっかり本格的。
「チーズとほうれん草のブニョールス」。チーズの香りが口中に広がる、軽いシューのような味わい。

オマール海老 春のロワイヤル
エスプーマ仕立てのソースをふんわりまとった優しい味わいのオマール海老。
その下にはウイキョウで作ったプディング・・・というより、ちょっと茶碗蒸しに似た食感。モリーユ茸の香りもさりげなく効いていて、まさに春を感じさせる美しいお料理。

スミイカ スナップエンドウ、イカ墨とワタのソース
とても柔らかいスミイカ、そして実だけ丁寧に取り出して軽く熱を加えたつるつるっとフレッシュなエンドウ豆。若干塩が強めではあるけれど、エンドウ豆の丸みのある味わいと香りよいオリーブオイルがうまく中和している。イカ墨とワタのソースもアクセントとして秀逸。スミイカとエンドウ豆というまったく違う素材の食感を近づけたのが成功の鍵?

野菜のラビオリ イベリコ生ハム
人参、ズッキーニ、大根、茄子で作ったラビオリの上に上質なイベリコ生ハムを載せて。
野菜と一体化したラビオリという試みがとても面白い。イベリコハムは当然絶品の味わい。

桜鯛 カレーソース
モダンスパニッシュでは全般的に魚料理に感心させられることが多い。こちらのお料理も鯛の火の通し方が絶妙で、魚の持つ弾力や素材感を壊さず、タンパク質が一番おいしく凝固するその絶妙なタイミングで仕上がっているのが素晴らしい。ソースはカレー、とのことだがインド風というより少々タイカレーに近いか。とはいえ違う次元のヨーロッパ的解釈に発展しているのが魅力。

メインはイベリコ豚か子羊からの選択。イベリコ豚を選んだ。
イベリコ豚のプルーマ "ミガス モンタネラス”
このお皿がでてきたとき、その肉の赤さに「え?これが豚肉なの?」と誰もが感じたけれど、これが正真正銘のイベリコ豚の一番美味しいところ。ほんのりロゼに色づいた切り口、完璧な火入れを感じさせる。口にすると想像以上の柔らかさ、ベルベットの味わい、そして洪水のようにやってくる旨みの凝縮された世界。すごい。世の中に美味しい肉はいろいろあるけれどその頂点のひとつがこの熟成したイベリコ豚ではないだろうか。

・・・ところであまり語られることのないスペインワイン。には時々驚くような素晴らしいものがあり、この日も最初の白、ルエダのQuinta Apoloniaはコクのある複雑みを感じさせながらあくまでも爽やかな印象を残す秀逸なワイン。コストパフォーマンスはかなり高いと思う。
赤の方は迷わずプリオラートから1本をソムリエに選んでもらった。こちらは若干軽い印象があったものの、プリオラートらしい完成度が期待を裏切らなかった。
スペインワイン、奥が深い。もっといろいろ飲んでみたいのだけど。

食事も終焉に向かって、でもまだまだ驚かせてくれます。

5種類のチーズとそのコントラスト
スペインだけでなくイタリア、フランスから選んだ異なる性格を持つチーズにそれぞれ小さなつまみを合わせたメニュー。特に素晴らしいとおもったのが、ゲヴァルツトラミネールのゼリーを添えたイタリアのチーズ、トゥーマドゥラバーヤ。そしてフランスのラギオールにはえ?と思うほど絶妙に合う、赤ワインに浸したパン。いずれも他では味わえないフロマージュ天国。

フランボワーズ、クリームチーズ&モデナアイス
ひとつめのデザート。まあとにかく美しいこと。冷たい部分と常温のフランボワーズクラッシュの食感の対比もさすがといったところ。

ココナッツ、チョコレート、金箔
濃厚なチョコレートムースにココナッツのソルベ。お腹いっぱいだけど、美味しすぎる。

そして最後にパステレリーアからのお楽しみトレイ
いわゆる小菓子のプレートなのだけど、これがまたすごい。
チョコトリュフ、甘草とシドラルのスティック、茄子のコンフィ、ベイリーズのケーキなど10種。残して帰れない。

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お腹いっぱいで幸せな気分でレストランを後にする。

創意工夫溢れる料理を少しづつ、沢山の数のお皿で。
というのがモダンスパニッシュのお家芸というところだろう。
レストランによりそれぞれ微妙に方向性が違うのだけど、
今まで食べて感じた共通項は料理自体はあまり素材に手を加えすぎないストレートな調理方法が多い。(たまに実験料理もあるけど)。
驚くような形で素材が提供されたとしても、素材の味わい自体はもとの味わいをそのまま生かしたものが殆どと感じた。
ただし、ここサンパウを始めとしてその料理をクリエイティブとさせているのは、この素材とこの素材を組み合わせるの?という素材のマッチングの意外性や、
え、この素材をこの古典的料理の技法で仕上げるの?あるいはこの文化と結びつけるの?
といった自由な発想と閃きではないかと思う。
それを可能とさせるのはもちろん高いレベルの技術力とたゆまぬ探求心だけである。

(すべての芸術もそうだけれど、)料理は総合力。だと思う。
断片だけ取り上げて、この素材のこの使い方はどう、って言うのは簡単かもしれないけれど、
作り手がなぜそういう決断をしたのか、
そしてその料理のバックグラウンドにどういう流れがあったのか。
そういうことを考えながら食べると楽しみがぐっと広がる気がする。
信頼している人が、食の話をするとき時々「文化人類学」の話をするけれど、
なんかそういうゆったりとした食文化の流れ・・みたいなものに思いを馳ながら
個人的な舌の記憶のフラグメンツを思い出しつつ、
次の瞬間にはあとかたもなく消えてしまう「今」を味わう。
その日のテーブルをどれ程楽しむことができたか、それが満足の本質であり、記憶の強度なのだと思う。

  • カジキマグロの小さいハンバーガー。
  • クロケッタ13番、バカラオ。鱈の小さいコロッケ。
  • 豆とブティファラネグラ。

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9位

シェフス (新宿御苑前、四谷三丁目、曙橋 / 中華料理)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 3.5
    • | 雰囲気 3.5
    • | CP 3.5
    • | 酒・ドリンク 3.5 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥8,000~¥9,999 -

2010/03訪問 2010/04/06

シンプル、しみじみおいしい。思わず笑顔になるチャイニーズ。

結論から言ってしまいますが、ここ、本当においしい。
全然華やかじゃないんだけどオンリーワンの魅力に溢れるお料理を出してくれるとても良心的なお店です。
こういうお店に弱いんだよな・・・。

取材お断り、だそうですが、なんかよくわかります。
食べログやってなかったら知らぬままだったかもしれない・・こういうメディアに出てこない素敵なレストランに出会えるのが「口コミサイト」のなによりの嬉しさですね。

まず立地、「え?こんなとこ」って中途半端な立地。
で、店内、「うーん、簡素だね」っていう感じのさっぱりした内装。
オシャレっぽいMasa's Kitchenとか礼華とかとは違いますね。
tsuyoshiさんが「デート向きでない」って書いていらっしゃったけど、
デートでこういう「見た目地味だけどしっかりおいしい上にセンス抜群」って店に連れてきてもらったら、私ならちょっと相手を見る目が変わってしまう(大幅上方修正)と思うなあ。

さて、お料理をいただいた順に羅列します。

赤ピーマンのマリネ 1,050円
どうやらここのシグネチャーディッシュのひとつらしい。と踏み、すかさず注文。
美しい、しっかりとした果肉(果物でないけど?)の赤ピーマン、丁寧にグリルした後に外側の皮だけ取り除いてマリネにしたんでしょうか。少しだけグリルしたあとの香ばしさが残った甘みのある味わい。
ものすごくシンプルな料理だからこそ素材選びの目利き、作り手の腕の確かさ、センスの良さを感じる一品。
もっと食べたい!

海老春巻き 650円
パリっと上質の油で揚げられた細めの上品な春巻き。海老春巻き、って聞いたけど、ちょっと繊維のある肉質、雰囲気蟹っぽいのですが、海老な味もする。謎。
しかし、これもどーってことないシンプルな料理なのに、絶妙な仕上げっぷり。
もっと食べたい!

黄ニラ千糸炒め 2,300円
干し豆腐のお料理大好きなんですが、ここのは期待以上でした。
干し豆腐の食感と黄ニラの爽やかな苦みと甘みの奥にしっかりとした上質な湯の旨みがひろがり、じっくりと味わえるお料理に仕上がっています。
もっと食べたい!

和牛頬肉豆鼓煮込み 3,500円
うわ、やられた。というパワー料理・・・ですがこちらも繊細さを持ち合わせています。
フレンチの牛頬の赤ワイン煮込み、というのにも似てるけれど、豆鼓の味わいがやはり中華の横道さを感じさせる確かなお料理。しかし赤ワインに合いそう。
しっかり煮込まれた頬肉はほろほろ、旨みたっぷり。コクのあるソースを花巻ですくっていただくのも嬉しいおまけ。
個人的には「桃の木」のミントとザクロの香りの酢豚と双璧をなす中華の名・肉料理だと思う。
さらに言うと、いままでいただいた中華の肉料理のNO.1ディッシュかもしれない。
(あ、でも北京ダックとかも肉料理か!)
これももっと食べたい!

白菜と金華ハム蒸し 2,300円
上質な金華ハムのスープをたっぷり吸った肉厚の白菜のおいしいこと。
うーん、幸せな味ってこういうのを言うのか?もう何も言うまい。
当然、もっと食べたい!

葱ラーメン (S) 650円
RENGEでも同じようなメニューがあったのですが、こちらの方がちょっとおいしさが上なような気がしました。レシピの違いはあるのかしら?
上質な鶏ベースのスープ。麺はあくまでもしゃきっと。
ラーメン好きなら一度は食べるべし、の滅多にない澄んだ金のスープの極上麺だと思いました。
これももっと食べたいなあ。

バジルのアイスクリーム
オリーブオイルとバジルの香り。
アイスクリームを作る際、上質なオイルを加えていると思う。
ふんわり、爽やか、いい香りと口溶け。デザートまでぬかりないですね。
うん、これはまた食べに来たい(もうおなかいっぱい!)。

という具合でどれもうーん、と唸らされる実力のお料理ばかりでした。
けして「高級素材どーん!」でも「スパイスを駆使したクリエイティブ中華」でもない。
でも、どれも、食べてるうちに「ああ、どうしよう、もう無くなっちゃうよ」っていうおいしさ。
このおいしさと完成度の高さの秘密は繰り返しになるけれど、
1に確かな素材選び。野菜、肉などの素材から油、調味料まで、妥協のない素材選びが光ってます。
2に料理人の腕。これは言うまでもなく。ボディの部分ですね。
3に料理人の天性のセンスかな。これが料理をさらに飛躍させる秘訣。

いいお店に出会えてよかった、ごちそうさま、
まだまだ「あっ」と驚くメニューにも出会えそうだし、またぜひおじゃまします!

********
後日談:「取材おことわりのお店」と聞いていたが、あれ、今月のdanchuにちょこっとシェフが載ってました。れれ。でシェフはレンゲと掛け持ちとか?
えー、どうやってるんですか?(自転車で行き来しているのか?)

  • 赤ピーマンのマリネ。肉厚のピーマンが甘い。
  • さくっと揚がった春巻き。
  • 黄ニラ干糸炒め。んー、おいしい。

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10位

明神館 (松本市その他 / 料理旅館)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.2
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.5
    • | CP 4.2
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.2
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.5
    • | CP 4.2
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    - -

2010/05訪問 2014/08/16

フレンチもモダン和食もハイレベル。信州の食の豊かさと鏡の湯を楽しむ贅沢時間の宿

<2014年8月2度目訪問レビュー>

ああ、4年もご無沙汰していたんだな、の扉温泉明神館。ここのとこ夏の長野旅行はついつい「仙仁温泉 岩の湯」に行きがちだったこともあり。。。
今回旅行の計画をたてる際、地図と睨めっこしているうちに美ヶ原の標高2000メートルの高原でのトレイルランを走ってみたいと思いました。
近くにいい旅館ないかな。。。と地図をさまよう、と、あ、扉温泉、、、といえば明神館!
ということで8月の宿泊の予約をいれたのが5月。

なのにビックリ、「フレンチ」はもう満席なんですって。「懐石和食」もだそうだ。
となると残りは「モダン和食」。うーん微妙。。
と、正直行って少し「食の観点」からは盛り下がってのチェックイン。

だけど、通された部屋は気持ちいい庭つきで、その庭を眺める露天風呂も実にいい感じ。
部屋もゆったりしていてやっぱり高級旅館はくつろぐ。。。(一晩前は素朴な高原ホテルだった、それも好きだけど!)
部屋のソファにこしかけて音楽を聴いたりしてのんびりしたあとお風呂へ。
大浴場に入った瞬間、あ、間違えた、ここの一押しは「立ち湯」だったと、
早々に切り上げて「立ち湯」に移動。
相変わらず緑濃い美しい景色を眺めながらのここの空間の素晴らしさは一押しだ。森林浴しながらの温泉入浴、心が洗われる。

さて、問題の「モダン和食」。
前も書きましたが、ここ、食事の時間を事前に決めなくてある程度の時間帯の中でふらっとレストランに行っていいのがとてもありがたい。
お腹ペコペコなので早めに行きました。テラス側のシートに通される。
以前ここのダイニングで朝食をいただいた覚えが有るけれど少し改装した?
とてもいい雰囲気になっていて、あれ、こんなに素敵だったかな?と感じた。

食事は氷柱の上に乗せられたトマトを器にした涼しげな野菜のお料理から。
華やかなスタートでいいですね♪
その後自家菜園でとれたという新鮮な野菜と続く。
生のままいただくのだがこれが実に美味しい!
そういえば前に来たのは春だったけれどその時夏野菜がとても美味しいと聞いていたな、と思い出す。
続いておそば。これもなかなかのレベルの手打ち。

その後の「信州牛スープ仕立て 地玉葱」が一番印象に残った料理。
和風出汁と、テールスープをあわせたコクのあるスープに上質な信州牛が煮込まれている。部位としてはシチューに使われるバラに近いところか。美味しく健康な牛だからこそこの食べ方で楽しめる。あわせた玉葱の何とも滋味あふれる甘い味わい。

味噌グラタンは信州プラチナサーモンで。あっさりとしたコクっていうと矛盾しているけれど、そんな感じのプラチナサーモン。。。って海のない信州にサーモン? 桜鱒のことなのかなあ、とあとで不思議に思って調べてみるとニジマスとブラウントラウトを交配させたものだとか。上品な旨みのあるお魚だった。

ローストビーフは外側を炭であぶって、炭火の美味しさを味わう趣向。これも美味しかった。

ご飯何だったかな...失念、
ただ、デザートのあしらいも美しく、シャルドネワインをいただきながら最後まで楽しめた食事で。。

あれ? 「モダン和食」と聞いて盛り下がっていた気持ちがすっかりどこかに行っちゃった。
失礼しましたー。

最後にシェフがご挨拶にこられたのだが、とても勉強家のご様子。
そして、シンプルに見えたお料理のそこここになかなかわからないひと手間がいろいろとかけられていることを知る。
たとえばスープ仕立ての地玉葱が一度焼いてあったり(たぶんオーブンで)、生かと思ったズッキーニにもほんのり熱を入れていたり。
それであのピタっとピントのあったような絶妙な味わいのアクセントを引き出しているんでしょうね。
いやいや脱帽です。

ということで、明神館さんの「食のクオリティ」や「信州の食の豊かさの提案」をみくびっていたことを少し反省。
フレンチも楽しめたけれどモダン和食もこのクオリティとは。
次回は懐石和食も試してみるべきか?
となるとやっぱ連泊したくなるところかも。。。

あ、追記になりますがお風呂のこと。
今回初めてトライした普段は混浴の川沿いの露天風呂、7:30pm から二時間ほどの女性専用タイム内で利用しましたが。。。
泉質はここが一番いいです。温泉の香りがいい感じ。
入ったときはたった一人で広い露天を独り占め。贅沢な時間でした。


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<2010年5月初訪問レビュー>

急に思い立っての信州蕎麦街道の旅。
宿の手配は一ヶ月をきって・・・長野だったら第一候補は仙仁温泉だが、ここはまあ予約がとれるはずのない予約超難関宿。これはすぐに候補から飛ばして、あとは「すぎもと」か、諏訪でちょっと離れるけれど情緒なら「みなとや旅館」か。

などと迷いつつも今回ここ、明神館にした決めてはやっぱり「過ごしやすさ」かな。
遠くまでドライブするから宿では思い切り手足伸ばしたいな、と思い、「情緒」や「泉質」は期待しないことにしつつアメニティが整っていそうなここに決定。
インターネットで部屋指定の予約ができるから、忙しかったり直前予約だったりしても無駄が省けてありがたいです。

食事は「和の懐石料理」「モダン和食」「オーガニックフレンチ」の3つから選べる。
旅館のフレンチは期待できないだろうなあーと思い、無難な「懐石料理」でお願いしたが、後日、以前ここに泊まった親友に聞くと意外や意外、「フレンチがおいしかった」そう。この方かなりの食通な上、彼女のパートナーはフランスの人なのでかなり説得力のあるご意見です。

そこで宿に「フレンチへ変更」の電話・・・インターネットで申し込んだ時にフォームに記入した携帯電話からかけたせいか、すぐに「x 月x日ご予約の○○さまですね」と答えるあたり、スマートな対応にちょっと驚きました。こういう宿のサービスは期待できるはず!

さて当日。宿は松本市街から車でさらに30分、ええーこんな山道?という山の奥深くまで入っていきます。緑深い中に突然現れる宿。迎えからチェックインまで、洗練されたサービス、ホテルのような無駄のない対応が遠方から来た身にはありがたい。

部屋は423号室、「滝」という露天風呂付きの広々和室にしました。部屋自体のしつらえには「あさば」などのようなシックな高級感はないけれど、窓から見る山あいの景色、桜もほんのり残っていて素晴らしいです。
そして部屋の露天風呂・・・正確には半露天なのですが、こちらも別の方向の景色が最高。造りもゆったりしていてモダンな感じ、くつろげます。

サービスで「なるほどね!」と思ったのが何も言わなくても部屋の鍵をふたつくれたところ。
温泉宿ではひとつの部屋にひとつの鍵、というところが多いですよね、これが意外と不便。お風呂いったりする時、夫婦だとお互い時間をみはからったり、ちょっと面倒くさいです。
考えてみればそれぞれに鍵を渡してくれれば簡単に解決する不便で、こんなところもホテルライクでありがたい。

明神館には4種類のお湯がありますが、一番人気は立ち湯だそう。いろいろな雑誌の誌面でみかける、開放感のあるお湯です。立ち湯とはいえ、立って入れる場所と普通の深さの場所があるから好きに楽しめる。立ち湯が向かう開口部は滝の見える森に面していてお湯には鏡のようにその美しい木々の風景が写りこみます。
ちょうど連休あけの金曜日、だったので館内は割合空いていて、この風呂を独り占めできる時間帯もあり、大変贅沢な気分になりました。
お湯自体はかなり単純な泉質ですが、それでもケミカルな匂いは皆無で、かすかに天然の温泉の香りがしました。特筆する泉質ではありませんが素直な感じでくつろげます。
その他混浴の露天風呂、寝湯、大浴場もあり、いろいろお湯を試すのもここの楽しみのひとつです。

一方特筆すべきは食事でしょう。山深い温泉宿のフレンチ。どんなものかと思いましたが、那須の「二期倶楽部」から引き抜かれた田辺シェフはフランスの二つ星レストランでの修行経験もあり、かなりの勉強家だと感じました。クシマクロビオティックの認定シェフでもあるとのことで、地産地消の理念のもとに、有機野菜を中心とした心にも体にも「響く」料理が得意との印象です。

8皿のコースの内容は以下のとおり。

パセリのフランと山菜のテリーヌ
パセリのフラン・・・はパセリでつくったプリン風のフランに、ふわっとよい香りの立ち上るマッシュルームのカプチーノ仕立てのスープが添えられて。パセリの香りは春!という鮮烈な味わい。その中に本当に小さなお肉の団子・・・のようなもの。サービスの方によると「秘密のお肉」だそうで、癖のない白身の肉に、パートナーと「ん?ウズラかカエルかな?」正解は「カエル」でした。これは素晴らしく美味しいお料理でした。
山菜のテリーヌはイワナ(だったと思う、)の薄切りで山菜でくるんだ山の幸のテリーヌ。これもこの場所ならではの料理。洒落てます。

鮪のタルタル
鮪のタルタルには冷たくした温玉が載ってます。これを崩していただくと・・・玉子自体がおいしいからからな、最強の組み合わせですね。

ビーツとムソーズ、フォアグラのポワレ
エスプーマで泡立てたビーツのソースは独創的で秀逸。フォアグラはもうひとつ。ほんのり甘いビーツのソースと本来合うはずなのだが、どこか噛み合わないように感じたのが少々惜しい。

新玉葱のスープ
パートナーは「甘い!」、まったくお砂糖はいってないそうですが、新玉葱を低温でじくり炒めるとこんな甘みがでてくるんですね。冷たいスープ。フレンチらしい。私は好きだけど。
スープには生ハムとオリーブオイルが浮いていて、小気味よいアクセントになっている。

目鯛の低温調理
上手に火入れされふっくらした目鯛にバジルのソースを添えて。これは割合凡庸な印象だが、魚自体の味わいは豊かだ。

松本フランス鴨
添えられていた地野菜のおいしさときたら。力のある野菜はホンモノの味がする。
一方の鴨、ちょっと温度が低いかな。あと、この一週間前にたまたまいただいたシャラン産の鴨の圧倒的な旨みの迫力に比べると、松本のフランス鴨はちょっとおとなしい雰囲気。
好みとしてはもう少し厚切りで調理してもらいたいところ。
 ちなみにメインは他に仔豚、牛タンの料理を選べて、パートナーが選んだ仔豚の料理は少々手が込んでいて面白かった。しかし鴨と同様にちょっとおとなしい雰囲気だったのがもう一歩。

グレープフルーツと信州産山葵
山葵のグラス(=アイスクリーム)にグレープフルーツが添えられて。山葵のグラスって初めていただいたかもしれない・・・はっとするような冴えた味わいですが、グラスになると本当にきりっとおいしい。甘みのような奥行きも感じます。これはいいな。

蓬のクレームブリュレ 豆腐のブランマンジェ グラスメゾン
山葵のソルベにも驚かされたけれど、デザートのセンス、抜群ですね。
蓬のクレームブリュレ。蓬の味わいが濃い!摘みたての蓬ってこんない香りが鮮やかなんだ。
豆腐のブランマンジェはほんのり桜の風味、そしてグラスメゾンはスナップエンドウのグラスなのですが、うーん、これも可愛い黄緑のこくっとした味わいが素敵です。
砂糖はどれも控えめ。背後にマクロビの影響があるのかな。私はこういうデザートが好きです。

このコースに加え、「今朝シェフが畑でとってきたグリーンアスパラガス」をひとり1本づつ調理していたきました。ソースはクルミでシンプルに。うーん、これは絶品。
新鮮なアスパラガスの豊かな味わい、堪能しました。

野菜を知り尽くしたシェフらしく、野菜料理の発想力が素晴らしい。
前菜の流れは斬新かつ洗練されている・・・
が、メインに前菜ほどの実力が発揮されていないのは少々歯がゆい感じ。
量は少なくてもいいけれど、しっかりとした骨太なメインが実現したらコース全体の印象は相当なものになると思う。
でも最後にデザートでふたたび「!」があったから全体に好印象です。
いずれにしろ旅館レベルとは思えない創意工夫があったし、地のものも堪能できて、今後のシェフのさらなる成長も楽しみ。

サービスの方々も洗練されたサービスとはいえないまでも、心のこもったもてなしが嬉しいです。ちょっとした会話の中に地元の食材の話題などを盛り込んでくれて、食の想像が広がります。蓬の会話の中で「松本にとてもおいしいベーグルのお店があるんです」と教えていただいただけでなく、翌朝の朝食の席にそのお店の住所等のメモをご用意いただいたのも、ハートのこもった嬉しいサービスでした。

ディナーに対して朝食はごく普通の和食ですが、こと食事に関してここの宿の素晴らしいところは「あらかじめ時間を決めなくていい」こと。ディナーは6:00pm-8:00pmの間の好きな時間に、朝食も「8:00am-10:00am」の間に、という自由な設定で、よくある旅館で朝早くたたき起こされる、という折角リラックスしにきたのに・・・の矛盾がありません。
チェックアウトは驚きの「正午」。最近増えたとはいえ、これもまだ旅館では画期的。
実際はもっと早く宿を出ましたが、心の余裕ができて本当にのんびりできますね。
朝起きてのんびり、再度立ち湯にはいったあと、ゆっくり朝食をとって、最後にまた部屋のお風呂にはいる、なんて贅沢も時間におされず自分のペースでかないます。

夏になると夏野菜が美味しいとかで、また季節をかえて何度か来てみたいな。
久々に「リピートしたい」と思える宿に出会うことができました。

  • 2014年8月:朝ごはんも野菜いっぱい
  • 2014年8月:トマトの器のお料理
  • 2014年8月:スゴイヤサイたち。

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