こだまひろしさんが投稿した信濃路 鶯谷店(東京/鶯谷)の口コミ詳細

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信濃路 鶯谷店鶯谷、入谷、日暮里/居酒屋、食堂、麺類

1

  • 夜の点数:4.7

    • ¥1,000~¥1,999 / 1人
      • 料理・味 3.6
      • |サービス 3.6
      • |雰囲気 3.6
      • |CP -
      • |酒・ドリンク -
  • 昼の点数:4.7

    • ¥1,000~¥1,999 / 1人
      • 料理・味 3.6
      • |サービス 3.6
      • |雰囲気 3.6
      • |CP -
      • |酒・ドリンク -
1回目

2008/01 訪問

  • 夜の点数:4.7

    • [ 料理・味3.6
    • | サービス3.6
    • | 雰囲気3.6
    • | CP-
    • | 酒・ドリンク-
    ¥1,000~¥1,999
    / 1人
  • 昼の点数:4.7

    • [ 料理・味3.6
    • | サービス3.6
    • | 雰囲気3.6
    • | CP-
    • | 酒・ドリンク-
    ¥1,000~¥1,999
    / 1人

駄舌の実在に関する文献2――凡庸な呑兵衛の肖像――

酔眼にはスーパーマーケットさながらの作り置きの惣菜の皿が、いくつも折りかさなるようにしていっせいに並べられ、この薄汚れたガラス越しの陳列棚にしがみついて、吹きつのるアルコール臭を避けている。この距離から眺められた惣菜の色彩や形態だけを手がかりに、その種別を識別することは何ともむつかしい。もっともその傍らに顔を近づけて乾いた食材を眺めてみたところで、この店の人びとがそれをどんな名前で呼んでいるのかは皆目検討もつかないだろう。それでいて、アルコール臭の運んでくる微かな匂いが鼻腔にはじけるとき、何の変哲もない酒肴の名を知らずにいることが、装われた無知ではなかろうかと訝らずにはいられなくなる。何か人に知られたくない企みでもあって、それを隠そうとするかのように肝心な名前を記憶から遠ざけ、その意図的な空白のまわりに居酒屋の物語を築こうとでもいうのだろうか。しかし、居酒屋の物語はとうの昔に始まっているのだし、呑兵衛もまた呑兵衛で特定の一日を選んで不意撃ちをくらわせにやってきたのではないのだから、いかにも退屈そうに日々くりかえされているこの店でのできごとを語るのに吟醸酒だの山海の珍味などはあまりに饒舌な贅沢品というべきだろう。いま必要とされているのは、誰もが知っているごくありふれた酒肴の名前でもさりげなく口にしておくことに尽きている。身近に見馴れたもののすがたかたちを背景からきわだたせ、目をつむったままでも思い描けるような光景を提示しておけば十分であり、その名を知らぬふりを装ったりしても始まるまい。酔眼にはほとんどその名を判別しがたいスーパーマーケットさながらの作り置きの惣菜であろうと、それがこの薄汚れたガラス越しの陳列棚にしがみつくようにして、折りかさなってアルコール臭を避けているさまが目に見えさえすれば、もう申し分のない口実になってくれるだろう。
 実際、ほとんど読む人もいまい紹介文を集めた薄っぺらなこだま某のサイトには、きまってそんな光景が貧しく再現されている。あるいは、いま視界に拡がりだしている光景が、そのサイトに描きだされた構図をごく几帳面に再現しているというべきかもしれない。唯一の違い、それはいまこうしている瞬間にも漂い続けているアルコール臭だけがサイトには描かれていないという点である。だから、呑兵衛の背景でもあり居酒屋そのものともいってよいこのアルコール臭と、それが運んでくる微かな匂いのことから語り始めるのが巧妙なやり方なのだろう。気まぐれに癇癪を起こしたり不意に泣き出したりもせず、客の出入りの境目まではただ律儀にこの店にアルコール臭を送りとどけているだけの大気の流れ。たしかにこの匂いをいっぱいにはらんだ乾いた空気を顔一面にうけとめると、鈍い興奮のようなものがからだのすみずみにまで拡がり、指先を軽く痺れさせる。と同時に、口や鼻の粘膜の表面に、こまかい刺激の火花をはじけさせもする。それは何ごとかの始まりを告げるにふさわしい感覚だ。だが、誰もが知っているとおり、その感覚は昨日の酩酊の反復だし、明日もまた同じようにくり返されるものだろう。だから、始まりといっても、それはあくまでもとりあえずのものにすぎない。だいいちこの店には、一年中二十四時間休みなどない。事実、紹介文を集めた例の薄っぺらなサイトを検索してみると、そこにはこの店を訪れる新参者への案内として無休という一語がたやすく発見できる。胃腸薬を用意し、呑み過ぎには注意すること。ただし、食堂としての利用者はこの限りではない。読者は、この店を残酷に引き裂いている呑兵衛と食堂利用者との周期的な反復性にとりわけ注意深くあること、とその紹介文のひとつは断言している。紹介文にはただ注意とあるのみで、具体的な記述はいっさいはぶかれている。それはおそらく、この紹介文の匿名の著者にとって、この店を蔽いつくす酩酊の光景がまったく未知の、ほとんど抽象的ともいってよい体験だからに違いない。


 ホッピー、ホッピーだ。誰の口から洩れたのでもない声になりきらぬその音のくり返しが、カウンターの向こうを駆け抜けるいくつもの店員の声と反響しあってぼくの眠りを鋭くたち切る。すでに自分自身でホッピーだ、ホッピーだと夢中になって叫びながら目醒めるぼくは、いま、自分はいささかも酔っぱらってはおらず、さし迫ったアルコールへの欲求が体内に起こりつつあるのだと確信する。たぶん、焼酎、あるいは多量の焼酎を意味するに違いない判別しがたい単語を叫び続けている女給をねめつけ、あたりに放置されている空のグラスをつかみながら、ナカは、ナカはどうしましたとどなってみるが、相手は理解しえない外国語で因縁をつけられたときのように、曖昧な微笑で敵意のなさを示すばかりだ。いまはそんなことをしているときではない。ホッピー、ホッピーだ。

2008/02/09 更新

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